これからの時代は、自分の感性であらゆることに興味を持って世界に触れることが大事。
J-WAVE『JAM THE WORLD』の2014年7月29日放送分よりピックアップ。
今回は月に1回恒例の「月イチあずまん」ということで、東浩紀さんをお迎えしての放送。
先日、東さんが新刊『弱いつながり 検索ワードを探す旅』を出版され、今回はこちらの本の内容が放送のメインテーマとなっております。
最近、ニュースなどのキュレーションサービスが全盛を迎え、多くの人がより効率的に、自分に合った情報を手に入れることが可能になってきました。
そんななか、それは逆に自分が今までに出会ったことのないような情報と出くわすという機会が減ってしまっていることだと東さんはおっしゃっており、今回はそれに関して抱えているという問題意識についてのお話です。
しゃべるひと
- 東浩紀さん(作家、思想家)
- 津田大介さん(ジャーナリスト)
『弱いつながり 検索ワードを探す旅』
津田:出足、好調みたいですね。
東:そうですね。ありがたいことにすぐ重版がかかって、残念なことにAmazonとかでも売り切れなので。
津田:多分、売れているのに供給が追い付いていなくてなかなか買える本屋がないという状況みたいです。
東:ありがたいことです、ほんとに。
津田:いや、この本ぼくは売れると思いますよ。
東:そうなんですか?津田さんが言うなら本当に売れるかもしれない。
津田:まだまえがきしか読んでないんですけど、
東:えぇっ!?
津田:いい本だなと思いました。
東:なにそのいい加減な感じ(笑)
津田:いやいや(笑)まえがきがいい本って、いい本じゃないですか。いや、ちゃんと読みますけど。
東:ちゃんと読まないよ、絶対(笑)
津田:読みます読みます(笑)一時間で読めるでしょ?
東:たしかにね(笑)
これからは「何を検索したいか?」
津田:この本のなかで一貫して言われているのが、「旅」と「旅行」の重要性ということで、これからの時代は環境を変えるしかないと、自分を変えるには環境を変えることが大事だけど、環境を変えるすごく強制的な手段が「旅行」だと。
で、旅行という行為が知識や教養を深めたり、それが人生を豊かにする有効な方法のひとつだってことが本の大きなテーマだと思うんですけど。
東:はい。
津田:これから、夏休みシーズンなので旅行に行くという人はいると思うんですけど、まず最初に東さんが考えているネット時代における「知識」や「教養」の定義とか意味ってどういうことになりますか?
東:知識や教養っていうのは「情報」であって、いまの時代は情報そのものは検索をすればいくらでも手に入るんですよね。
この本でも言ってるんですけど、これから重要になるのはむしろ「何を検索したいか?」っていうことで…
津田:「何を検索したいか」?
東:検索は、検索窓にどういう言葉を打ち込むかによって世界は全然別の姿を現してくれる。
そのときに実は、人間はいろんなことを検索しているようで実はいつも同じことを検索してるんですよね。
そこで、全く新しい言葉を思いつくということがすごく大変なんです。
津田:うんうん。
東:で、新しい言葉をどんどん思いつく、ある意味で好奇心をいっぱいもっていろいろな世界に触れてどんどんあたらしい情報を取りたいと思うというのがこれから大事になる教養のベースになってくると思うんですね。
津田:いまソーシャルメディア時代を生きる我々にとって、すごく重要なニュース、佐世保の事件とかそうですけど、入ってきますよね、勝手に。
我々はそのことを知りたくて検索しているような気になっているけども、あれって言葉を変えると検索させられてるってことなんですかね。
東:検索させられてるし、ずっと同じことをぐるぐるぐるぐる回してるだけなんですよね。ネットていうのはいろんな情報があるんだけれど、実は検索してないから知らないことって実はいっぱいあるんですよ。
津田:うんうん。
東:例えば、ブログとかときどきTwitterで話題になる「えっ、俺たちこんなこと知らなかった!」っていうエントリが上がるようなところって、別に本当に新しいことを書いてるわけじゃなくて、もともとネットにあった情報だと。
それを、いろいろ組み合わせて、引っかかるようにすると急に新しい知識になるわけですよね。
だから、今の時代は情報そのものはかなりネットにあると。そこをどういう風に探索していくかということが大事で、その部分というのは自分で一生懸命探索しようと思ってもそもそも自分が思いつく範囲が限界なわけだから、それを超えなきゃいけない。
じゃあ、どうやって超えるかというと、結局「場所を変えればいいよね」っていうのが今回のぼくの本ですよね
津田:なるほど。
情報との「思わぬ出会い」がなくなってきた
津田:もうひとつ、知識・教養って意味でいうとかつては「本を読め」と言われてたわけじゃないですか。
例えば、未だに本を買ってくるとネットにはない本でしか得られない情報もたくさんあると思うんですけど、環境を変えるという点において「本を読む」ていうのはどういうふうに考えればいいですか?
