8月15日の終戦の日、日本は戦没者の追悼に包まれた。

 隣の韓国は、植民地支配から解放された「光復節」だった。

 きのうの式典で朴槿恵(パククネ)大統領は、日韓が来年、国交正常化50年を迎えることにふれ、「未来志向的な友好協力関係に進まねばならない」と訴えた。

 中でも慰安婦問題が解決されれば関係が進むとし、「日本の政治指導者たちの知恵と決断を期待する」と呼びかけた。

 両国が未来を見すえて行動を起こすときであることは間違いない。日本の誠実な対応とともに、朴氏自身も「知恵と決断」に踏み込むべきである。

 どちらか一方が百点満点と評価できる解決はありえない。どんな方策を選ぼうとも、両国の間には、評価と反発とが入り組む複雑な反応が生まれることは免れない。

 だが、そのむずかしい着地点を探しだし、大局的な視座に立った解決を図ることこそが、外交をつかさどる政治の使命である。冷え切った隣国関係がこのままでいいはずがない。

 朝日新聞は今月、慰安婦問題について特集を組んだ。過去の報道の誤りをただすとともに、慰安婦問題の本質は普遍的な人権の問題であることを示した。

 日本軍が関与して作られた慰安所で、多くの女性が兵士の性の相手を強いられた。女性の尊厳が著しく傷つけられた。その史実は否定できない。

 負の歴史に対する責任の認識は、日本の歴代政権もしっかり共有してきた。90年代の「アジア女性基金」の設立など一定の努力をしたが、韓国側が受け入れを拒んだ。

 こじれた問題とはいえ、両政府は2年前、打開する合意案に近づいていた。日本の大使が被害者らにおわびし、国家予算による支援などをする案だった。

 その合意は日本の政局の流動化で霧散してしまった。だが、政治が真剣に取り組めば、道は開けることを示している。

 両国の識者や政治家が集まった「日韓フォーラム」が先週、福岡で開かれた。政治の膠着(こうちゃく)が経済や観光にも暗い影を落とし始めている問題も論じられた。

 安全保障面では、北朝鮮への対応や、アジア全体の安定化のためにも、西太平洋を代表する民主主義経済大国である日韓の連携は不可欠だ。

 首脳同士会うこともできず、健全な隣国関係を築けない両国の指導者が、アジア地域全体の未来を描けるはずもない。

 安倍首相と朴大統領は、節目の年を前にした今こそ、真のリーダーシップを見せてほしい。