同じ軸で争わず、他に似ていないメディアを作る:メディア野郎・ 田端信太郎が原体験と共に語る

livedoor_small

”メディア野郎”のスピリットを垣間見ました。

スポンサーリンク

J-WAVE『HELLO WORLD』、2013年2月21日放送分より。

今回は番組の企画、「ザ・インタビューズ」より現・LINE株式会社 上級執行役員である田端信太郎さん出演回をピックアップ。これまでR25や、VOGUE、livedoorニュースなど様々なメディアの立ちあげおよび運営に携わってきた、いわば”メディア野郎”です。先月、発売されたばかりの新刊『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』も大好評です。

今回は放送の前半部から、これまで立ちあげてきたフリーマガジン「R25」や、livedoor時代の例のエピソードなどについてのお話をピックアップします。特にlivedoor時代の運営方針には、メディア野郎としてのスピリットが詰まっていて、当時をよく知る人には興味深い内容となっているのではないでしょうか。

また、この模様はUstreamのアーカイブからもご覧いただけます。
【HELLO WORLD】特集「ザ・インタビュー~田端信太郎~」

  

しゃべるひと

  • 田端信太郎さん(LINE株式会社 上級執行役員)
  • DJ TAROさん(ラジオパーソナリティ)

 

いかにして他の媒体にないパッケージ化ができるか

DJ TARO:先ほどプロフィールをご紹介させていただいて、R25の立ちあげがあって、livedoorニュースの統括、livedoor、NAVERまとめ…、非常に幅広いことをされているんですけどそれぞれの仕事で共通で意識してることってあるんですか?

田端:方法論でいうと、広告と編集とか、ユーザーと企業とか、VOGUEとかGQみたいな立場で紙とデジタルでどう融合させるか?みたいな、紙とデジタルとか、普通に考えると対立しちゃうものっていっぱいあるじゃないですか。

そのなかで両方の良いところをかいつまんでうまくバランスをとって、パッケージングするか?というところは常にメディアを作るうえで1番大事だなと思っていて。

あとは志の部分でいうと、いかに他と違うものを…、例えば部数が多いとか少ないとかっていうのは一直線のなかで並ぶものじゃないですか。

DJ TARO:はい。

田端:50万部の雑誌のうえに100万部の雑誌があって、っていうふうに。

でも5万部なんだけど、別にそもそも俺らは部数で勝負してないし、みたいな意味で違う軸で、例えば、どこよりも最先端のファッションを追っかけてるとか、起業家を応援したいというスピリットはどこの雑誌にも負けないというか、他の雑誌に似てないものを作るということはすごく大事だと思っていて。

例えば、缶コーヒーとか車ってそれぞれ直接の競合ってあるじゃないですか。

DJ TARO:ありますね。

田端:コカ・コーラはジョージアって出してて、サントリーはBOSSってのを出してますと。

缶コーヒーはひとつひとつ缶コーヒーとして成立するから、あんまり違いがなくても実際ぶっちゃけ喉乾いてて缶コーヒーが飲みたいときに目の前の自販機に缶コーヒーがあったら、「まあ、どっちか買っとくか」みたいなかたちになるし、どっちかがどっちかを後追いするような商品があったとしても、後追いの側が飲まれることもあるし、車だって似たような車種もいっぱいありますよね、それも車は車としてたとえ後から出そうが車として走れば役に立つっていうのはあるかもしれないですけど。メディアってコピーして後から出すって超ダサくて、もちろん法律的な問題もあるし、そういう問題がなくてもぼくからしたらものすごくダサい。カッコ悪いっていう美学というとおこがましいですけど、そういうのはあります。

例えば、livedoorに入った時ってYahoo!を意識しないと言ったら嘘になりますけど、Yahoo!に対してどうやって違うことをするか?みたいなことはすごく意識しました。

DJ TARO:どこで違いを出していくか、ってところですね。

 

反対されまくった「R25」の原体験

DJ TARO:やっていったうえで、1番苦しかったことってなんですか?

田端:苦しいと思ったことはそんなに…ですけど、1番の原体験でいうと「R25」を立ちあげときの最初のうちは苦しかったですね。

フリーマガジンなのでラックの置き場所を開拓しないといけないんですけど、例えば「駅に置かせてくださいと」。

DJ TARO:はい。

田端:「いいけど、置いてもし風に吹かれて電線に引っかかって、電車の運行に支障があることだったらおたく責任取れるの?」とか、「酔っ払いが火をつけたらどうするの?」とか、間違ってることは言ってなくて、ぼくは別に正しいと思っていて、インフラ屋さんの発想って”メディア野郎”とは違う、”鉄道野郎”としての責任を取らないといけないという発想からくると、「まぁ、そうなんだな…」みたいなところとか。

フリーマガジンの場合は、最初はいわゆるブランド系のナショナルクライアントは、紙はザラザラで、汚くて、読み終えられたらその辺にポイって捨てられて、駅の改札の脇でみんなが踏んづけていくみたいなそんなイメージで、「そんなところにはうちの広告は載せられない」みたいなのが広告業界全体のコンセンサスみたいなものだったんですね。

1回ぼくはそういった成功体験があるので、メディアをやるときに最初に反対されても「まぁ、そりゃそういうものだ」って思うんですけど、当時は1回目だから「こんなに反対する人がいて、どうなんだろうな?」っていう心の中に弱気な瞬間が無かったかと言えば、めちゃくちゃありました。

DJ TARO:だからか、東横線の改札とホームの間の途中の部分によく置かれてたんですけど。

田端:ホームそのものは地下鉄しかないんじゃないかな?

