食材の偽装問題は、昨年ホテルや百貨店でさんざん話題になっていました。「木曽路」の牛肉産地偽装はなぜその時分からなかったのか。ちょっと不思議です。しかも今年7月まで偽装が続いていたということは、あれだけ大騒ぎになった事件を目の当たりにしていながら、平然と偽装を続けていたという同社現場の姿勢は明らかに大問題です。
もうひとつさらに気になることは、報道の以下の部分です。
「同社は店舗で申し出のあった客に対し、予約記録を調べたうえで、会社が定める差額相当額の食事券を渡す方針」(日経新聞)「予約記録を調べたうえで、会社が定める差額相当額の食事券を渡す方針」って、不祥事の事後対応として完全にまずいです。この一文に問題点は3点あります。
①予約記録を調べたうえで
なりすましに対する抑止効果を狙ったものでしょう。確かに際限なく請求に来られたら困る、という気持ちは分かります。しかし、実際に食事をした人は当然のこと一般の人から見ても「自分でうそをついておきながら、被害者まで疑うのか」と反感を買うことは目に見えています。
②会社が定める差額相当額
不祥事対応の基本は全額賠償です。法的云々ではなく心証の問題としてです。差額を返せば済むと言うのは、金銭的な部分を埋め合わせれば文句ないだろうと言っているようなものです。言ってみるなら顧客の心情無視。すなわち悪いと思っていないということになります。本来のこう言ったケースでの金銭的対応は利用者の不快感に対するお詫びの気持ちが込められてしかるべきであり、全額返還が当たり前の対応となります。不祥事対応として、一言で言って非常識極まりないと言っていいでしょう。
③食事券を渡す
これも論外です。不祥事発生に対する金銭的返還は現金が常識です。ただでさえだまされて腹を立てている利用者に対して、「差額を返して欲しければまた食べにおいで」と言っているようなものですから。考えられません。二度と食べに行きたくないと思っている人もいるハズで、このような対応は完全に“火に油”です。不祥事を新たな売上につなげたいと言うスケベ心なのでしょうか。絶対あり得ません。
以上のような観点で見させていただいた場合、残念ながら「木曽路」の組織風土、企業文化はサービス業にあるまじきものであると言えるほど病んでいると思われます。社会問題化しても偽装をやめない現場の意識、顧客感情無視の自己中心的事後対応という部分だけからでも容易に分かる同社の組織風土、企業文化は、顧客二の次の「カネ儲け主義」以外何ものでもありません。
組織風土、企業文化というものは一朝一夕に変えられるものではありません。「木曽路」は、「社員教育の徹底など再発防止に取り組むとしている」そうですが、私の目から見れば、社員教育の前に経営の「カネ儲け主義」という考え方の方向修正がまず何よりも必要であると思われます。今さらながらの食材偽装事件でしたが、従来とは別の観点から学ぶことは多くある一件かと思いました。
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