ロボット:お尻ふきふき 楽ちん介護 開発に苦節8年
毎日新聞 2014年08月16日 12時18分(最終更新 08月16日 15時09分)
◇大阪の自動車用品会社社長「商品化資金が不足、協力者を」
大阪府豊中市の自動車用品製造会社「岡田製作所」が、トイレの温水洗浄便座で洗った後のお尻をトイレットペーパーで自動で拭くロボットを約8年がかりで開発した。きっかけは岡田昭二社長(72)自身の介護体験だ。病院での実証実験では好評を得ているが、福祉機器として商品化するには資金が不足しており、協力者を求めている。
同社は社員28人で、大手自動車メーカーに車内用のマットやトラックの幌(ほろ)などを納入している。岡田社長は、パーキンソン病で手が不自由になった父(1994年死去)の介護体験から「尻拭きを自動化できないか」と考えるようになり、2006年秋から本業の傍ら開発に着手した。
1号機ができたのは約半年後。「楽々きれい」と「トイレット」を合わせて「楽々きれっと」と名付けた。長さ約60センチのロボットアームがトイレットペーパーを巻き取った後に、利用者の尻を拭く仕組み。ペーパーをぴったり尻の下に運ばせるのに苦労したという。
07年に東京であった国際福祉機器展に出品し、注目を浴びたが、設備が大がかりになることや使い勝手の面などで問題点も多かった。
改良を重ね、(1)市販のペーパーをセットすると数回折り畳んで切断(2)アームがペーパーをつまむ(3)尻の下でアームが持ち上がり、尻についた水を拭く(4)アームが回転して便器に捨てる−−といった基本的な動作がほぼ完成。13年1月、京都市伏見区の「金井病院」で腰痛を訴える患者3人に使ってもらったところ、全員から「苦痛無く利用できた」と好評を得た。最新機は、アームの長さが約30センチに小型化され、既存のトイレに付設できるようになった。
同病院の劉和輝医師(整形外科)は「脳梗塞(こうそく)で手の不自由な患者などにいい機能だ。ノロウイルスなど手を介した感染症にも有効だ」と評価する。
岡田社長は「将来はトイレの一般的な機能にしたい」と意気込むが、商品化にはさらに実験を重ねるとともに、生産体制を整備する資金が必要。同社ホームページhttp://robot−benza.com/で協力者を求めている。【吉田卓矢】