価値のない話

「夢と違うじゃねえかよお!」

世界に深みを与える話

 昔習った先生のありがたい言葉。未だに覚えている。

 

f:id:zeromoon0:20140816001731j:plain

 

 詩を書く上で「ふと」という言葉を使うのはよくない。「ふと」という言葉は使いがちだけれど、そこには「特に意味はないけどなんとなく」という意味が含まれる。そうすると言葉だけで心情を表現するときに「なんとなく」と言われるとそこまでの言及になってしまい、全体の深みがなくなってしまう。世界を表現したいのであれば「ふと」は使わないほうが望ましい。

 

 だいたいこのような意味のことを言ったと思う。実際、「ふと」「なんとなく」はとても便利な言葉だ。「理由がない」ということを明確に説明してくれる。しかし、マイナスな方向になると「むしゃくしゃしてやった」と同じ意味になる。

 

「どうして空を見上げるんだい?」

「ほら、あそこに飛行機雲が長く見えるよ」

 

「どうして空を見上げるんだい?」

「ふと、なんとなく、ね」

 

「どうして盗みなんかしたんだ」

「どうしても遊ぶ金が欲しかったんだ」

 

「どうして盗みなんかしたんだ」

「むしゃくしゃしてたから」

 

 

 

 こんな感じで「理由」をつけるだけで物語が生まれる。逆につけないと話が進まない。つまり何が言いたいかというと、「なんとなく」を多用する文章は読みにくいってことです。筆者が「そうしたい」って思った理由を書かないと読者は心情を理解できません。想像で補うのも限界があります。だからきちんと文章には理由を添えましょう。

 

 ためしに「なんとなく」的なを連発した文章です。素材文は適当に自分の記事から持ってきました。

 

 それから20年以上が経って、例の喫茶店に一人で入れる年になったけど、やっているのかどうかわからない。することもないからといってわざわざ訪ねるところでもないのでいつも前を通り過ぎるだけだった。さすがにジャンピューターは置いてないだろうけど、もしかしたら普通に営業しているかもしれない。でも、その店でふとクリームソーダを頼んだとしても、なんとなく後ろめたい雰囲気にはなれないんじゃないだろうか。父と二人の秘密と言うところがあのクリームソーダの味には欠かせない。今更父と二人でなんとなく訪れたとしても家族にも誰にも意味もなく秘密にする必要もないし、大の大人が特に理由もなくクリームソーダを頼むことはない。思い出の中にしかない飲み物だけど、そういう飲み物が増えていくほうがきっと豊かな人生なんだろうとなんとなく思うことにした。

もう一度飲みたいけど永遠に飲めないものの話 - 価値のない話

 

 うん、意味がないなら前置きつけずにその部分を取っ払うかちゃんと理由をつけるか、それとも断定したほうがはっきりしていいと思う。「なんとなくなら別に書かなくてもいいじゃん!」って思われたらオシマイだからね。でも『徒然草』の例もあるし、別に絶対使うなというわけじゃない。用法と用量を守って使いましょう。