会社が給料を上げる。家庭が買いものを増やす。それが会社の商売をさらによくする。思い切った投資で力を高め、よその会社の投資も誘う。

 そんな好循環に乗り切れるかどうか、日本経済は胸突き八丁にあるようだ。

 ことし4~6月の成長率は1~3月と比べて大きく落ち込んだ。年率に換えると、6・8%というマイナスである。

 4月の消費増税をはさみ、駆け込み需要で1~3月が6%強の高成長だったから、一転、その反動減に見舞われた。

 97年に消費税を上げたときと比べても浮き沈みが激しいが、予想された展開ではある。

 問題は、安定した成長軌道に戻れるかどうかだ。

 来年10月には消費税を再び上げる予定だが、安倍首相は「11月に出る7~9月のGDP(国内総生産)などを見て最終判断する」としている。

 景気の足もとはどうだろう。

 消費増税の影響については、政府・日銀のほか、経済界でも「想定の範囲内」といった声が多く、強気な見立てが主流だ。

 しかし、気がかりな点がないわけではない。

 GDPの6割を占める個人消費は、底堅さを示す統計がある一方、家計調査では倹約ぶりが目につく。物価変動を除く実質支出は5月が前年比8%減、6月も3%減と低迷している。

 春闘などを通じて給料やボーナスが上がっても、物価の上昇に追いつかない。そんな家庭のやりくりが透けて見える。

 企業関連のデータも、明暗が入り交じる。

 ものづくりなどの活発さを示す鉱工業生産指数は、6月が前月比3%余のマイナスと振るわなかった。円安が定着しても輸出は伸び悩んでいる。

 設備投資では大企業を中心に計画は強気だが、投資の先行きを占う機械受注は5月に前月から20%近くも落ち込んだ。

 日本銀行の金融緩和や政府による財政支出は、経済の下支えや一時的な刺激策にすぎない。肝要なのは、民間が主導する自律的な景気拡大である。個人の消費は賃金に左右されるのだから、カギは企業が握ると言っても過言ではない。

 企業全体を見渡すと、いち早く雇用と設備、債務の三つの過剰を解消し、業績はよい。現金・預金だけで230兆円もの手元資金をため込んでいる。

 設備の買い替えや研究開発、他社の買収、経営の土台である従業員への投資などにアクセルを踏み込めるかどうか。

 企業の力量が問われている。