Financial Times

社説:英国議会はイラク危機に対処せよ

2014.08.14(木)  Financial Times

(2014年8月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

英国議会、トイレ2か所を改装 費用は最大で1500万円

英ロンドン中心部にある英国議会議事堂〔AFPBB News

2011年、英国の議員は国中で勃発する都市部の暴動について議論するために夏休みから呼び戻された。昨年8月には、シリアへの軍事介入の可能性について採決するために急ぎ議会に集まった。

 あれから1年経った今、イラクの3分の1が「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」のジハード主義者に制圧され、クルド人自治区が危機的状況にあり、民間人が虐殺されたり行き場を失ったりしており、米国が空から武装勢力を爆撃している。だが、英国議会は休会したままだ。

英国にも責任があるイラクの混乱

 デビッド・キャメロン首相とニック・クレッグ副首相は夏休み中だ。フィリップ・ハモンド外相は就任から4週間しか経っておらず、就任以来、外務閣外相が2人辞任している。現在の中東担当の閣外相は、この1年間で3人目に当たる。力のある緊急事態対策委員会(COBRA)は、まだその職務を学んでいる途中のマイケル・ファロン国防相が委員長を務めている。野党・労働党に関して言えば、危機に関する党の声明は、言葉足らずから沈黙まで幅がある。

 世界的な役割を担うことを自負する国としては、これは腹立たしい状況だ。2003年の米国主導の侵略の一端を担った国として、英国はイラクの混乱に加担している。英国はここ数日、民間人への支援物資の提供を通じて積極的に関与している。これらは、議論のために議会を召集する十分な理由だ。

 多くの人は、政府はクルド人の部隊に武器を供給したり米国の空爆に参加したりすることで、人道援助以上に踏み込むべきだと主張している。ハモンド氏の公式声明は、こうした選択肢を残している。これは議論のために議会を召集する、よりよい理由だ。

 議員を呼び戻すことは、政府をいかなる行動方針にもコミットするものではないし、そうあるべきでもない。さらなる介入のためには、説得力のある論拠が展開される必要がある。英国の世論はどちらにも固まっていない。

 いま行われている空爆がどれほど奏功しているかさえ定かでない。また、イラクの危機には流動的な要素が多々ある。イラク首相としてのヌリ・アル・マリキ氏の地位の低下や、バラク・オバマ米大統領のコミットメントの度合いに関する絶え間ない疑問などだ。

 だが、こうした疑念と曖昧さこそがまさに、議会での適切な議論が必要な理由だ。政治階級が欧州各地の海辺に散らばっているうちは、英国は対イラク政策を作れないし、英国がどう考えているかさえ判断できない。

 もちろん、政治家には休暇を取る権利があるし、キャメ…
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