働き過ぎずに生産性を上げる、3つの具体的アドバイス
Joelle Steiniger氏は、顧客分析サービス「HookFeed」の共同創設者です。多忙な日々を送る同氏が生産性と働き過ぎのバランスについて語ってくれました。
忙しいのは当然だと思っていました。ToDoリストをこなすことに達成感を感じていました。流行遅れのマルチタスクをしていましたが、「何が悪いの?」と思っていました。しかし、いつもフラストレーションでいっぱいでした。時間は矢のように過ぎ去るのに、重要なことはぜんぜん達成できていない...。
私は疲れきっていました。創造性は枯れ果て、ストレスを抱え、満たされない気持ちで一杯でした。明らかに行き詰まっていました。私はあるとき、本当にうんざりし、このパターンを変えようと決心しました。
前から内心ではわかっていたけど、向き合ってこなかったことがあります。それは、生産性とは達成した量のことではない、という事実です。心からそう思えた時、このいびつなサイクルから出る最初の一歩を踏み出しました。
生産性とは本当のところ何か?
生産性とは量だけの問題ではありません。そして、質だけの問題でもありません。生産性とは、最も重要で、インパクトのあるタスクを効率的に達成することです。また、完璧主義の罠に陥らず、同時に仕事の質の高さを保つことです。これは多くの人にとって難しいテーマです。
なんでもそうですが、物事には両極があります。「生産性スペクトル」の一方の極は、いわば無秩序です。タスクからタスクへと飛び回り、無自覚で無計画。急に考え事をしたり、誰かに話しかけたと思えば、ブラウザを開いてインターネットを見始めます。
反対の極は、生産性に関する多くの書籍や記事が述べていることです。厳格な日課、様式、ルール...。私にとって、そのとおりにするのが難しいものばかり。例えば、ポモドーロ・テクニックだってそうです。タスクを25分のブロックに分けて集中して取り組み、間に短い休憩をとるという生産性メソッドです。
私は、こうした厳格さについていけません。ふだんの生活では、そんな厳格には生きていません(みなさんもそうでしょう?) 仕事のときだけ急に厳格になるなんてできません。例えば、クラッシュ・ダイエット(短期間で体重を激減させるための厳しい食事制限)なんかもそうです。短期間ならうまくいくかもしれません。しかし、継続するのは非常に困難。挫折は目に見えています。
さらに危険なのは、厳格過ぎるルールに従っていると、素晴らしいアイデアが浮かんだ時に、それを実行する余地がなくなることです。起業家として、これは大きな損失です。インスピレーションに従う自由をなくせば、最大のチャンスを自ら潰すことになります。
わかりやすくするために、「生産性スペクトル」を図に描いてみました。私が当時陥っていた状態を赤い箱で描いています。
ゴールは、やり方やルールを少しだけ変えて、緑の「最適ゾーン」に入ることです。そのために、私は仕事のやり方を3つだけ変えました。これには驚くべき効果があったのです。
マルチタスキングをやめ、ひとつに集中する
まず最初に、悪名高い「マルチタスク」をやめました。次のような記事を見つけたのがきっかけです。
American Psychological Journal(米国心理学ジャーナル)誌によると、マルチタスクの有害性を証明する、膨大な研究結果があるそうです。
ある実験では、学生たちに数学の問題に取り組んでもらいました。タスクを切り替えながらやるように指示された学生は、1つの問題に集中するよう指示された学生に比べて、40%も問題を解くのが遅れたそうです。おそらくこれは、コンピューターが過負荷になると処理速度が落ちるのと同じ現象です。
「タスクを頻繁に切り替えると、脳は再生ボタンと一時停止ボタンを交互に押し続ける状態になります」と脳科学者のヨルダン・ガーフマン氏。
BBC Newsに掲載された別の研究によると、メールや電話が着信したのに気づいただけで、IQが10ポイントも下がるそうです。これは、マリファナの影響の2倍です。
それだけではありません。こうした認知的な過負荷は、高いレベルのストレス、疲労に加え、無数の身体的不調をも引き起こします。Psychology Today誌で、心理学者のシェリーブール·カーター氏が、精神的な疲労はあらゆる不調となって表れると話しています。集中力、注意力の欠如、不眠症、不安、うつ、イライラ、胃が痛い、めまい、偏頭痛など...。
心の奥では気づいていました。私のマルチタスクは、困難な仕事を先延ばしする手段なのだということに。タスクの重要性を無視して、ToDoリストをひたすらこなしていれば、生産的に働いている気分になれます。でも、それはまやかしです。
私は、生産性の「最適ゾーン」へ向かうために、マルチタスクをやめ、一度にひとつのタスクに取り組むことにしました。無関係なブラウザのタブを閉じ、メールやチャットアプリも閉じ、携帯電話もマナーモードにして視界の外に追い出しました。
