野中広務さん 武村正義さん 小選挙区制、見直し訴える
議員定数削減を含む選挙制度の抜本的見直しが、次の通常国会で議論される。野田佳彦首相が自民、公明両党から合意を取りつけ、解散に踏み切ったが、今回選挙前の論戦は低調のようだ。政治の骨格を決める重要な課題で、中選挙区制復活論も聞こえる。約20年前に小選挙区比例代表並立制導入をめぐり議論を戦わせた元自民党幹事長の野中広務さんと当時、官房長官だった武村正義さんに、この問題について聞いた。
■野中氏、中選挙区復活を
小選挙区比例代表並立制が法制化されたのは1994年。当時、導入に猛反対し「守旧派」のレッテルを貼られた野中さんの考えは今でも変わらない。「選挙に勝つことばかり考え、国家の方向、国民の幸せを議論しなくなると思っていた。政治家が小粒になったのも制度が大きな原因だ」と指摘する。
なにより「小選挙区制は49・9%を抹殺し、50・1%を生かす誠に残虐な制度だ。国民世論を一つに絞り、いろんな国民の考え方を政治に反映しない、これが一番恐ろしい」と問題点を挙げる。実際に2005年、09年選挙とも第1党は、小選挙区では得票率が4割強なのに7割を超す議席を獲得している。大政党に圧倒的に有利で、中小政党に不利なことを見せつけた。
■武村氏、3人区連記制も
一方の武村さん。自民党時代から政治改革に取り組み、新党さきがけを立ちあげて選挙制度改革を実現した主要人物の一人だ。これまで小選挙区制で5回選挙があったが「批判の声が高まっていることを承知している。もっといい制度が見つかるなら、変えたらいいと思っている」。
当時、二大政党が政策を競い、政権交代の可能な政治状況をつくるという理想に燃えた。しかし、現在の制度では民意を的確に反映できないばかりか、多党化が進んだ上に、結集する力もなく、二大政治勢力が国民に選択肢を提示するという思いがかなわない現状に、見直しもやむなしとする。
以前の中選挙区制は「政治と金」の問題から見直しの議論が始まった。同じ政党の候補が競うため政策論争にならず、金もかかるという理由だ。武村さんは「世界でも小選挙区制と比例代表制ぐらいしかない。どちらも長所、短所がある。最後の最後は2制度を重箱のように重ねた並立制で再出発しようという結論になった。妥協の産物だった」と明かす。
そうしてできた小選挙区制を、では、どう見直すのか。武村さんは「(比例票で各党の議席配分が決まる)小選挙区比例代表併用制がやはり一番いいのかもしれない。しかし日本人は白か黒か選択するのが得意じゃない。昔の中選挙区でなく、3人区で2人の名前を書く連記制はひとつの案だと思う」。野中さんも「小選挙区が定着したので容易ではないが、せめて3人区ぐらいの中選挙区に変え、多様な意見を吸い上げられる制度にしなければならない」と提案する。
野中さんは定数是正の議論にも言及する。「1票の格差」と定数是正の議論は人口が基本になっているが「選挙区によっては過疎の問題などを抱えている。人口だけでなく、面積などの要素も踏まえ、総合的に考えるべきだ」と求めた。
【 2012年12月02日 06時00分 】