黄澈
2014年8月15日00時52分
■元兵士は憂う〈4〉 軍隊組織
「あんな非人間的な組織はなかった」
愛知県豊田市の加藤春元さん(89)の記憶は苦々しい。同県岡崎市の農家で4人兄弟の末っ子として誕生。幼少期に父を亡くしたが、1944年、官費で勉強できる師範学校へ。翌年届いた召集令状で学徒出陣。北海道旭川市の陸軍北部第178部隊に入った。
すぐに暴力が始まった。就寝前、汚れてもいない銃を見て班長が「手入れがなっていない」と激怒。銃床で頭をこづかれ殴られた。新兵同士で殴り合いを強いられたこともある。
自尊心を打ち砕くいじめもあった。軍人勅諭を言わされ、間違えた戦友は柱によじ登ってセミのまねをさせられた。「ミーン、ミーン」。今度は「鳴き声が違う」と罵声が飛んだ。
「日常的な暴力で、何も考えずに命令に従う機械を作りだそうとしていたのではないか。『殺せ』と言われれば殺す。『死ね』と言われれば死ぬ存在を」
よく自分の体をつねった。痛みを感じることで、「まだまともな人間」だと確認しようとした。敗色が濃くなった時期、むなしい訓練が続いた。実弾不足で射撃はできない。たこつぼから飛び出して匍匐(ほふく)前進し、戦車に見立てた木箱に体当たりした。自爆を想定した訓練だが、本物の爆弾など見たこともなかった。
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