気が散るものを目の前から消せば、精神的な負荷も減り、誘惑と闘う必要もなくなります。「見えないものは、気にならない」です。
優先度の高いタスクを把握する
1つのタスクに集中するのは強力なスタートになります。しかし、まだ問題は残っています。多くの人が、間違った時に、間違ったタスクに取り組んでいるという問題です。もう一度、図に描いてみました。この図表(Tarang Baxi氏から着想をもらったもの)はとても便利です。今、本当にフォーカスすべきことは何かを教えてくれます。
Y軸(この図では収益と書いてあるところ)に、自分のゴールを書き込んでください。ソーシャルメディアで知名度を上げるなど、何でもかまいません。
Y軸が決まったら、手持ちのタスクをすべて、4つの枠のどこかにあてはめてください。確認すると、Y軸はゴール達成へのインパクト、X軸は必要な労力です。(おそらく、あなたも3番の枠のタスクばかり取り組む傾向があるはず)
私の現在の最優先事項は、自社「HookFeed」の収益を伸ばすことです。機能開発、マーケティング、顧客獲得への努力、これらはすべて、ゴール達成に大きなインパクトがあります。そして、決して楽なタスクではありません。
ゴール達成へのインパクトが小さいタスクは、ToDoリストの末尾に追いやってしまいましょう。
繰り返しのタスクは一括処理する
これは、私が行った日課の変更の中で、認知的負荷の軽減と仕事の効率化に一番インパクトがあったものです。
毎週繰り返される膨大なタスクがあり、それがスケジュールの大部分を占めていました。例えば、以下のタスクを必ず毎週こなしていました。
2本のポッドキャストの準備と配信(毎週、火と木に配信)
ニュースレターの執筆と配信
2本のインタビューの準備と録音
スポンサーに提供するレポートのレビュー
それぞれのタスクに4~5時間はかかります。毎週なんとかこなしていましたが、集中できないときは、ひとつに7~8時間もかかっていました。
インタビューが行われる曜日や時間はまちまちで、ときには週に8回行うこともありました。私はいつも何かを忘れている気がして落ち着かず、タスクを頭のなかでジャグリングしているような状態でした。それは、HookFeedの勢いをそぎ、私自身も燃え尽きそうでした。
私はシンプルな変更を行いました。一週間分のポッドキャストを月曜の夜にまとめてやることにしたのです。創造性はそれほど必要ではないので、なんとかなりました。また、インタビューも金曜日に2本だけ行うことに決めました。これを毎週繰り返します。
ほかの繰り返しのタスクも同じようにしました。その結果、「本業」に使える時間を、毎週数時間増やすことができたのです。繰り返しのタスクは、やることも決まっており、時間通りに完了できました。おかげで、心理的な負荷もかなり減り、本来の「困難な仕事」により集中できるようになりました。
意外な効用
パターンを変えたことによるもっとも驚くべき効果は何だったと思いますか? なんと仕事量が減ったのです! 当初、生産性の向上とは、もっと多くの仕事をこなせるようになることだと思っていました。しかし、やってみると、なぜか自由時間が増えたのです。これは驚きです。以前は、やるべきことが山積みで、とくかく時間が足りないと感じていたからです。
多くの人が自由時間を捻出するのに苦労しています。私もかつてそうでした。でも今では、1日がまだ終わらないうちに、重要なタスクがすべて片付いてしまうのです。ゴールに確実に向かっている達成感もあります。不思議な感覚です。
自由になった時間は、リフレッシュのために使ってください。遊ぶことに罪悪感を感じるなら、優先度が低めのタスクとして扱えばOKです。
とはいえ、本当は、リフレッシュのための活動は、優先度を高くすべきタスクなのです。ゴール達成に大きなインパクトがあるからです。しっかり充電することで、仕事の質も高められます。このことは、今回の最大の学びかもしれません。
ですので、この3つのテクニック、ひとつに集中する、優先度を把握する、繰り返しのタスクは一括で処理する、を強くお勧めします。私自身、このテクニックのおかげで、生産性も向上し、燃え尽きを防ぐことができました。燃え尽きてしまえば、生産性など意味がなくなります。そして、自由時間を楽しむことに罪悪感を持たないように。リフレッシュのための活動を重要なタスクとして扱ってください。ハッピアワーのビール、エクササイズ、映画鑑賞、読書、料理、友人や家族と過ごす時間を心ゆくまで楽しんでください。そうするだけの価値は絶対にあります。
3 Ways to Squash Burnout and Boost Productivity|Crew Blog
Joelle Steiniger(原文/訳:伊藤貴之)
Image adapted from Adrian Niederhaeuser (Shutterstock) and Nick Kinney (Shutterstock).