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〈2012年以降の情報はブログ掲示板に書いていく予定です〉

顔 なんでこの人が好きなのかと訊かれたら、答えに困ってしまうかも知れない。彼女は必ずしも、ポップな聴きやすい音楽ばかりを作っている訳でもないし、技術的に歌がとても巧いという感じでもない。感情の振れ幅の大きい歌には不安定な感情が喚び起こされて、結果として、聴いて疲れるアルバムが多くなっていると思う。「Nothing Compares 2U」が大ヒットした'90年には、彼女は音楽誌で「Best Singer」と「Worst Singer」に同時に選ばれたりもしていた。
 この人の、細いけれども凛として緊張感のある声は、いつでもまっすぐ突き刺さってくるように感じられて、うっとうしいくらい真摯で、重い。落ち込んでいる時に聴けば、どんどん落ち込んでいってしまう。しかし、聴き終わるころには不思議と心が軽くなっていたりする。どん底まで落ち込ませてくれることによって、暗い気持ちが浄化されるかのように。結局この人の音楽は、聴いていて疲れるようなところがその良さでもあるのだと思う。
 ※彼女の名前、原音に近いカナ表記は「シネイド・オコーナー」だといわれています。でも今までの日本盤のCDで「シンニード・オコナー」「シニード・オコナー」といった表記がかなり定着していますので、このページではとりあえず「シニード」にしています。

  • 新作『How About I Be Me (And You Be You)?』が完成しており、2012年にリリースされる予定です(当初予定の2011年9月5日から延期…残念!)。詳細はまだまだ明らかではありませんが、いくつかのトラックにはリミックス・バージョンが制作されているようで、90年代のポップで尖ったシニードの復活作になるかも?しれません。
    公式サイト(および公式MySpace)では既に「Reason With Me (Demo)」「Take Off Your Shoes (FOC187 Mix)」「Very Far From Home (Soul Style)」といった新曲が試聴できるようになっています。

  • シニードとメアリー・J・ブライジが Girls Educational and Mentoring Services (GEMS) という団体のためのチャリティー・ソングとして「This Is to Mother You」(シニードの『Gospel Oak EP』収録曲)をリメイクしています。GEMS のサイトiTunes Store でダウンロード購入することができます。

  • 1990年に発表された名盤『I Do Not Want What I Haven't Got』(邦題:蒼い囁き)のスペシャル・エディションが発売されています。デジタル・リマスターを施したオリジナル・アルバムに、未発表トラックや入手困難なトラックを集めたボーナス・ディスクを加えた2枚組。美しい写真があしらわれた6面デジパック入りで、ブックレットにはジョン・レイノルズがライナー・ノーツを寄せています。
    ボーナス・ディスクの曲目は下記の通り。
    1. Night Nurse [previously unreleased]| 2. My Special Child| 3. Damn Your Eyes| 4. Silent Night (long version)| 5. You Do Something To Me| 6. Mind Games [previously unreleased]| 7. What Do You Want| 8. I Am Stretched On Your Grave (Apple Brightness Mix)| 9. Troy (live in London)| 10. I Want Your Hands On Me (live at Hammersmith Odeon)

  • 06年に行われた『Theology』お披露目ライブを収録したCD・DVDセット『Theology - Live At The Sugar Club』が08年12月8日に発売されています。公式サイトを通じて2,000セットのみ限定販売とのこと。オーダーは公式サイトamazon で。

  • 最新スタジオ盤は2枚組の『Theology』。2007年6月22日(アイルランド)・25日(英)・26日(米)にそれぞれリリースされました。公式サイトMySpace.comなどで収録曲がいくつか試聴できるようになっています。アルバムからの最初のプロモーション・シングルは「I Don't Know How To Love Him」(ミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』からのカバー)。

  • 『Theology』の日本国内盤はビクターエンターテインメントから07年10月24日に発売されました。ボーナス・トラックとして「Something Beautiful」「If You Had a Vineyard」「The Glory of Jah」「Whomsoever Dwells」「33」のライブ・バージョンが追加収録されています。

  • 公式サイト
  • ファンサイト(1)
  • ファンサイト(2)

