15日、長崎市の被爆者で語り部の森口貢(みつぎ)さん(77)は、市内の爆心地公園で「不戦の集い」に参加していた。5月、修学旅行中の男子中学生5人から「死に損ない」などと暴言を吐かれ、一時は語り部を辞めようかと考えた。けれど今、「伝える努力を続けよう」と気持ちを新たにする。

 暴言は、被爆遺構を案内中に態度の悪い生徒を注意した後に出た。以前も携帯電話をいじる、寝転がるなどの生徒はいたが、経験のない強烈な言葉だった。

 森口さんは原爆投下後の長崎市中心部に入り、被爆。町はゴミ山のように破壊され、あちこちで遺体を焼く白い煙が立ち上っていた。16年前に小学校教諭を退職し、語り部になった。

 暴言問題の後、平和運動に関わる20代の男性に言われた。「子どものころ、被爆体験を聞くと、先生が言う通りの感想を書かねばならないと感じた。核兵器や戦争が絶対ダメというのは正義だが、押しつけられる反発もある」。ハッとした。後に届く感想文は立派なものばかりだった。自分の思いだけを押しつけていたのかも……。