4月28日、財政制度等審議会財政制度分科会が開催され、起草検討委員から「我が国の財政に関する長期推計」が報告された。マスコミでは「2060年度 債務残高は1京円(京は1兆の1万倍)にも」と報じられ、この数字が政治家の間に流布している。一部からは、財務省が財政危機をあおり、また増税キャンペーンに乗り出したとの意見もあるが、どうなのだろうか。
どこの官庁の審議会も似たり寄ったりであるが、審議会は役所の隠れみの、審議会委員は御用学者といわれる。それはおおむね間違っていない。そして財務省の財政審はその典型である。
今回、財政審が行った試算は、小泉純一郎政権時代に財務省が出してきた試算と基本的には同じものだ。小泉政権では、消費税増税をしないと言い切ったので、増税をもくろむ財務省が財政危機をあおったのだ。
今回は、欧州委員会の「Fiscal Sustainability Report(財政の持続可能性に関する報告)2012」に倣(なら)ったというが、財務省にかなり都合良く前提条件を書き直している。
例えば、試算期間については、財政審では2060年度までの50年程度であるが、欧州委員会では30年度までの20年程度。実際には、このような試算では20年でも長すぎるぐらいだ。
また、財政審のインフレ率の前提も不可解だ。欧州では、事実上インフレ目標2%となっているので、インフレ率2%はいいが、インフレ目標2%の日本が1%というのはおかしい。