電機OB:異業種でヒット生み出す「今の方が面白い」

毎日新聞 2014年08月14日 15時00分(最終更新 08月14日 17時33分)

 業績不振に陥った大手電機メーカーを去った技術者が、異業種に飛び込み、ヒット商品を生み出している。ベビー用品「西松屋チェーン」(兵庫県姫路市)は、パナソニック、シャープ、三洋電機などを退職した技術者を積極的に採用し、プライベートブランド(PB)商品開発を強化している。

 ◇西松屋が積極採用 ベビーマット売り上げ30倍

 「今の方が面白い。次は何を作ろう、とワクワクしています」。パナソニック電工(現パナソニック)で住宅用品を開発してきた内橋康夫さん(63)は2011年2月、定年退職を機に西松屋に入社。電機業界に残る選択肢もあったが、自分で一から商品を開発する仕事にひかれた。「妻は反対でしたが、押し切りました」

 入社後はベビー用の「くみあわせマット」や砂場用スコップ、お絵かきボードなどのPB商品開発を担当した。それまでも西松屋はPB商品を開発していたが、モノづくりのノウハウがなく、製造は大手商社を通じて海外に“丸投げ”していた。このため品質や価格のコントロールが難しかった。そこで目をつけたのが、内橋さんら経験豊富な電機メーカーの技術者だ。

 内橋さんは中国での部材調達先、工場探しなどを全て一人で担当。インターネットなどで中国の工場を調べて現地に赴き、安価で高品質な商品を大量生産できる工場を探し当てた。ベビーマットは「とにかく安さが重要」と見切り、色の種類を減らしたり、生産過程のコストカット策を練った。その結果、従来のPB商品の半額近い489円で販売できるようになり、週平均の販売数が550個から1万6000個に増えてヒット商品になった。01〜05年に中国で商品開発をした「前の職場での経験が生きた」と話す。

 パナソニックは13年3月までの3年間で世界全体の社員を約9万人削減。早期希望退職を募ったシャープでは12年12月に2960人が会社を去った。一方、西松屋は09年以降、電機メーカー退職者を中心に72人(平均57歳)を採用。ベビーマットのほかにも、パナ出身の技術者が開発したベビーバギーは、紫外線遮断効果を高めるなど工夫を凝らし、同社商品で1番人気となるなどメーカー出身者の活躍が目立っているという。新卒採用も理工系を増やし、メーカー出身者がノウハウを伝授する取り組みも始めた。

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