Theology - Live At The Sugar Club(Rubyworks, 2008)

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CD&DVD: 1. Something Beautiful| 2. Out Of The Depths| 3. If You Had A Vineyard| 4. The Glory Of Jah| 5. Whomsover Dwells| 6. I Don't Know How To Love Him| 7. We People Who Are Darker Than Blue| 8. 33| 9. Rivers Of Babylon

 2006年11月6日に、ウェブサイトを通じて集められた招待客の前で行われた『Theology』お披露目ライブを収録したCD・DVDセット。アコースティック・ギター、マンドリン、バイオリン、ハープという編成で、アルバムの「Dublin Sessions」を美しく再現している。さらに、『Theology』では「London Sessions」(フル・バンドのアレンジ)でしか収録されなかった「I Don't Know How to Love Him」のアコースティック・バージョンが聴ける。DVDでは落ち着いたカメラワークでシニードの表情やギターを演奏するスティーブ・クーニーの繊細な指もとの技がたっぷり観られるし、『Theology』の成立過程についてシニード本人が語るインタビューも収録されている。
 ライブのとき妊娠中だったシニードは、緊張しすぎないように、床にセットリストの代わりに「breathe」と書いた紙をたくさん貼っていたのだそうだ。

Theology(Rubyworks/Koch, 2007)

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(US盤)
  Disc 1- Dublin Sessions: 1. Something Beautiful| 2. We People Who Are Darker Than Blue| 3. Out Of The Depths| 4. Dark I Am Yet Lovely| 5. If You Had A Vineyard| 6. Watcher Of Men| 7. 33|8. The Glory Of Jah| 8. Whomsoever Dwells| 9. Rivers Of Babylon|10. Hosanna Filio David
Disc 2 - London Sessions: 1. Something Beautiful| 2. We People Who Are Darker Than Blue| 3. Out Of The Depths| 4. 33| 5. Dark I Am Yet Lovely| 6. I Don't Know How To Love Him| 7. If You Had A Vineyard| 8. The Glory Of Jah| 9. Watcher Of Men| 10. Whomsoever Dwells| 11. Rivers Of Babylon

 シニードはインディーズに転じてやりたいことがどんどんできるようになっているらしく、05年に『Throw Down Your Arms』を発表して大規模なツアーを敢行したばかりだというのに、06年には本作の録音が完了していた。第4子の妊娠・出産(おめでとうございます)がなければ06年中に発売されていた筈で、事実、06年末には「If You Had A Vineyard」と「Jeremiah (Something Beautiful)」の2曲がファンへのクリスマス・プレゼントとして無料ネット配信(アイルランドではCDショップでCDシングルを無料配布)されたりしていた。
 今回のアルバムはオリジナル8曲+カバーという構成で、カバーの曲目は「We People Who Are Darker Than Blue」(カーティス・メイフィールド)、「I Don't Know How To Love Him」(ミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』)、「Rivers Of Babylon」(トラディショナル)など。さらに、同じ曲目を、 Disc 1「Dublin Sessions」ではアコースティック・ギターとボーカルだけの演奏で収め、Disc 2「London Sessions」ではフル・バンドで聴かせるという趣向になっている。Disc 1 ではスティーブ・クーニーと共演、Disc 2 はシュガーベイブスなどを手掛けたロン・トムがプロデュース。前作に続いてロビー・シェイクスピアも参加している。
 シニード自身はもともとギターとボーカルだけのアルバムを作ろうとしていたのだが、ロン・トムからプロデュースの申し出があり、同時に「London Sessions」が制作されることになったらしい。「Dublin Sessions」はシンプルで美しいギターの音色に心洗われるし、「London Sessions」も、プロデューサーが自分から申し出ただけあって、シニードらしさを殺さないサウンド。前作・前々作でのトラッド探求やラスタファリズム探求が消化されてシニードの血肉となっていることを感じさせる内容だ。宗教色の強い歌詞を読まなくとも、シニードの生々しい祈りのような歌からは彼女の平和への思いが切々と伝わってくる。

Throw Down Your Arms(Sanctuary, 2005)

