独特のしかけや地域に密着した売り場作りで出版業界にその名を知られる「さわや書店」。同店のある岩手県盛岡市には、介護施設と図書館を融合させた「フキデチョウ文庫」というユニークな施設が生まれ、話題を集めています。
全国の書店を知り尽くす川上徹也氏が、「地域でどのようにモノを売り、そして生き抜いていくか」をテーマに、さわや書店の栗澤順一さん、「フキデチョウ文庫」を運営する一般社団法人しあわせ計画舎代表の沼田雅充さんにお話を聞いてきました。(構成・田中裕子)
* * *
川上 今日は、さわや書店の栗澤さんと、介護サービスと図書館をかけあわせたフキデチョウ文庫を運営するしあわせ計画舎の沼田さんと鼎談ということで、全国の書店さんを回っている僕としては、非常に楽しみにしていました。よろしくお願いします。
栗澤・沼田 よろしくお願いします。
川上 さわや書店さんは盛岡にありながら出版業界では非常に有名なお店です。何が有名かというと、本への愛情が半端ないんですよね。POP(本のそばに添えられる説明文やイラストがかかれた紙)の量もさることながら、そのひとつひとつにものすごく手間をかけていらっしゃる。例えば、マンガの新刊が発売されたら前巻の発売日も併記して購買ミスを防ぐなど、かゆいところに手が届くサービスをされています。仕入れ自体も、他のお店とはちょっと違う、というのが入った瞬間からわかります。
栗澤 ありがとうございます。
川上 一方、沼田さんは・・・・・・なんと、介護施設でありながら図書館を開かれている「フキデチョウ文庫」の代表理事ということで、具体的にどのようなことをされているのかぜひお伺いできればと思います。
コンサルタントが薦める「差別化」は正解なのか?
沼田 川上さんがいらっしゃる前に栗澤さんと盛り上がっていた話があるんです。地域店舗の悩み・・・・・・というほどもないんですが。
川上 なんでしょう?
沼田 最近、いわゆるコンサルタントの方から「差別化をはからないとダメですよ」と連絡をいただくことがとても多いんです。「どうすればいいんでしょうか?」と聞くと、ホームページ(HP)やブログをやればいい、そのお手伝いをしますよって言われる。
川上 ええっ! まだ、そんなことを言ってくる人がいるんですか(笑)。
栗澤 介護業界はまだ開拓できていないと思われているのかもしれませんね。書店業界もそうですが。
沼田デジタル音痴があふれている業界ではありますよね。そういう意味ではつけ入れられやすいかもしれません。でも、この図書館を見てください。存在からして充分、差別化できているじゃないですか。私は、「何をしたか」を発信する必要はないと考えています。いい関係ができて、そこで完結できていればよくて。へたに「何をしたか」を発信しようとすると、いい時間や関係の濃度まで薄まってしまう気がしてしまうんです。
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