戦争:絵本と詩、注目集める 分かりやすい表現で警鐘
毎日新聞 2014年08月14日 13時05分(最終更新 08月14日 13時06分)
戦争を素朴な言葉でつづった絵本と詩が、注目を集めている。集団的自衛権の行使を認めた安倍政権が関連する法整備を準備し、有事への不安が高まっていることもあり、戦争に向かう空気を分かりやすく表現した作品に関心が広がっているようだ。【金秀蓮】
◇絵本「戦争のつくりかた」 有事法制批判、再び脚光
10年前に生まれた絵本「戦争のつくりかた」(りぼん・ぷろじぇくと著、マガジンハウス刊)は再出版を望む声が高まり、9月にイラストなどを新しくして新装改訂版が出されることが決まった。
「あなたは戦争がどういうものか、知っていますか?」。そう始まる絵本は四六判47ページ、見開いた右側にイラスト、左側に文章が基本スタイル。
2004年、国民保護法など有事関連法案の国会審議に危機感を抱いた市民らが、法案を広く伝える活動の中で絵本を制作。西日本在住の会社員が原案を作り、日本各地や海外に住む主婦ら二十数人がメールで意見交換しながら完成させた。インターネットで公開した絵本は口コミで広まり、出版された12万3000部が完売した。
制作メンバーの主婦の伊藤美好さん(57)は、「平和憲法があるのに、なぜ有事法案が議論されるのか疑問だった。一つ一つの法律が大きな絵を作るためのパズルのピースに思えた」。同じくメンバーの今村和宏・一橋大准教授(58)は「そうやって描かれるだろう絵を多くの人に伝えたかった」と話した。
集団的自衛権を巡る論議を背景に絵本は再び脚光を浴びた。制作メンバーには「10年前に今を予言していたみたいだ」「実際に絵本の4ページまで来てしまった」と感想が届いた。
絵本は「わたしたちは、未来をつくりだすことができます。戦争しない方法を、えらびとることも」と結ばれる。伊藤さんは「どんな絵を作り、そのためにどうすればいいか、皆が考えるチャンスでもある」と訴えた。
◇「戦争のつくりかた」(抜粋)
わたしたちの国は、60年ちかくまえに、「戦争しない」と決めました。でも、国のしくみやきまりをすこしずつ変えていけば、戦争しないと決めた国も、戦争できる国になります。<3ページ>
わたしたちの国を守るだけだった自衛隊が、武器を持ってよその国にでかけるようになります。<4ページ>
戦争のことは、ほんの何人かの政府の人たちで決めていい、というきまりを作ります。<6ページ>