ジャケ 1. Jah Nuh Dead| 2. Marcus Garvey|3. Door Peep|4. He Prayed|5. Y Mas Gan|6. Curly Locks|7. Vampire|8. Prophet Has Arise|9. Downpressor Man|10. Throw Down Your Arms|11. Untold Stories|12. War|13. Move Out of Babylon*|14. Abendigo*|15. Jah Can Count on I* *日本盤のみ収録

 2003年の突然の引退宣言から2年を経て発表された復帰作は、スライ&ロビーを共同プロデューサーに迎えてジャマイカで録音されたレゲエ・カバー・アルバム。実のところ、引退宣言のあともいろいろと未発表マテリアルや編集盤などのリリースが続いていたので、なんだかちっとも引退している感がしなかったシニードであるが、確かに「宣言」は、音楽じたいをやめてしまう訳ではなく、商業的なポップスの世界、有名人としての生活からは身を引きたいという趣旨だったようには思う。結局今作を発表したあとにはツアーも敢行、TV出演などのプロモーションもこなし、すっかり完全復活モードだ。
 今までにもレゲエ調の曲は何曲もつくってきているシニードなので、企画じたいには全く違和感はなかったものの、実際に聴いてみると、今までのシニードのレゲエとは何かが違っていて、新鮮だ。やはりスライ&ロビーによる非常にオーセンティックで肉感的なレゲエ・プロダクションであることが大きい。シニードはこのアルバムを「ラスタ」アルバムだと形容しており、宗教歌/神についての歌だと位置づけているようだ。当然シニードらしい精神性も健在。

Collaborations(EMI, 2005)

ジャケ 1. Massive Attack - Special Cases (Radio Edit)|2. Asian Dub Foundation featuring Sinead O'Connor - 1000 Mirror|3. Bomb the Bass featuring Sinead O'Connor & Benjamin Zephaniah - Empire|4. Ghostland - Guide Me God|5. Jah Wobble's Invaders of the Heart featuring Sinead O'Connor - Visions of You|6. Afro Celt Sound System - Release|7. Sinead O'Connor with the Blockheads - Wake Up and Make Love with Me|8. The The - Kingdom of Rain|9. U2 & Sinead O'Connor - I'm Not Your Baby|10. Conjure One featuring Sinead O'Connor - Tears from the Moon|11. Peter Gabriel & Sinead O'Connor - Blood of Eden|12. Moby featuring Sinead O'Connor - Harbour|13. Aslan - Up in Arms|14. Damien Dempsey featuring Sinead O'Connor - It's All Good|15. The Edge & Sinead O'Connor - Heroine|16. The Colourfield featuring Sinead O'Connor - Monkey in Winter|17. Sinead O'Connor & Terry Hall - All Kinds of Everything

 自分自身のデビュー作以前に発表された、U2 のエッジとの共演曲「Heroine」から、2003年の「引退」宣言に至るまでに残された数々の共演曲をまとめた編集盤。キャリアの長い大物アーティストには「Duets」なんていう編集盤を出す人も多いが、ダンス・ミュージックへのボーカル提供が多いシニードの場合は「Collaborations」だ。彼女は、実にこうした他人のアルバムへの客演が多い人なので、ファンにはありがたい企画。多彩なアーティストとの共演を集めていながら、シニードの埋没しようのない個性が発揮された充実の17曲で、シニードの「裏ベスト」の感がある。

The Value of Ignorance + The Year of the Horse [DVD](Chrysalis, 2003)

ジャケ The Value of Ignorance:1. Jackie|2. Just Like U Said It Would B|3. Mandinka|4. Just Call Me Joe|5. Never Get Old|6. Jerusalem|7. Troy|8. I Am Stretched on Your Grave
The Year of the Horse:1. Feel So Different|2. The Emperor's New Clothes|3. I Want Your (Hands on Me)|4. Three Babies|5. Black Boys on Mopeds|6. Irish Ways|7. I Am Stretched on Your Grave|8. Last Day of Our Acquaintance|9. Nothing Compares 2 U|10. Jump in the River|11. Jerusalem|12. Troy

