警察と保護観察所:連携機能で再犯防止53件
毎日新聞 2014年08月14日 02時30分(最終更新 08月14日 05時00分)
◇法務省「連携を一層密に」
2012年の神奈川・逗子ストーカー殺人事件を受け、昨年4月に始まった警察と保護観察所の連携が機能した事例が、今年3月までの1年間で53件に上ったことが分かった。両者の連携の実態が明らかになるのは初めて。警察から保護観察所への通報がきっかけで保護観察対象者の執行猶予が取り消されたケースもあり、法務省の担当者は「対象者が問題行動をエスカレートさせて再犯に及ぶことのないよう、連携を一層密にしていきたい」と話す。
逗子事件を巡っては、加害者の男は事件の約1年2カ月前、被害女性に対する脅迫罪で保護観察付きの執行猶予判決を受けた。その際、違反すると執行猶予が取り消されることがある「特別順守事項」として、「一切接触しない」と定められていたのに、女性に大量のメールを送りつけていた。
警察は女性からこの事実を聞いたが保護観察所は把握していなかったため、取り消しは検討されず、事件を防げなかった。そのため警察庁と法務省は昨年4月以降、警察か保護観察所のいずれかが、保護観察付きの執行猶予判決を受けた人が再び迷惑行為などを始めたことを知った場合、もう一方に通報してそれぞれが適切な対処法を講じることにした。
同省保護局によると、連携した53件のうち警察から保護観察所への通報は43件で、保護観察所から警察への通報は10件。通報された対象者が有罪判決を受けた罪名は、ストーカー規制法違反15件▽DV(ドメスティックバイオレンス)防止法違反7件のほか、「つきまとい行為」が関連している他の罪名(傷害、住居侵入、恐喝など)15件▽その他が16件だった。
実際の対処例としては、11年に西日本で元妻に対するストーカー規制法違反で保護観察付きの執行猶予判決を受けた50代の男が13年に元妻の自宅マンション通路に侵入し、腕をつかむ事案が発生。地元警察が保護観察所に連絡して男は傷害容疑などで逮捕され、執行猶予が取り消されたケースがあった。
また、対象者がメールで再び被害者との接触を図ったため、警察からの通報を受けた保護観察所が本人に厳重注意するなどして問題行動が収まった事例もあった。
同省保護局の稲葉保・処遇企画官は「警察からの通報を受けた場合も、保護観察所が問題行動の兆候をつかんだ場合も、被害者の保護や再犯防止を図れるよう努力したい」と話している。【伊藤一郎、長谷川豊】