浜田内閣官房参与(14年6月) Bloomberg News

 【東京】浜田宏一内閣官房参与は13日、国内経済が夏場に4-6月期の急激な落ち込みから回復しなければ、政府は来年の消費税増税計画を見直すことになるかもしれない、との見解を示した。

 内閣府がこの日発表した4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率換算で6.8%減となり、2011年1-3月期以来の大幅な減少を記録した。

 米エール大学名誉教授で安倍晋三首相の経済政策ブレーンの1人である浜田氏はウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、4月1日に実施された消費税の5%から8%への引き上げは「消費者に大きな打撃」を与えたと指摘。これが(もう1人の内閣官房参与である)「本田悦朗氏とわたしが恐れていたことだ」と述べた。

 4-6月期の個人消費は、現行方法での統計が始まった1994年以降で最大の落ち込みとなった。

 増税前に自動車から住宅まであらゆる商品を駆け込み購入した反動と実質賃金の減少を背景に、家計は支出を切り詰めた。この動きが余りに急激だったため、増税の影響を過小評価していたと認めるエコノミストが出たほどだ。

 消費増税関連法では、2015年10月に税率をさらに引き上げて10%とすることが定められているが、景気が「上向き」である場合に限るとの条件がついている。

 浜田氏は「7-9月期のGDPがあまりに低調であれば、2度目の増税を延期するか、段階的増税を導入するかになるだろう」と述べた。浜田氏との電子メールでのインタビューは英語で行われた。

 増税計画の見直しが必要になる7-9月期GDPの水準は明言しなかったものの、浜田氏の発言からは、景気鈍化と公的債務の積み上がりへの対応をめぐる激しい政策議論が年末に向けて繰り広げられる可能性が示唆される。

 日本の政府債務残高は対GDP比200%を超え、先進国の中でも突出して高くなっている。財務省は財政再建に増税が不可欠と主張し、安倍首相に消費税の引き上げを迫ってきた。だが反対派は、成長が勢いに欠ける中で増税を強行すれば経済の弱体化と税収の伸びの抑制につながり、ひいては財政再建を頓挫させる恐れがあると懸念している。

 浜田氏は、増税による消費者行動への影響で1-3月期と4-6月期のGDP統計には大きなゆがみが生じているため、今は税政策の方針を決める「最適な時期ではない」と主張。その上で、7-9月期のGDPが公表された時点で慎重に検討すべきだと述べ、安倍首相の見解に同調した。1-3月期GDPは6.1%増だった。7-9月期GDPは11月17日に公表される。

 政府支出と日銀の金融緩和による成長刺激効果は「勢いが衰えている」と指摘したものの、日銀が追加刺激を打ち出すべきかについては回答を避けた。

 その代わりに構造改革の必要性を強調し、「低調な景気回復が供給面の制限によるものであるならば、規制緩和、貿易自由化、法人税減税を含む第3の矢が生産能力の拡大促進への解決策になる」と提言。「わたし個人としては、消費税増税と法人税減税の適切な組み合わせを考える好機と捉えている」と述べた。

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