 1988年と1991年に発表されていた2作のライブ映像を1枚に収めたDVD。1988年の「The Value of Ignorance」は、8曲で40分弱と短く、また、サイケデリックな映像効果が加えられていることで悪評が高い作品だが、今となっては貴重な映像でもある。ライブ映像を素材にしたMTV作品と割り切って観れば、若々しいシニードも写っているし、時代を感じさせて面白いといえば面白い。1991年の「The Year of the Horse」は『I Do Not Want What I Haven't Got』の大ヒットの後のツアー映像。何かに取り憑かれたかのようにぐにゃぐにゃ踊りまくり、ピリピリと緊張感はりつめた声で歌い叫ぶ、当時のシニードならではの異様な迫力に打たれる。
 この2作品の両方で演奏されている「I Am Stretched on Your Grave」は、2003年に発表されたダブリン公演のDVDでも演奏されているので、アレンジや演出の異なる3作品3様の演奏を見比べてみるのも面白い。

She Who Dwells in the Secret Place of the Most High Shall Abide Under the Shadow of the Almighty(Hummingbird/Vanguard, 2003)

ジャケ Disc 1:1. Regina Caeli|2. O Filii et Filiae|3. My Love I Bring|4. Do Right Woman|5. Love Hurts|6. Ain't It a Shame|7. Chiquitita|8. Brigidine Diana|9. It's All Good|10. Love Is Ours [Demo]|11. A Hundred Thousand Angels|12. You Put Your Arms Around Me [Demo]|13. Emma's Song|14. No Matter How Hard I Try [Demo]|15. Dense Water, Deeper Down|16. This IS a Rebel Song|17. 1000 Mirrors [Performed by Asian Dub Foundation]|18. Big Bunch of Junkie Lies|19. Song of Jerusalem
Disc 2:1. Molly Malone|2. Oro Se Do Bheatha 'Bhaile|3. The Singing Bird|4. My Lagan Love|5. I am Stretched on Your Grave|6. Nothing Compares 2 U|7. John I Love You|8. The Moorlough Shore|9. You Made Me the Thief of Your Heart|10. Paddy's Lament|11. Thank You For Hearing Me|12. Fire on Babylon|13. The Last Day of Our Acquaintance

 2003年の引退宣言の後に突如リリースされ、最後のアルバムになってしまうのかと思われた2枚組。この長いタイトルは、デビュー作『The Lion and the Cobra』同様、旧約聖書の詩編91節からの引用で、そんなところにも、シニードが自身のキャリアに区切りをつけようとしていたことが伺われる。何曲かの新曲とともに、今まで作っておいてリリースできなかったものをぜ〜んぶ放出する、140分以上におよぶボリュームのアンソロジーだ。
 ディスク1は、数々の興味深い有名曲のカバー(アレサ・フランクリンの「Do Right Woman」、エバリー・ブラザーズら数々のアーティストに歌われた「Love Hurts」、B-52's の「Ain't It a Shame」、アバの「Chiquitita」)や、故ダイアナ妃へのトリビュートアルバムのために録音されたものの、物議をかもしそうな歌詞のために採用されなかったといういわくつきの「Brigidine Diana」、マッシブ・アタックとの共同プロデュース曲「It's All Good」「Love Is Ours」、以前アルバムに収録されたものとは別バージョンの「Emma's Song」「This IS a Rebel Song」、エイジアン・ダブ・ファンデーションのアルバム『Enemy of the Enemy』に収録されていた強力なトラック「1000 Mirrors」などなど、聴きごたえのある曲満載の濃〜い1枚。「(Demo)」と律儀に断ってあるトラックがいくつかあるものの、それらも曲じたいはとても良くて、デモの状態でありながらあえて収録したお気に入りの曲であることを伺わせる。
 ディスク2は、DVD『Goodnight, thank you. You've been a lovely audience.』と音的には同内容のライブ盤。この充実した公演を目の当たりにしていたときには、だ〜れもシニードが引退宣言をするなんて夢にも思ってはいなかっただろう。

Goodnight, thank you. You've been a lovely audience. [DVD](Eagle Vision, 2003/Panorama, 2003/ハピネット・ピクチャーズ、2005)

