せっかくの夏休みなのに、うちの子はスマホばっかりいじって……と気をもんでいる親も多いだろうか。

 この夏、福岡県春日市など複数の教育委員会が「夜間スマホ禁止」を呼びかけた。ネット依存による生活リズムの乱れを心配してのことだ。

 ネットにはまるのは、現実世界で人間関係を築くのが苦手な子。大人はそう考えがちだが、必ずしもそうではない。

 大半の子は、ネットの中でも学級や部活動など昼間の仲間とつながっている。24時間どこにいても、つながることができてしまう。友人に気を使うあまり会話を打ち切れない。むしろ、人間関係が過剰になっていることが問題なのだ。

 通信アプリLINEなどでのやり取りから、いじめ自殺やけんか殺人に発展する。そんな事件もときどき起きている。

 多くの子にとって、ネット利用で危険が切実なのは「見知らぬ大人」との遭遇より、「いつもの仲間」の同調圧力だ。

 総務省の調べでは、高校生は大半、中学生も半数が携帯電話やスマホを持っている。個人で持つ物でもあり、禁止や制限では対処しきれない。

 ネットは車に似ている。いずれ大人になれば大半の人が使うものだし、事故や事件の危険はある一方、基本的には生活を豊かにしてくれる。中高生らも学校や学年、地域の垣根を超えた交流活動がしやすくなった。

 ならば、少しずつ使いながら安全な使い方を身につけさせる工夫を各家庭でしたい。「スマホは居間で使う」と親子で約束するのもいい。

 親もわが子と同じ通信アプリや交流サイトを使ってみては、と勧める専門家もいる。注意すべき点がわかる。ネットでどこまで自分をさらし、ぶつけてよいか手本を示す意味もある。

 同調圧力とは、いわば身内でいる限りは優しくする心性だ。身内でないとみなせば途端に排除や無視をする。残念ながら大人も含め、そういう不寛容さは社会に根強くある。

 いつもの仲間の輪の中に閉じこもって、それだけに振り回されないためには、学校や部活と違う知り合いを作り、もう一つの世界をもつのがいい。それには自分の生活を大切にすること、いい意味でわがままになることも必要なのだろう。

 なにより、違うと思うことは「違う」と言っても、相手を否定したことにはならない。家庭や学校で、きちんとそう教えられるかどうか。結局はそこにかかっているに違いない。