東:僕自信も、ほとんどの本をAmazonで買っている人だから、あんまりAmazonの批判をしても仕方ないけれど、やっぱりこれもさっきと同じでAmazonには数百万冊の本があると。
ただ、何をこちらが検索するかによって、薦められる本も違うわけですよね。
津田:「この本を買っている人はこんな本も読んでいます」みたいね。
東:いわゆる、リコメンデーションですね。けれども、例えば、リアルな書店に行くと目的の本棚まで歩かなきゃいけないと。
歩いている途中で、ほんとは全然関係がないはずの本がパッと目に入って、手に取ると「あれ意外にいいな」ってなって、買っちゃうってことがあると。
ところがAmazonにはないんですね。
そういう出会いもないと本の魅力も生きてこないと思うので、結局同じことなのかなと。
津田:不確実というか、東さんのよく言われてる言葉だと「ノイズ」とか、あとは誤配みたいなそういう話なんですかね。
東:そうです。そういうものが必要だと。
津田:いまのネット上って、「あなたに気持ちのいい情報を送りますよ」みたいになりすぎていると。
東:だから、もうすこしネット論に話を持って行くと、一方でGoogleがそれぞれのユーザーごとに検索カスタマイズをどんどんしていると。
津田:はいはい。
東:他方では、FacebookのようなSNSの発達によって、みんな自分たちの友人の関係をどんどん深めるためにネットを使っていると。
で、自分が知ってる情報の周りの情報を集めたりとか、知ってる人と周りの人と知り合うにはネットってすごくいいんですよね。
この本のなかで言えば「強いつながり」をどんどん強くしていく、っていうのにはネットはいいんだけど、実は本当に無関係な人からパーンって飛んでくる情報とか、全然いままで自分が検索したことないような情報にパッと触れるっていう経験って実はどんどんネットから排除されてるんですよ。
津田:なるほど。
東:そこの部分を意図的に取り戻さないと、いろいろ検索してるようで、いつも同じことばっかり検索していくようになっちゃうんじゃないかなって。そういう問題意識ですね。
津田:人生においてはつまり、強いつながりと弱いつながりのバランスをとっていかあんければダメだけど、いまの我々の情報環境ってのがそれを許してくれないと。
東:許してくれない。多少、逆説的に聞こえるようだけど、普通多くの人ってネットていうのは「弱い関係」で、リアルの方が強いと思ってるんですね。
津田:そうですね。
東:でもぼくは逆だと思っていて、ネットこそどんどん環境を強くしてくんですね。昔の同級生とずーっとやりとりしたり、恋人とずっとやりとりするにはネットはいいわけですよ。
ところが、パーティみたいな場所でパッとすれ違う経験ってネットってほとんどできないですよね。
津田:立食パーティー的な。
東:いまはリアルの方が弱い関係つながりの場所で、ネットこそが強いつながりの場所っていう逆転が起きてるんじゃないかと。
津田:なるほどね。そういう意味で、そこを変えていくために「旅」っていうのが具体的な手段としていいんじゃないか、ってことなんですけど。
「検索させられてしまっている」という現状を変えるために、「じゃあ旅をしてみればいい」というのはある意味非常にわかりやすいです。
しかも、その環境の変化をネット上に求めるわけではなく、あくまでリアルの環境の変化をもたらすものとしての「旅」 ということなので、より一層実感も湧きやすいことと思います。
今回は導入でしたが、次回は「じゃあ、なぜ旅なのか?」というお話を紹介します。
番組情報
JAM THE WORLD(J-WAVE)
放送日時:20:00〜21:50(月〜金)
つまみのひとこと
この本、装丁がおしゃれだなぁ
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