ジャケ

ジャケ
(日本版)
  1. Molly Malone|2. Oro Se Do Bheatha 'Bhaile|3. The Singing Bird|4. My Lagan Love|5. I am Stretched on Your Grave|6. Nothing Compares 2 U|7. John I Love You|8. The Moorlough Shore|9. You Made Me the Thief of Your Heart|10. Paddy's Lament|11. Thank You For Hearing Me|12. Fire on Babylon|13. The Last Day of Our Acquaintance

 2003年、突然の引退宣言とともに、最後の作品というふれこみでリリースが発表されたライブDVD。『Sean-Nos Nua』ツアー、2002年10月26日のダブリン公演を収録しており、『Sean-Nos Nua』からはもちろん、往年のヒット曲も多数取り混ぜた嬉しい選曲になっている。シニードは比較的ラフな格好で登場、左手の親指にマイクのコードをひっかけて歌うおなじみのスタイルで、一曲一曲丁寧に歌い綴っていく。バンドの演奏も充実しており、とりわけ終盤の「Fire on Babylon」の迫力は圧倒的だ。
 DVDには『Sean-Nos Nua』制作過程を追った興味深いドキュメンタリー「The Song of Heart's Desire」や、『Sean-Nos Nua』の6曲のプロモーション・ビデオも収録されている。

Sean-Nos Nua(Hummingbird/Vanguard, 2002)

ジャケ 1. Peggy Gordon|2. Her Mantle So Green|3. Lord Franklin|4. The Singing Bird|5. Oro, Se Do Bheatha 'Bhaile|6. Molly Malone|7. Paddy's Lament|8. The Moorlough Shore|9. The Parting Glass|10. Baidin Fheilimi|11. My Lagan Love|12. Lord Baker|13. I'll Tell Me Ma|14. Spanish Lady*|15. Marble Walls* *日本盤のみ収録

 独立レーベルから発表されたトラッド・アルバム。シニード自身はこのようなアルバムをずっと作りたいと思っていたのだが、メジャーではなかなか実現できなかったのだとか。「Old-Style made New」という意味となるタイトル通り、トラッド・アルバムだが、随所に現代的なサウンド処理が聴かれる(前作にも参加していたエイドリアン・シャーウッドが今回も参加)。
 浮遊感のある音響空間の中から降ってくるシニードの声は、古くからの伝承歌の魂が目の前に立ち現れるかのような独特の効果を上げている。ブックレットで曲ごとに彼女自身のコメントが書かれているのも興味深い(今回はやたらとラスタファリズムの「ジャー神」が出てくる。そういえばCDのバックインレイ内側のデザインにもさりげなくラスタ・カラーのラインが)。前作が個人的にはややオーバープロデュースぎみに思われていたので、ルーツに帰ったという感じの今作はやはり嬉しい。

Faith & Courage(Atlantic, 2000)

ジャケ 1. The Healing Room|2. No Man's Woman|3. Jealous|4. Dancing Lessons|5. Daddy I'm Fine|6. 'Til I Whisper U Something|7. Hold Back the Night|8. What Doesn't Belong to Me|9. The State I'm In|10. The Lamb's Book of Life|11. If U Ever|12. Emma's Song|13. Kyrie Eleison|14. Emma's Song [Adrian Sherwood Mix]* *日本盤のみ収録

 Atlanticに移籍して6年ぶりに発表されたオリジナル・フルアルバム。アルバムがこのタイトルでこのイラスト、リード・シングルのタイトルが「No Man's Woman」と聞いて、またすごくとんがった作品が出るのか? と思いきや、全体を聴いた印象は今までになくポップ。多彩なプロデューサーを集めて制作されていて、サウンドもとても現代的だ。No producer's singer という訳にはいかなかったのかと残念(?)に思う反面、明るく元気な歌には安堵したりもする。
 今までの彼女の音数の少ないアレンジに慣れていた分、今作の濃密な音空間には違和感も感じたが、そこからつき抜けてくる歌声は同じ。彼女が作ったアルバムの中では間違いなく最もポップな作品であるし、新展開を素直に喜びたいと思う。

So Far... the Best of Sinead O'Connor(Chrysalis, 1997)

