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2014年8月14日 (木)

まんだらけの問題

以下の文章は以前Yahoo!知恵袋に投稿したものを加筆修正したものです。

余りにも感情のみで物を言っており、人類が今まで築いてきた英知を完全に無視している意見が九割以上を占めていた為、自分の考えをこのままここに載せていても意味がないと思い、こちらに移動しました。


今回のまんだらけの問題は、第一に法的に適法か否かの問題です。一般常識的にやりすぎか否かというのは、法的に適法だということを前提として初めて成り立つ議論です。違法(犯罪)かも知れないが、やりすぎではないという主張は論理的に成り立ちません。

まず、法律論的には、
①公開した場合、名誉毀損罪が成立するとする説
②現時点で恐喝未遂罪、公開した場合は恐喝既遂罪が成立するとする説
③現時点で脅迫未遂罪、公開した場合は脅迫既遂罪が成立するとする説
④①~③のどれかの(又は二つ以上の)構成要件にあたるものの、違法性が阻却されるとする説
⑤①~③のどれかの(又は二つ以上の)罪が成立するものの、微罪であることから、起訴されないとする説
が主張されているみたいです。

論者によって主張内容が異なりますが、これは社会学や法律論においては当たり前のことですので、別段問題はありません。取り敢えず、④の見解に立たない限り、まんだらけの行為は犯罪にあたることになります。

なお、確かに、万引き(窃盗行為)は犯罪ですが、法は犯罪に対し犯罪で応酬すること(私刑)は認めていません。私刑を認めた場合、それの応酬となり社会秩序が維持できなくなることから、国民は国家に刑を与える権限を移譲していたものと考えられています。
例外的に、自救行為(自分の権利を保全するため官憲の力を借りる暇のないとき、自ら救済行為を行うこと)が認められるかどうかが問題となりますが、今回のケースではそもそも自救行為にはあてはまらないと考えます。


賛成意見の中でまだマシなものとしては、そもそも犯罪(万引き)をするのがいけないというものです。
しかし、制度設計やリスクマネジメントにおいては、事前の策と事後の策の両方が必要です。犯罪の例で言えば、まずそもそも犯罪を発生させないためにはどうすればいいのかという事前の策と、犯罪が発生してしまった場合にどう対応すればいいのかという事後の策の両方を考える必要があります。そのため、犯罪が起きた後の処理を考えていない点で、この種の意見は妥当ではないと考えます。


この種の意見だけであればそんなに目くじらも立てないのですが、大問題なのが「犯罪者には人権はない」と未だに主張している人が余りにも多すぎることです。今は戦前ですか。それとも江戸時代ですか。この種の意見が余りにも多く、辟易するのを通り越して、恐怖すら感じます。この意見を認めてしまったら、とんでもないことになるからです。
もちろん、このようなとんでもない意見であっても、それを持つこと自体は思想・良心の自由により絶対的に保障されます。しかし、このような意見を、いけしゃあしゃあと全世界に繋がっているネット上に載せることができてしまう神経を持った人間が大勢いることに、腹が立って仕方がありません。


全ての人間は一切の区別なく、また何の理由もなく、生まれた瞬間に人権を享受する(天賦人権)というのが、近代国家の大原則です。子供・大人、男・女、加害者・被害者、障がい者・健常者、その他の人の属性に関わりなく、人権は守られなくてはなりません。こんな話は早ければ中3の公民で、遅くとも高校の現代社会や政治経済で習うことです。
もちろん、両者の人権が衝突した場合には、その調整が必要となります。

なお、なぜ天賦人権なのかの積極的な理由付けは難しいですが(ある予備校教師が色々文献をあたってみても見つけることができなかったと言っていました)、消極的理由としては、天賦人権を認めないと、国家が恣意的に人権の享受の有無を決定できることになってしまうからということが考えられます。例えば北朝鮮みたいに。


なので、もしまんだらけの行為を認めるのであれば、そもそも各犯罪要件を検討して、犯罪行為ではないということを論じる必要があります。上記の④の立場に立つということですね。しかし、リーガルマインドは全国民が有していなければならないとしても、解釈論は法学部出身等でもない限り無理でしょう。

となると、専門外の分野については、専門家の意見に耳を傾けるべきです。しかし、専門家たる弁護士や法学者の意見などハナから無視・否定して、独りよがりの感情論を述べている意見が相当数ありました。
弁護士の意見を否定するのであれば、法律論を展開せざるを得ません。弁護士が滅茶苦茶なことを言っているのではありません。あなた方が法律の素人だから分からないのです。
私も医療の事は高校の生物レベルくらいのことしか分かりませんから、病気になった場合には医者の話を聞きます。弁護士の意見を完全に無視するということは、医者の話を聞かないのと同じことです。その専門家が個人的に変な人であるような特段の事情がない限り、専門家の意見には耳を傾けるべきです。

そうすると、法律に明るくない人であれば、法律家の指摘通り、まんだらけの行為は犯罪の可能性があるという前提で論を進めることになります。となると、通常の思考を辿った場合、結論は反対、つまりまんだらけの行為は妥当ではないう方向にいくことになります。
もちろん、賛成の結論になることもできるでしょうが、説明はかなり難しいと思います。私はちょっと考えつきませんでした。
しかし、知恵袋のコメント欄には、論理的に賛成の立場を説明しようとする気配の見えるものは一つもありませんでした。むしろ、反対の立場の人の方が巧拙はあるものの、筋が通った論理的な説明がされていました。


ここで、法律論以外の角度から私の見解を述べておきます。
外来語にコンプライアンスという言葉があります。これは一般的には「法令遵守」と訳されますが、法令遵守という意味ではありません。コンプライアンスとは、企業が法令よりも厳しい制約を自らに課し、企業活動の全過程に置いてそれを遵守するという意味です。
法令を遵守するのは当たり前のことなので、それならばわざわざ言葉を作る必要はないからです。
まんだらけの行為はこのコンプライアンスに反する行為どころか、上記の通り、犯罪の可能性のある行為です。そのため、まんだらけの行為は認めるべきではないと考えます。

もちろん、万引きによる被害は大変な額である為、万引きをどう防止するかというのは重要な問題です。しかし、その対応は合法的に行われるべきです。そのために警察がいるのです。たとえ警察が頼りなかったとしても、それは警察組織の問題であり、店側の犯罪行為が許される理由にはなり得ません。


と、いろいろ書いてきましたが、恐らく知恵袋で自分勝手な論理を主張している人は、このような文章を読むこと自体しないのでしょうね。また、仮に読んだとしても、字面だけ追って検討はしないんでしょうね、きっと。
私の意見が絶対に正しいわけではありませんし(価値評価に絶対的な正しさはないので)、論理に全く穴がないわけでもありませんが、賛成の立場に立つのであれば自分の能力で可能な限り論理的な説明をすべきです。

犯罪に対する対応が甘いという意見も多かったですが、甘いのは対応ではありません。最も甘いのは感情で物をいうあなた方の論理です。

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