米国:黒人抗議デモ拡大 背景に「警察の軍隊化」

毎日新聞 2014年08月16日 11時30分(最終更新 08月16日 14時09分)

黒人少年射殺事件に反発するデモに対応するため出動した重装備の警官隊=米中西部ミズーリ州ファーガソンで2014年8月13日、ロイター
黒人少年射殺事件に反発するデモに対応するため出動した重装備の警官隊=米中西部ミズーリ州ファーガソンで2014年8月13日、ロイター

 【ニューヨーク草野和彦】米中西部ミズーリ州セントルイス近郊ファーガソンの警官による黒人青年射殺事件で、黒人らの抗議デモが拡大したことについて米メディアは、重装備の警官隊がデモに過剰対応したことも要因と指摘している。2001年9月の米同時多発テロ以降、連邦政府の支援で警察が軍隊並みに武装化されてきたことが背景にあり、今回の事態は「9・11後遺症」とも言えそうだ。

 「昨夜は一人の逮捕者もいなかった」。15日、事件現場近くで記者会見した州警察高速道路パトロール隊のジョンソン隊長が強調した。州知事の指名で、14日夜からデモ対応の責任者となった地元出身の黒人警官だ。デモ参加者と一緒に歩き、市民からは抱擁と歓声で受け入れられた。

 地元警察のそれまでのデモ対応は、装甲車が出動し、防護服でガスマスクをした警官隊が攻撃用ライフルで参加者を威嚇。火炎瓶攻撃には、催眠ガスやゴム弾で反撃し、市民の一層の反発を招いた。

 米メディアによると、こうした装備の購入には政府機関からの助成金が使われている。国土安全保障省だけでも03〜12年、テロ対策の装備費や訓練費として、セントルイス地域の警察など法執行機関に8000万ドル(約82億円)以上を支給した。

 また国防総省は1990年代から、余った軍備品を警察などに提供していたが、アフガニスタン戦争(01年〜)、イラク戦争(03〜11年)を受け、その規模も拡大。地方の警察に対しては「めったに起きないテロの脅威をはるかにしのぐ規模で、装備や資金が投入されてきた」(ニューヨーク・タイムズ紙)のが実態だ。

 AP通信によると、今回の事件を受け、ジョンソン下院議員(民主)は「(街の)目抜き通りの軍事化は、市民を安全にするどころか、おびえさせるだけだ」と述べ、米軍から地方警察への軍備品供給を制限する連邦法案の提出を検討していることを明らかにした。

 今回の事件を巡っては15日、遺族やデモ参加者らの要求に応じ、地元警察が青年を射殺した白人警官の名前を公表する一方、殺された青年が事件直前、近くのコンビニエンスストアで葉巻を奪う強盗行為を働いていたと指摘。真相解明には時間がかかりそうだ。

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