ジャケ 英盤:1. Nothing Compares 2 U|2. Mandinka|3. The Emperor's New Clothes|4. Thank You for Hearing Me|5. The Last Day of Our Acquaintance|6. Fire on Babylon|7. Troy|8. I Am Stretching on Your Grave|9. Jackie|10. Success Has Made a Failure of Our Home|11. John I Love You|12. Empire -Bomb the Bass|13. Don't Cry For Me Argentina|14. You Made Me the Thief of Your Heart|15. This IS a Rebel Song
米盤:1. Nothing Compares 2 U|2. Mandinka|3. The Emperor's New Clothes|4. The Last Day of Our Acquaintance|5. Fire on Babylon|6. Troy|7. I Am Stretching on Your Grave|8. Success Has Made a Failure of Our Home|9. John I Love You|10. Empire - Bomb The Bass|11. I Want Your (Hands on Me)|12. Heroine (Theme from Captive)|13. Don't Cry For Me Argentina|14. You Made Me the Thief of Your Heart|15. Just Like U Said It Would B

 Chrysalis / EMI 時代を総括する(筈の)15曲入りベスト盤。選曲は妥当なような、いまいちなような…。「My Special Child」など、アルバム未収録シングルなどが入るかという期待がリリース前にはあったものの、それらは入らずじまい。シングル集というほどシングル曲にこだわっている訳でもなく、要するによく分からない選曲ながら、超・有名どころは一応入っているので1枚で済ませたい人には良いのかも。
 ところで、米盤と英盤で、収録曲が若干違います(日本盤は英盤と同じ)。どちらの選曲がより良いとも一概に言えない微妙な違いなので、お好きな方をどうぞ。

Gospel Oak EP(Chrysalis, 1997)

ジャケ 1. This Is to Mother You|2. I Am Enough for Myself|3. Petit Poulet|4. 4 My Love|5. This IS a Rebel Song*|6. He Moved Through the Fair (Live)* *英盤には未収録

 4曲入り(米盤では6曲)のEP。後にリンダ・ロンシュタット&エミルー・ハリス(アルバム『Western Wall』)にカバーされた名曲「This Is to Mother You」はじめ、前作『Universal Mother』の延長上にある、美しいバラード集といった趣。シニードはこれを最後にColumbiaに移籍するものの、Columbiaから出たのはこのEPの再発だけ。次作はAtlanticからとなるのであった。どういう契約だったんだか?

Universal Mother(Chrysalis, 1994)

ジャケ 1. Germaine|2. Fire on Babylon|3. John I Love You|4. My Darling Child|5. Am I a Human?|6. Red Football|7. All Apologies|8. A Perfect Indian|9. Scorn Not His Simplicity|10. All Babies|11. In This Heart|12. Tiny Grief Song|13. "Famine"|14. Thank You for Hearing Me

 オリジナル作品としては4年ぶりの4作目。有名なフェミニスト・ジャーメイン・グリアのスピーチからの短いサンプリングからアルバムは始まり、重い内容の「Fire on Babylon」「"Famine"」といった曲が彼女らしさを聴かせるけれども、全体的に音数の少ないアレンジのバラードがとても多い。同じメロディーを延々と繰り返す「Thank You for Hearing Me」を始め、とても精神的・内省的な歌で、お経のような境地。 また、「A Perfect Indian」や「Scorn Not His Simplicity」は、ほぼピアノだけを伴奏にした歌が、ただただ美しい。愛息が歌っている短いア・カペラ曲「Am I a Human?」も可愛いらしい。
 ややとりとめのない印象もあるものの、個人的に好きな曲も多いアルバム。通して聴くと、彼女の受けてきた様々なトラウマと、その傷からの癒しとがくっきりと浮かび上がって来る。

Am I Not Your Girl?(Chrysalis, 1992)

ジャケ 1. Why Don't You Do Right?|2. Bewitched, Bothered and Bewildered|3. Secret Love|4. Black Coffee|5. Success Has Made a Failure of Our Home|6. Don't Cry for Me Argentina|7. I Want to Be Loved by You|8. Gloomy Sunday|9. Love Letters|10. How Insensitive|11. My Heart Belongs to Daddy*|12. Almost in Your Arms*|13. Fly Me to the Moon*|14. Scarlet Ribbons|15. Don't Cry for Me Argentina (Inst.) *日本盤のみ収録

