中川真知子 - かっこいい,すごい,エクストリーム,映画 10:00 PM
映画史上最高の格闘シーン10選
「映画史上最高の長回しシーン12選」の動画を作ったCinefixが厳選し、「映画史上最高の格闘シーン10選」を作ったとSploidが報じました。
まるで踊っているかのように計算されて動く格闘シーンって見ていて気持ちがいいですよね。訳者は格闘シーンを見ると、必ずと言っていいほど自分まで強い人間になれたような気分になります。
■『マトリックス』(1999年)
•カンフーアクション指導:ユエン・ウーピン
クールなカンフーアクションシーンが盛りだくさんの『マトリックス』。中でも追いつめられたネオが、サブウェイでエージェント・スミスと対峙するシーンは、バレットタイムにスペシャルエフェクト、拳と拳の格闘を組み合わせた究極の戦闘シーン。ハリウッドも驚きの迫力のスピード感を実現しました。
カンフーアクションを指導したのは、香港とハリウッドで活躍する映画監督兼武術指導者のユエン・ウーピン氏。『マトリックス』以降も『グリーン・デスティニー』や『キル・ビル』シリーズで武術指導をしており、ハリウッドにおけるカンフーアクションを担う人物です。
■『レイジング・ブル』(1980年)
9位を飾るのはロバート・デ・ニーロが実在するプロボクサーのジェイク・ラモッタを演じたマーティン・スコセッシ監督の『レイジング・ブル』。
最後のシュガー・レイ・ロビンソンとの闘いシーンでは、シネマトグラファーのマイケル・チャップマンを第三のボクサーよろしくリングの中に入れて撮影させたことでボクサー視点の迫力のある絵が実現しました。
本作の主役を演じる上で、役作りに完璧を求めるロバート・デ・ニーロは、ブロンクス訛りを練習し、ジェイク・ラモッタとその元妻であるヴィッキーと接見。
フロリダに住んでいたヴィッキーには、元夫と過ごしていた当時の話を伺い、ホームビデオを視聴させてもらったそうです。これらの経験は、映画に登場する同様のシーンに大きな影響を与えました。
一方、ラモッタ本人にはボクシングのトレーナーになることを依頼。ボクサーとしての体格作りはアル・シルヴァーニが担当していたので、動きの面でラモッタの力を借りたのです。
デ・ニーロをトレーニングしたラモッタは、彼がミドルウェイト級ボクサーとして上位20に入る程の才能を持つと感じたと語っています。実際、デ・ニーロはブルックリンで開催された試合に参加し3試合の内2回も相手を叩きのめしたのです。
■『マッハ!!!!!!!!』 (2003年)
•スタント演技指導:パンナ・リティックライ
プラッチャヤー・ピンゲーオ監督の『マッハ!!!!!!!!』はタイへの愛国心が全面に押し出されているムエタイメインのタイ映画。主演のトニー・ジャーのアクションシーンではCGやスタント、ワイヤが一切使用されていないのがウリです。
ちなみに、動画では演技指導が監督のプラッチャヤー・ピンゲーオと説明されていますが、パンナ・リティックライ氏のようです。
■『ボーン・アルティメイタム』
•格闘スタント演技指導:ジェフ・イマダ
緊張感を演出する為に音楽を使う格闘シーンが多いにも関わらず、本作は一切音楽を使っておらず、ジェイソン・ボーンと相手の闘いと追われる側の息づかいや拳がぶつかる音だけでその緊迫した雰囲気を観客に伝えることに成功しています。
格闘を指導したのは、カリフォルニア州イングルウッド生まれの映画監督/俳優/スタントマン/スタント演技指導者として100本以上のアクション映画に携わるジェフ・イマダ。
イマダ氏はブルース・リーが創始した截拳道(ジークンドー)、テコンドー、空手、小林カンフー、剣道、ボクシングの訓練を受けており、それらを組み合わせた究極のアクションを得意としています。
この格闘シーンはカメラのブレが批評の対象となりますが、そのブレもこの闘いをよりリアルに見せている要素のひとつと言えるでしょう。
■『HERO』 (2002年)
•格闘演技指導:チム・シウ・タン
テーマ別に闘いに色を付けた本作。特に「無名」演じるジェット・リーとダニー・イェンの灰色の闘いは、ふたりの心の中で繰り広げられた格闘を描いており、映画史上最も美しい武器を使ったシーンと言えるでしょう。
■『キル・ビル』(2003年)
•格闘演技指導:ユエン・ウーピン
70年代のカンフー映画や数々の日本映画に影響を受けている本作。『キル・ビル2』ではザ・ブライドとエル・ドライヴァーの間で激しい肉弾戦が繰り広げられましたが、特筆すべきはやっぱりブライドがクレイジー88に1人で挑むシーンでしょう。
眼球を引っ張り抜く、階段を駆け上る音、次々と現れる敵...、格闘は『マトリックス』シリーズの演技指導も担当したユエン・ウーピン。
■『グリーン・デスティニー』 (2000年)
•格闘演技指導: ユエン・ウーピン
•監督:アン・リー
ユエン・ウーピンが演技を格闘を指導した作品で『グリーン・デスティニー』を入れないわけにはいかないでしょう。重量を感じさせない、飛び過ぎ、という批評もありますが、世界にワイヤアクションを見直させることとなったという点においては褒められるべき作品。
ミシェル・ヨーとチャン・ツィーの甘く鋭い闘いは見る価値があります。
第73回アカデミー賞で作品賞の他に10部門でノミネートされ、外国語映画賞を含む4部門を取得。マーシャルアーツの映画がアカデミー賞を受賞したのは今作が初めてです。
■『SPL/狼よ静かに死ね』 (2005年)
•武術指導:ドニー・イェン、ウー・ジン
アメリカではさほど有名ではないドニー・イェンですが、彼は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』、既出の『HERO』、『ブレイド2』等のハリウッドのアクション映画に始まり、テレビドラマ、CMなどでアクションスター、映画プロデューサー、映画監督、俳優として活躍しています。
今回、3位に選ばれた『SPL/狼よ静かに死ね』では息も付かせぬ迫力の格闘とウー・ジンと共に繰り広げます。動画で、このシーンが殆どアドリブだというような説明がされてるので、その部分をKUNG FU CINEMA(以下KFC)が掲載したドニーのインタビュー記事を抜粋することで少し掘り下げてみたいと思います。
KFC:噂ではウー・ジンとの格闘シーンはアドリブだったそうですが、それは本当なんでしょうか?
