「復興期間延長を」被災地切実
東日本大震災の被災自治体が、国の集中復興期間(2011〜15年度)の終了に危機感を募らせている。国が確保した25兆円の予算が枯渇し、2016年度以降は復興事業が絞り込まれる可能性があるためだ。今後本格化する事業も多く、被災地からは期間延長と財源確保を求める声が上がっている。(片桐大介)
<25兆円突破確実>
震災に伴う津波で中心市街地が壊滅した宮城県女川町。宅地整備や災害公営住宅の中には、16年度以降の着工を見込む事業も少なくない。
「町の最低限の機能を回復させる基幹事業は、国に面倒を見てもらわないと困る」。須田善明町長の口調に切迫感がにじむ。
岩手、宮城、福島3県によると、復旧復興に必要な事業費の見込み額は表の通り。岩手、宮城両県は集中復興期間後となる16年度以降も防災集団移転、漁港・河川の整備、雇用創出などの推進を見込んでいる。
原発事故対応に追われる福島県は、集中復興期間後の事業費は未定のまま。「住民の帰還見通しが立たない」(企画調整課)のが理由となっている。
復興庁によると、復興事業費は国・地方の14年度当初予算段階で既に総額23兆円に到達した。15年度と16年度以降分を合わせれば、25兆円の枠を突破するのは確実な情勢だ。
<枠拡大言及なし>
地域再生の途上で事業費が先細る事態を避けようと、青森、岩手、宮城、福島の被災4県は国に集中復興期間の延長を求める。7月10日には各県知事らが根本匠復興相や自民党本部を訪れ、要望書を提出するなどした。
宮城県震災復興・企画総務課の担当者は「人材不足、資材の高騰で事業がさらに遅れる恐れもある。国を信じたい」と期間延長への期待感を示した。
これに対し、根本復興相は「真に必要な事業は(16年度以降も)実施する」と繰り返すものの、予算枠拡大への言及はない。復興事業をめぐっては、政府内から「これまでの予算措置が例外的だった」との本音が漏れる。国政レベルの風向きは微妙な変化も感じられ、被災地の懸念は現実味を帯びつつある。
国の方針がどうあれ、復旧後の地域活性化には自治体側の自助努力も欠かせない。女川町の須田町長は「『おねだり復興』はもはや理解されない。国に甘えずに進める覚悟も必要だ」と自戒を込めた。
[集中復興期間] 東日本大震災復興基本法に基づく基本方針の中で、政府が11年7月「(震災)当初の5年間」と定めた。当初は国・地方合わせた期間内の事業規模は19兆円程度に設定されたが、政府は13年1月、25兆円に拡充した。
[関連リンク]復興期間延長 愛知財務・復興副大臣に聞く
http://www.kahoku.co.jp/special/spe1071/20140814_02.html
2014年08月14日木曜日