4月の消費増税を境目とした民間需要の振れ幅は予想通り大きかった。2012年末からの景気回復は増税前の駆け込み消費を膨らませ、4月以降は円安や需給改善に伴う物価高と増税が重なり消費を冷やした。足元の景気は安定した企業業績と雇用環境を背景に回復を探る。内需の落ち込みを補う外需は勢いを欠き、経済政策のかじ取りは難しくなってきている。
前に消費税率を上げたのは1997年4月。当時より今回は駆け込み消費の反動減が大きかった。理由の一つは、増税幅が今回は3%で前回の2%よりも大きかったこと。もう一つは、今がデフレから脱却しようする過程にあることだ。
安倍晋三首相が就任してから政府・日銀が放った大規模な金融緩和と財政出動は2本の「矢」として、デフレで冷え切った日本経済を温めた。高価な外国車の輸入が急増するなど高額品から消費に火が付き、個人消費は増税前の1~3月期まで6四半期続けて前期比プラス。増税前の景気回復が消費を押し上げた。
しかし、所得の十分な増加を伴わない物価上昇が、増税後の消費を冷やした。厚生労働省によると、物価上昇分を差し引く「実質賃金」は賃金が上がっていた97年4月が0.1%増だったのに対し、今年4月は3.4%の大幅減。駆け込みとその反動減の影響をならすために1~6月で見ても、個人消費は昨年7~12月期に比べて0.4%減った。
増税後の回復につながる動きはある。
6月の所定内給与は前年比0.3%増と、わずかながら増えた。有効求人倍率が22年ぶりの高さになるなど良好な雇用環境は賃上げ圧力を生んでいる。内閣府の調査では消費者心理は7月まで3カ月続けて改善し、街角の景況感は「良い」と見る人が「悪い」を上回る。企業の業績は安定し、14年度の設備投資は13年度を上回りそうだ。
増税の影響も含めれば3%を超える物価上昇に賃上げが追いつくには時間がかかる。生産の海外移転で輸出は伸びず、外需がけん引する景気回復の道は細っている。
政府は11月公表の7~9月の国内総生産(GDP)などを見ながら、15年10月に消費税率を10%へ引き上げるかどうかを最終判断する。負担増への家計の耐久力を見極めつつ、民需が主導する景気回復を描けるかどうかが、安倍政権の最も大きな課題になる。
安倍晋三、日銀