2014年8月13日水曜日

ネイティブ広告を「ステマじゃない」と擁護したり「正しく理解」させようとしたり「定義」したりする前にすべきことがある


一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)がネイティブアド研究会を発足し、日本におけるネイティブアドのガイドライン策定と普及啓発の促進を図るというリリースが出ました。それはそれで大切なことですが、ボクは「それより前にすべきことがあるだろ!」と思うのです。



いろんな方々がネイティブ広告について一生懸命説明している


ネイティブ広告に関しては、各ニュースメディアがさまざまな角度から問題提起をしています。主に、ユーザーが不信感を抱いているというものです。

賛否両論「ネイティブ広告」って何? それは記事か、広告か | THE PAGE(ザ・ページ) ※2014年1月20日


ネイティブ広告で騙された気分に? ジャストシステムがスマホ広告印象調査 -INTERNET Watch ※2014年7月3日


記事にそっくり「ネイティブ広告」 定まらぬ線引き :日本経済新聞 ※2014年7月18日


それに対し業界関係者などから、「ステマじゃない」という擁護の声や、「正しく理解」させようとする声、「定義」しようとする試み、面白おかしいトピックスとして取り上げる動きなどが出ています。

ざっくり学ぶ!ネイティブ広告:記事広告との違いから今後の展開まで | gotamag ※2014年5月8日


[徳力]日本の「ネイティブ広告」は、もっと真剣にネイティブにならないと読者にステマ広告扱いされてしまうんではなかろうか ※2014年7月9日


スマホ向け広告の金儲け臭さを感じ取るユーザー心理(山本 一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース ※2014年7月11日


ネイティブ広告(アド)とは - Togetterまとめ ※2014年7月28日


「ネイティブ広告」の議論は、とっとと終わらせよう!――混乱を招く5つの誤解―― | AdverTimes(アドタイ) ※2014年8月1日


広告という外来生物が、どう環境に適用し変容していくのかの道。それがネイティブ広告。 | mediologic ※2014年8月5日


ネイティブ広告を正しく理解する | マーケティング is.jp ※2014年8月11日


これらを読んでも、どうも釈然としない思いばかりが募ります。ユーザーがなぜ不信感を抱いているのか? という最も重要なところに触れていなかったり、触れていても短かったり十分ではなかったりするのです。


ネイティブ広告がどのように表示されているか調べてみた


そもそも、ネイティブ広告とは具体的にどのようなものなんでしょうか? いくつかのメディアで調べてみました。

Twitter


タイムラインで「××によるプロモーション」と表示されているのがネイティブ広告です。広告主と、プロモーションであることが明示されており、比較的分かりやすいです。

Twitterのネイティブ広告

元になっているのは、普通の投稿です。




WIRED.jp


記事の末尾(ページ分割されている場合は、各ページの最後)に「WIRED PROMOTION」と表示されているのがネイティブ広告です。正直、分かりづらい。例えばこちらの記事。


イベントレポートの体裁になっていますが、各ページの末尾には「WIRED PROMOTION」と表示されています。

実は「WIRED PROMOTION」

おいおい、これ広告なのかよ! と感じる方が多いのではないでしょうか?


東洋経済オンライン


たまたま見つけたので毎回この体裁かどうか分からないのですが、上部バナー右上に「広告特集」と表示され、通常なら記事を書いた人の名前が表示される位置に「制作 :東洋経済企画広告制作チーム」とあります。


右上の「広告特集」の表示は、原寸大だとこんな感じです。

「広告特集」と書いてある

ちょっと分かりづらいかな? という感じもするのですが、実はタイトルタグに「記事広告」と記されていたりします。

ツイートするとわかる、タイトルに「記事広告」

ツイートボタンを押すと、ちゃんと「記事広告」と書いてあるのが分かります。


ITmedia eBook USER


右上に「PR」マーク、通常なら記事を書いた人の名前が表示される位置に「PR/ITmedia」と表示されています。


原寸大はこんな感じ。ちょっと小さくて、分かりづらいです。

PR表示が小さい……

ただ、記事下部にも「提供:××」や「掲載内容有効期限」が表示されています。

提供社名と有効期限が表示されている

上にも下にも表示があるので、ネイティブ広告の中では比較的「あ、これ広告だ」と気づきやすい方だと思います。


ライフハッカー[日本版]


記事上部に「PR」アイコンが付いています。


記事の末尾には記事に関連するバナーがあります。

「powered by lifehacker」という表記は広告を意味する?

「powered by lifehacker」という表記は他の記事には見当たらないので、広告だというのを意味しているのでしょうか?


ハフィントン・ポスト


こちらもたまたま見つけたので毎回この体裁かどうか分からないのですが、記事上部に「PRESENTED BY ××」と表示されています。「提供」を意味するのでしょうか?


