クロマグロはデリケートで生態がよく分かっていないため、世界で初めて卵からの完全養殖に成功した「近大マグロ」の量産化のネックは生存率の低さだった。稚魚から幼魚にする「中間育成」も生存率2〜3%とされるなか、近畿大学と提携する豊田通商の子会社「ツナドリーム五島」(長崎県五島市)は参入2年目で35%を実現した。飼育環境や飼料、輸送法で“カイゼン”を繰り返した結果といい、将来的には50%を目指す。世界のトヨタグループのDNAが持続可能な完全養殖を支えている。(松岡達郎)
「最初からうまくいったわけではない」
豊田通商の関係者は、こう強調する。
ツナドリーム五島の生産拠点は、五島市(五島列島)沖に点在する円形枠の鉄製いけすだ。和歌山県内にある近畿大学の施設で産卵、ふ化して体長5〜6センチになった稚魚を受け入れ、30センチの幼魚にまで育てる中間育成事業に使われている。ここで育った幼魚がさらに国内の養殖業者に販売された後、2〜3年かけて成魚に育てられた上で出荷されていく。
もともと稚魚から幼魚になるまでの生存率は2〜3%。豊田通商は、この中間育成の段階の生存率を上げることで近大マグロの量産化にめどをつけるため、平成22年6月にツナドリーム五島を設立。最初の22年度は近大が供給した稚魚3万匹を受け入れた。
ところが、和歌山県内の施設から水槽を積んだトラックで運ばれた稚魚のほとんどは五島市に到着したときに死んでいたという。
輸送時の稚魚の死もあって22年度に出荷できた幼魚は700匹。生存率は2%だった。
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