DJ TARO:あっ、そうですか。

田端:多分風があったりすると置いてないんじゃないかな?

DJ TARO:東横線の階段の途中に「R25」が置いてあるとか。でも瞬間を逃すとすぐなくなっちゃうんですよね。

あと当時おもしろかったのが、書店に行って「R25」売ってますか?って言ってる人はすごく多くて。(笑)

田端:(笑)あれも書店にラックを置くことを当時怒られましたもん。「こんなもの置くと週刊誌が売れなくなっちゃうじゃないか」って(笑)

途中に書評のコーナーを1ページ作って、「ここで本を紹介してるんですよ」っていう、「敵じゃないです」っていうのも(笑)

いちいちそういうのを全部口説いていくって作業でしたね。

DJ TARO:それが1番大変だったかもしれないですね。

田端:大変というか、本当にこの先に出口があるのかわからない、みたいな感じなんですけど。

あとは、メディア野郎的に良かった経験として、印刷会社をどこにするか?とか、紙の銘柄をどこにするか?とか、余った雑誌を処理する古紙再生工場を見に行ったりとか、そういった意味では、紙の選定から広告営業、ラックの開拓まですべてのフローを上流を下流まで見れたっていうのは自分にとって財産となってますね。

DJ TARO:そこで財産になってるわけですね。

 

 身内の不祥事すらもコンテンツにする

DJ TARO:ぼくらもよくヒルズにいるので覚えてますけど、あのlivedoor事件のときにはちょうど同じビルに…

田端:38階です。

DJ TARO:ぼくらの33階の上ですよね。あのとき、ヒルズが物々しい、「こんなビジネスマナー講座よりお巡りさんの方が多い日があるんだ」っていう状態だったんですけど、そのあとにぼくがびっくりしたのがホリエモン逮捕の記事がlivedoorニュースに載ってたっていう。

あのとき担当されてたのが…?

田端:まさしくそうですね。

DJ TARO:ってことですよね。日本的な考え方でいうと、自社のトップの話をもうちょっとオブラートに包むみたいな感じを全く出さないのか?というところだと思うんですけど、

田端メディアのビジネスって、サラリーマン的な会社の利害と読者の興味のあることでどうバランスをとるかってことだと思うんですけど、それでいうと身内の不祥事だから新聞の隅っこの記事に済ませておこうっていうのは企業側の論理に振った話で、どっちかというとぼくは天邪鬼な人間なので頭にあったのは、だいたい当時は「みんなホリエモンのイエスマンばっかりで、ろくでもない連中が集まってて、中身がなくて、金儲けしか考えてなくて、メディア野郎的なスピリットがないような若い欲に眩んだ連中がやってるんだろ」みたいな世の中のムードに対して、「いや、なんかこれ違うんじゃねぇか」と。

それをただ反論してもしょうがないじゃないですか、だったら一番わかりやすいのは「ホリエモン逮捕 いよいよ間近」とかガンガン言ったら?と。

DJ TARO:(笑)

田端:新聞社がもし自分の身内が不祥事で逮捕されたときに一面でやりますか?と。

DJ TARO:やらないですね。

田端:例えば、社長の息子が薬で逮捕されたときにやりますか?と。やらないですよ。

そういったところで、「どうだ」っていう、今風にいうと「ドヤ顔」になるかもしれないんですけど、そこは「それ見ろ」って居直っていて。

DJ TARO:(笑)

田端:でもあれは良かったなと思うのは、見に来た人は「livedoorはlivedoorなりに、筋とか気概を持ってやってるんだな」ってのがあれで伝わってくれて。

あのあとは、広告営業的には激減ですよ。もう傷物媒体になっちゃたんでほとんど広告をキャンセルされたんですけど、アクセスは全然減らなかったですね。むしろどんどん増えたくらいです。

DJ TARO:「見てほしい」ってアピールしたものが。

田端:それ自体もコンテンツだし(笑)

DJ TARO:いや、そこがすごい(笑)

 

livedoorのエピソードはとても象徴的ですね。もし仮に、ここで言われているような大手新聞社のように隅っこに小じんまりとした記事を掲載するような手段を取っていたとしたらいまのlivedoorニュースはないと言っても過言ではないのかもしれませんね。

次回は番組の後半から、田端さんが考える「ラジオ」についてのお話です。実はかなりラジオも聞いていらっしゃったようで、いちラジオファンとしての非常に熱いメッセージもこめられています。

もちろん、番組のUstreamアーカイブからでもご覧いただけます!
【HELLO WORLD】特集「ザ・インタビュー~田端信太郎~」

 

 番組情報

HELLO WORLDJ-WAVE
放送日時:22:00〜24:00(月〜金曜)

 


ラジおこしの更新情報はこちらから!