財務省官僚は「消費者物価指数で見れば2%だが、GDPデフレーターでは1%だ」などと釈明しているようだが、欧州委員会では、消費者物価もGDPデフレーターも同じ2%だ。GDPデフレーターが消費者物価指数より低い数字なのは、デフレ期だけの特有な話だ。日本でもデフレ期以前はほとんど同じ動きになっていた。
財政審はインフレ率を低く見積もっているため、名目成長率も2%と低くなっている。その一方で、金利は高めに3・7%と設定し、名目成長率より1・7%も高い。
欧州委員会では長短平均の金利は4・5%、名目成長率3・6%(20〜30年の平均)で、金利は名目成長率より0・9%しか高くない。このからくりがばれないように、財政審の欧州委員会に関する金利の記述では、長期金利5・1%としか書かれておらず、金利が名目成長率より1・5%も高いかのように誤解させる表現になっている。
財政審は、一応、言い訳のために、実質成長率2%(名目成長率3%)でも試算しているが、メーンの前提条件がこれだけ違うと、増税に向けての「地ならし」ありきだといわれても仕方ないだろう。メーンの金利と名目成長率の差が1・7%では、50年間も計算すれば財政危機という結果は見え透いている。
最近、科学論文でデータ改竄(かいざん)・捏造(ねつぞう)が話題になっている。霞が関の審議会資料もなかなか手が込んだ作りになっているが、恣意(しい)的な前提条件で、答えありきでは、データ改竄・捏造と変わりはない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)