もし沖合いに流されたら!?19時間漂流を現場検証!!
先月、静岡県伊東市の沖合で、友達とシュノーケリングをしていた中嶋祐輔さんが行方不明に。
その翌日、伊豆半島南部の下田市にある海水浴場で救出されました。
「生きて帰ろうという一心だった」と語る中嶋さんですが、実に19時間に渡って、40kmの距離を漂流。
では海の上で漂流した場合、どれほど潮や風の影響を受けるのでしょうか?
『ココ調』では、実際の現場で19時間漂流して検証してみました。
まずは、中嶋さんの漂流について振り返ってみましょう。
その日、中嶋さんは友達とともに、海沿いにある汐吹公園へ。
遊泳禁止のエリアにも関わらず、シュノーケリングをはじめました。
沖に浮かぶ手石島を目指しますが途中で断念。
しかしここでアクシデントが。
引き返したら足を吊ってしまい、体力を奪われたので、浮いて体力を回復しようと待っていたら次第に沖に流されてしまったそう。
その時のかっこうは、ブルーのラッシュガードに海水パンツ、顔にはゴーグルをして足には足ヒレを着用。
あまり泳ぎが得意でないという中嶋さん。
そのため仰向けになり、顔だけを水面から出した状態で浮かんでいたそうです。
しかし体は、潮の流れや風の影響を受けて、どんどん南の方に向かって漂流。
泳いで岸に向かうのは難しいと判断し、そのままの体勢で夜を明かします。
すると翌日、幸運が訪れます。
翌朝になると陸が見え、渾身の力を込めて泳いだ中嶋さん。上陸したのは、なんと40キロ南の下田市でした。
では同じ場所から漂流の検証をしても、同じように岸に流れ着くことはできるのでしょうか?
そこで、検証に協力してもらったのが漁師歴12年の佐藤さん。
実は海上保安部に協力して、中嶋さんの捜索活動にも加わった人です。
漂流させるのはこちらのマネキン。
中嶋さんの体重に合わせて腰にはおもり。
また事故当日のかっこうを再現するため、ゴーグルにラッシュガード、海水パンツを着装。
さらに安全対策として、他の船から目立つように赤い旗を取り付けました。
まず向かったのは、中嶋さんがシュノーケリングをはじめた伊東市の汐吹公園。
このエリアは、岩場が多く監視員もいないため、本来遊泳禁止の区域。
にも関わらず、この日も泳いでいる人をみかけました。
この公園から、中嶋さんが目指した手石島までの距離はおよそ700m。
船は中嶋さんが足を吊ったとみられる中間地点に停泊。
ここから検証を開始します。
漂流事故が起きた日の潮の流れは非常に速い南東向き。
検証した日は、それより3分の1の速さの南向き。
方向や速さは微妙に違うものの、どちらも南の下田方面に向かっています。
いよいよ19時間にわたる検証がスタート。
もし途中でマネキンが岸に流れ着いたら、その時点で検証は終了となります。
開始からわずか10分、マネキンに変化が。
人間の体と構造が違うためか、マネキンが沈没。
そこで急遽、マネキンが沈まないよう、ライフジャケットと浮き輪を着けて検証再開です。
すると、開始から30分後。
スタート地点から200mほど下田方面に南下しています。
マネキンに設置したカメラの映像では、手石島から離れていることが分かります。
また現場の海域を取材してみると、こんな発見もありました。
海を見渡すと船が確認できます。
この海域は、遊覧船や、釣り船など、1日でおよそ400隻の船が通るエリアなんだとか。
しかし海の色と同じような青のラッシュガードを着用し、水面から顔だけを出した中嶋さんには、どの船も気付かなかったようです。
開始から1時間の時点で、マネキンは500mほど下田方面へ。
しかしその1時間後は、さほど動いた様子は見られません。
この時間、潮の流れと風の方向がぶつかったため、マネキンはほとんど動きませんでした。
ちなみに中嶋さんが漂流した日は、潮の流れがちがっていたため、かなり速く流されたようです。
検証開始から3時間後の午後6時半には日も暮れて、遠くに臨む街には明かりが。
はるか向こうに見える明かりは伊東市の川奈という場所で、出発した時点からだいぶ南に流されているのが分かります。
午後7時を過ぎると、マネキンはスタート地点からおよそ1.3km離れた伊東市川奈付近に。
風と潮の流れが沖に向かって方角を変えたため、マネキンはどんどん岸から離れてしまいました。
そして午後8時を過ぎた海上は、微かに街の灯りが見えるだけの闇に。
この中に一人でいると思うとかなり怖そう。
マネキンに設置したカメラの映像が、中嶋さんも感じたと思われる恐怖を物語っていました。
また遠くに見える海岸では花火大会が行われていましたが、漂流している海の上は静けさに包まれたままでした。
その後もマネキンは岸から離れ、徐々に沖に向かって移動。
漂流した中嶋さんは、このまま南に流されたようですが、はたして、マネキンはどのような動きを見せるのでしょうか?
すると船に搭載されたレーダーをチェックしていた佐藤さんからこんな情報が。
潮の流れの変化により、中嶋さんが流された南ではなく、真逆にあたる北の方面に流されると言うのです。
さらに、風が南西から吹き、マネキンはその風に押されている模様。
佐藤さんの予想通り、マネキンはUターンして一気に北へ。
スタート地点より北上し、熱海市の初島方面に向かいました。
その後もマネキンは暗闇の中をひたすら北へ。
そして検証開始から12時間半が経った午前4時。
ようやく朝日が昇りはじめた時点で場所を確認してみると、初島の東沖に流されてきています。
その後もマネキンはゆっくりとですが、北上していき…
ついには初島も過ぎてしまいました。
このまま北上すれば、行きつく先は小田原市。
しかしここで、再び海の怖さを認識させられるものに遭遇!
水面から伸びているのはサメと見られる背ビレ。
しかも2つ見えています。
漁師の佐藤さんによると、この海域ではよくサメを見かけるそう。
そしていよいよ、中嶋さんの漂流と同じ19時間を迎えます。
マネキンの位置を見ると、岸からはかなり距離があり、熱海市の沖合およそ10km。
スタート地点からは直線距離にして12km離れた海の上です。
中嶋さんが19時間で流された距離はおよそ40kmでしたが、今回の検証ではおよそ16km。
風の方向は毎日違ううえ、海では潮の流れもさまざま。
今回は潮の流れが弱かったようですが、マネキンは中嶋さんのように岸にたどり着くことはできませんでした。
今回の検証から、いかに中嶋さんの生還が奇跡的であったかがよく分かりました。
・まだまだ海水浴シーズンですが、最後に政府の広報室が注意喚起している「海での水難を防ぐポイント」をまとめます。
①「遊泳禁止」区域など危険な場所には近づかない
②体調がすぐれない時や、飲酒時は泳がない
③悪天候時は海にでない
④子供たちだけで遊ばない
⑤釣りやボートに乗船する際はライフジャケットを着用。
また万が一溺れてしまった場合に備え、先日「めざましテレビ」で紹介した「ウイテマテ」の自己救助法なども覚えておくとよいかもしれません。