ドニー:あれが全てアドリブだったなんて噂が何処から来ているのか分からないな。答えは単純だよ。殆どのボクの映画、ボクが監督/アクション監督に関わらず、ボクがアクションシーンを担当した映画は自分で演技指導して撮影から編集に至るまでコントロールしているんだ。
業界でも知られていることだけど、他の映画でも自分で動きをつけているよ。
ボクはアクションの見せ方にとても具体的なんだ。あの格闘シーンだけど...ボクはウー・ジンの初期の映画を見て、彼が武術太極拳のスタイルだと分かったんだ。
『SPL』は現代の映画だから、彼の武術太極拳の動きをどうにかしないとと思ったんだ。ボク自身、武術太極拳にも精通しているから、ジンに武術にみえ過ぎないような決まった動きをするように注文をつけたんだ。
ボクがあの格闘シーンでやりたかったことは、より現実味を出す為にロングショットを入れることだったんだ。幾つかのショットは演技指導されていたけど、残りが現場での即興だったのは事実だよ。具体的には、「ボクが攻撃するから、それに反応してね」といった風だった。
やりながら「来い」と言っていたけれど、視聴者はボクの口が動いているのは見えなかったはずだよ。編集するとよりリアルにみえるようになったよ。
KFC:あのシーンのリハーサルと撮影にはどれくらいの期間を要したのですか?
ドニー:基本的に5日で撮影したよ。アシスタントと動きをつけて、ウー・ジンに「昔ながらのマーシャルアーツをやろうとしたら上手く行かないと思う。だから、君が得意とする動きを抑えてもらわないとね」と伝えたんだ。
KFC:それは双方にとって危険だったのでは?
ドニー:そこまで難しいことではなかったんだ。ボクは経験があるし、リズムを指図している。もし彼が近づきすぎたら、一歩引いたよ。始めの頃、彼は少し弱腰だったけれど、ボクは彼の動きに対応出来るという自信があったね。撮影中に、ジンにも伝えたよ。
全てでは無いにせよ、あのシーンを簡単なやりとりだけで撮影してしまうとは...。相手から繰り出される動きに集中し、防御と攻撃を繰り返す。画面から伝わる緊迫した雰囲気は、本物だったのでしょう。
■『酔拳2』 (1994年)
•演技指導:ジャッキー・チェン
格闘シーンと言えば、ジャッキー・チェンを外すわけにはいきません。『酔拳2』のラストで繰り広げられる工場での格闘はジャッキー・チェンという俳優の魅了が全面に押し出されている文句無しのシーンです。
実は、本作は伝説のアクション指導者であるラウ・カーリョンがメガホンを取っていたのですが、彼の撮影したアクションシーンは作品の色的に古風過ぎると判断され途中で降板。
カーリョンが既に撮影していたアクションシーンの半分以上をジャッキーが監督して撮り直したのです。そして出来上がったのが、千鳥足にキレのある攻撃が不思議に面白い酔っぱらい格闘スタイルです。
■『燃えよドラゴン』 (1973年)
•演技指導:ブルース・リー
1位はやっぱりブルース・リーです。ブルース・リーの存在が無ければ、このリストに登場する映画も作られなかったかもしれないのです。リーは、香港アクションはアメリカの映画ファンを魅了し、それ以降、様々な映画がマーシャルアーツやカンフーといった格闘を取り入れてきました。
『ドラゴン怒りの鉄拳』や『死亡遊戯』の道場シーン、『ドラゴンへの道』のチャック・ノリスとの対決とブルース・リーは素晴らしい格闘シーンを演じてきましたが、中でも映画界に多大なる影響を与えたのは『燃えよドラゴン』で香港のエキストラを相手に激しいアクションを見せた格闘シーンでしょう。
ブルース・リーの得意とする蹴りやチョップは当然ながら、本作には駆け出しのころのジャッキー・チェンが出演していたりとファンがニヤリとするようなシーンも。自分よりも遥かに体格の良い敵をワンインチ・パンチ(発勁 はっけい)で倒し、次々と襲い来る敵をいとも簡単に叩き潰す様は圧巻。
この他、ブルース・リーは「截拳道(ジークンドー)」を創始し、映画の世界だけに留まらず、世界中の格闘家にも影響を与え続けているのです。
[via Sploid]
(中川真知子)
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