裁判員裁判:導入5年 傷害致死事件で「厳罰化」傾向 

毎日新聞 2014年07月24日 23時56分

 裁判員制度の導入から5年。最高裁によると、殺人や傷害致死など主要8罪で、今年3月末までに全体の1.0%に当たる43人の被告に求刑を上回る判決が言い渡された。求刑に法的拘束力はないが、制度導入前の約1年間に裁判官だけの裁判で求刑超え判決を受けたのは2人(全体の0.1%)に過ぎず、割合は約10倍になった。罪名別では傷害致死12人▽殺人8人▽強姦(ごうかん)傷害7人▽殺人未遂6人などが多かった。

 求刑の範囲内でも、裁判員裁判では一部の罪で「厳罰化」している傾向がうかがえる。最高裁が2012年、裁判官だけの判決と裁判員裁判の判決の量刑分布の差を比較した。傷害致死事件は裁判官だけの判決のピークが「懲役3年超5年以下」だったのに対し、裁判員裁判では「懲役5年超7年以下」。強姦傷害事件などでも同様の傾向がみられた。

 最高裁によると、1審の求刑超え判断が重すぎるとして、高裁が減刑した例は今年5月末現在で5例ある。アスペルガー症候群の男が殺人罪に問われ、大阪地裁が12年7月に「障害に対応できる受け皿が社会になく、再犯の恐れがある」と求刑(懲役16年)を上回る懲役20年を言い渡した事件では、大阪高裁が「受け皿がないとはいえない」と懲役14年に減刑、最高裁もこれを是認した。

 一方で求刑をやや上回る1審判決を高裁や最高裁が支持した例もあり、一定程度までの厳罰化は受け入れられている面もある。

 また、裁判員裁判では更生を重視した執行猶予判決も増えており、量刑に幅が出ているのが実情だ。【川名壮志】

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