記事下部には記事本文と違う色で囲まれた領域に「アメリカン・エキスプレス・スカイ・トラベラー・カード」の紹介があり、リンクURLは http://www.americanexpress.com/japan/apps/sky_traveler/dubf_stld02.cgi?sourcecode=3IMEP74250&sourcecode1=3IMEP74260&CPID=100106684&AFFID=JPR と計測用cgiを経由する形になっています。

ラベルに「Japan Sky Ad」とあり、恐らくネイティブ広告

ちょっと自信がなかったのですが、「もっと見る:」ラベルに「Japan Sky Ad」とあるので、恐らくネイティブ広告だと思われます。もう少し広告だということを分かりやすくして欲しい。


らばQ


大手ブログもチェックしてみましょう。こちらの記事は、一見普通の記事に見えます。


ところが、実は記事のフッターをよく見ると……

記事のフッター

カテゴリに「広告」と書いてあります。

カテゴリに「広告」

これは気づかない!


小太郎ぶろぐ


こちらのブログはファーストビューでコンテンツが見えないので、これはこれでどうかと思うのですが……

小太郎ぶろぐはファーストビューでコンテンツが見えない

タイトルには【PR】と記載されているので、広告だというのが一目瞭然です。カテゴリ(ラベル?)にも「広告」と明記されてます。


フッターにも「広告」と明記されてます。

フッターにも「広告」と明記

結構分かりやすい。


その他のメディア


これまで見てきたような、どこかに「広告」や「PR」という表記がある事例はまだマシな方だったりします。「これ、きっと広告だろうな……」という内容の記事で、どこを探しても「広告」や「PR」という表記がないメディアはたくさんあります。

例えば「ネイティブ広告を正しく理解する | マーケティング is.jp」という記事で、ネイティブ広告の事例として紹介されている「@nifty:デイリーポータルZ:ハトが選んだ生命保険に入る」という記事。


済から済まで何度もチェックしましたが、どこにも「広告」や「PR」という表記は存在しません。ただ、かろうじて3ページ目に「代理店(ニフティ)」という表記があるので、紹介されているライフネット生命との関係は分かります。

代理店(ニフティ)ということは?

また、3ページ目の最後に「協力 ライフネット生命保険株式会社(この記事の写真のパネルがリンクになってます)」とあり、リンクURLは http://www.lifenet-seimei.co.jp/agent/1_0/?AGENT=90901001&LINK=TOP001&cid=NIFDZ&m=M1&t=T90724&cl=CL1&lp=OR1 という計測用コードになっています。


広告なのかな……? という想像はできますが、明示されているわけではありません。もしこの記事でデイリーポータルZがライフネット生命から対価を貰っているとしたら、第3者に広告だと判断できる材料がないわけですから、ネイティブ広告ではなく「ステマ」です。

逆に、対価を貰っていないとしたら、凄い企画だなあ、と思います。というか、デイリーポータルZの平常運転ですね。


「広告」だと分からないから「ステマ」と言われる


ざっくり学ぶ!ネイティブ広告:記事広告との違いから今後の展開まで | gotamag」という記事に、以下の様な記述がありました。

米国に拠点を置くインターネット広告の業界団体IAB(Interactive Advertising Bureau)が発行するガイドライン「ネイティブアド・プレイブック」には、ネイティブ広告を評価する6つのフレームワークが規定されている。その中の一つ「DISCLOSURE:広告であることの明示」は、ネイティブ広告の倫理規定のようなものだ。ユーザーが広告だと気づくように「AD」「Promoted」「Sponserd」などの表記を義務づけ、ステマや「釣り」にならないよう広告主に注意を呼びかけている。

2014年8月現在、日本にはプレイブックのような基準が存在しないことから、「DISCLOSURE」はブランドとメディアの倫理観に委ねられている。広告であることを隠してユーザーを騙すような行為は、そのブランドのイメージだけではなく、広告枠を提供するメディア側のイメージも悪くなる。基準が登場するまでは、日本のマーケティング界の良心を信じるしかない。

「日本にはプレイブックのような基準が存在しない」とは、どういう意味なのでしょうか? 一般社団法人インターネット広告推進協議会(JIAA)の「インターネット広告倫理綱領及び掲載基準ガイドライン(PDF)」では、「(10) 広告であることの明示 」で「広告の目的で表示されているものである旨([広告]、[広告企画]、[PR]等)をわかりやすく表示する必要がある。」と明記されています。これが基準じゃなければ、何だというのでしょう?

はっきり言って「ネイティブ広告の定義」が大事なのはメディアと広告主の都合で、ユーザーには関係のない話です。JIAAのガイドラインを徹底すれば済むだけの話ではないでしょうか。「広告」だと分からないから「ステルス・マーケティング(ステマ)」と言われるのです。

逆に、広告だと目立つところに表記されていようと、コンテンツが素晴らしければ、ユーザーはちゃんと読むし、メッセージも伝わるし、内容にも納得するのではないでしょうか?