   リリース当時、誰もが意外に思ったスタンダード・アルバム。オリジナリティが絶賛を集めて大ヒットしたアルバム(『I Do Not Want What I Haven't Got』)の次に普通出すような内容ではないのだが、まあこの人は普通じゃないのである。オリジナル作品では思ったままの曲を奔放に歌うとんがった人のようでいて、案外、自作に限らず好きな歌、良い歌を歌っていこうという「歌い手」指向もある人なんだなあと思う。
 オーケストラとの共演がややミスマッチに思われる曲もあるけれども、涼しげな、囁くような声が気持ち良く曲に乗っているトラックもある。こういうアルバムの最後に「スピーチ」が入ってるのも異常だと思うんだが…まあ、この人は普通じゃないのだ。

I Do Not Want What I Haven't Got(Chrysalis, 1990)

ジャケ

Original Album: 1. Feel So Different|2. I Am Stretched on Your Grave|3. Three Babies|4. Emperor's New Clothes|5. Black Boys on Mopeds|6. Nothing Compares 2 U|7. Jump in the River|8. You Cause As Much Sorrow|9. Last Day of Our Acquaintance|10. I Do Not Want What I Haven't Got
Bonus Disc for 2009 Special Limited Edition: 1. Night Nurse| 2. My Special Child| 3. Damn Your Eyes| 4. Silent Night (long version)| 5. You Do Something To Me| 6. Mind Games| 7. What Do You Want| 8. I Am Stretched On Your Grave (Apple Brightness Mix)| 9. Troy (Live in London)| 10. I Want Your Hands On Me (Live at Hammersmith Odeon)

 シングルとして世界中で大ヒットした、プリンス作曲の「Nothing Compares 2U」を収録、アルバムとしてもよく売れた2nd。緊張感と聴きやすさのバランスが良く、万人にお薦めしたい名盤。「Black Boys on Mopeds」など、静かに歌うことで聴く人を引き込む上手さが光っている。
 「The Emperor's New Clothes」「Jump in the River」などのざっくりしたポップな曲は個人的にも大好き。「Emperor〜」は異常にエンディングが長かったりするのもなんだか良い。アイリッシュ・フォーク曲がダンス・ビートに乗っかった「I Am Stretched on Your Grave」も面白く、彼女らしい。
 冒頭の曲、「Feel So Different」のイントロに入っているつぶやきは、"The Serenity Prayer" として有名なお祈りの文句。「神様、変えることのできないものを受け入れる平静な心をお与え下さい。変えられるものは変えていく勇気を。そしてその二つを見分ける知恵を」 激情と静けさの間をゆれ動く彼女にふさわしい祈りの言葉だ。

The Lion and the Cobra(Chrysalis, 1987)

ジャケ

1. Jackie|2. Mandinka|3. Jerusalem|4. Just Like U Said It Would B|5. Never Get Old|6. Troy|7. I Want Your (Hands on Me)|8. Drink Before the War|9. Just Call Me Joe

 デビュー作。デビュー作だが自分でプロデュースしちゃっているし、独自の世界を作ってしまっている。アイリッシュ・トラッドとモダンなハード・ロックが融合した感じのサウンドも鮮烈だが、聞き取れないほどのささやき声からパンキッシュな絶叫までの振れ幅で感情をぶつけてくるボーカルが何といっても型破り。
 「Mandinka」など、ポップな曲も入っているけれども、全体的な聴きごたえは重い。とりとめなく長く、叫ぶ声も狂おしい「Troy」は、最悪にして最高の彼女の代表曲といえるのでは。リズムの面白い「I Want Your (Hands on Me)」も良い。また、「Never Get Old」冒頭でゲール語の語りを入れているのはエンヤだったりする。
 タイトルは旧約聖書の詩編91節からの引用で、信仰する神に守られた者が踏み越えていく試練を象徴する言葉だ。


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