学童疎開:70年の年「平和が一番」と水彩画個展開催へ

毎日新聞 2014年08月13日 20時40分

 太平洋戦争末期、戦火を逃れるため都市部の子どもたちを地方に避難させた学童疎開から今年で70年になる。テレビ出演でも知られるイラストレーターの成瀬國晴(なるせ・くにはる)さん(78)=兵庫県宝塚市=が約1年間の生活を水彩画や墨絵で初めて描いた。31日から大阪市や疎開先だった滋賀県東近江市などで個展を開く。

 成瀬さんは「今年が疎開70年だと聞き、『ここで描かないとだめだ』と思った。少年に戻り、厳しい戦時下で子どもを必死で守ってくれた大人への感謝と、食べ物がなかったり近所に戦闘機が落ちたりした経験から、平和が一番という気持ちを込めた」と話す。

 学童疎開は1944年6月に政府が閣議決定し、都市部に住む国民学校3〜6年生(40万人以上)の子どもらが親元を離れて終戦まで地方で集団生活した。成瀬さんは大阪市浪速区生まれ。3年だったこの年8月から東近江市の東方寺境内にある集会所で同級生ら33人と暮らした。

 作品は計77枚あり、出発から帰郷までの生活を描いている。食べ物が少なく、教諭らとカエルを取って料理した。最初の1カ月は親との面会が禁じられ、寂しくて脱走する子どももいた。戦火が激しくなるとB29爆撃機の飛行機雲を見ることも。爆音がして外に出ると、近くに米国の戦闘機のエンジンが落ちていたこともあった。

 終戦の日は墨絵で描いた。成瀬さんは玉音放送を寺の境内で聞いたが内容が分からず、大人に「負けたんやで。泣け」と言われて敗戦を知った。

 約50年前から8月15日に東方寺を訪ね、「今の生き方はどうだ」と自分に問いかけてきた。疎開の絵は昨年8月から描き始め、当時の資料を手に約7カ月で完成させた。

 個展は70年前に疎開に出発した8月31日から9月5日まで、大阪市浪速区のなんばパークスで開く。入場無料。9月10日からは東近江市立湖東図書館などで順次開催する。問い合わせは、たる出版(06・6244・1336)。【椋田佳代】

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