養殖モノによる天然キャラ詐欺ではなく
「食わず嫌い王決定戦」に出た能年玲奈が、嫌いなバッテラを食べてジンマシンが出てしまったといつものように激情型で話す石橋貴明に向かって一言、「……お疲れさまです」と返答したのは、なかなかの衝撃だった。人を乱雑に扱うことで笑いを練り上げる石橋の手法が、一瞬で機能不全に陥っていた。養殖で作ったものに天然モノのラベルを貼って市場に流通させる天然キャラ詐欺が芸能界にはびこってきたが、コリン星からやって来た人が難なくママタレントに落ち着いてしまったように、「わかっちゃいるけど騙されておこう」というコンセンサスがすっかり茶の間に広がっている。どうせ養殖でしょ、と視聴者に思われているのを知っているから、風呂場で小さなおじさんを見たと広言し続ける釈由美子のような、バッターがいないのに打ちにくい球をいつまでも投げ続ける厄介者は珍しくなった。それよりも、ワイプ芸のように役割を自ら探し出す道筋を選ぶようになったのだ。
「AかBか」を問われて「3です」と答える能年
新作映画PRのために能年玲奈がありとあらゆるバラエティ番組に出ているが、この人の対話力の不安定さは、もはや「はじめてのおつかい」で親に頼まれたものを近所のスーパーまで買いに行く子供に近しい。「はじめてのおつかい」が子供に求める展開とは、道に迷ってしまい、泣きじゃくりながらも、通行人にスーパーの場所を聞いてようやく辿り着き無事に買えた、という流れ。しかし、実際には意外とすぐに辿り着いてしまったり、チーズをバターと間違えてしまう程度でおさまったりする。つまり、そこまで劇的なことはそうそう起きないのだが、それでよしとされている。能年玲奈のバラエティでの扱われ方って、これと同質ではないか。あらゆる所作は、決して派手ではない。しかし、必ずズレている。「AかBか」を問われて「3です」と答えるような素頓狂さに笑い転げるのは最初だけで、続けて出演番組を観ればこの人はいつもこんなことばかりを言っていると気付く。そこに彼女の算段があれば、その算段の芽生えを見つけ出すことに長けている石橋貴明は、反撃を試みたに違いないのだ。石橋がボソッと「久々に難しい子だ。おじさんも手が出ない」と降参を表明するのはまったく珍しい光景だった。
「井上真央=みずほ銀行」「菜々緒=消費者金融」「能年玲奈=かんぽ生保」
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