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「こんなに反響が大きいとは・・・」 まんだらけ「万引き犯の写真」公開中止の舞台裏

マンガやグッズの中古ショップ「まんだらけ」が万引き犯の顔写真をネットで公開すると宣言していた問題は、期限とされた8月13日午前0時の直前に方針が変更され、「公開中止」となった。その舞台裏で、なにが起きていたのか。まんだらけの中村勝也広報部長にインタビューした。

●午後11時20分に「中止」が現場に伝えられた

――なぜ土壇場で方針を覆したのか?

「警察から中止の要請があったことや、報道を通じて予想以上に注目が集まったからです。12日の午後8時30分に開かれた店舗責任者会議では、公開する方針を確認していました。しかし、その後に社長が中止を決めました。現場に中止の方針と、ホームページに掲載する文章が伝えられたのは、午後11時20分のことでした」

――13日午後0時すぎに更新したホームページには、「万引き犯」の身内らしき人からの連絡について書かれていたが、どんな連絡だったのか?

「12日午後6時ごろ、『万引き犯』の身内らしき女性から「人形を返せば画像は公開しないのでしょうか。返したいのですが」と電話で連絡がありました。そこで、今回被害にあった中野店以外の店舗でも、返却された場合は警察に連絡して対応する方針を確認していました。ただ、人形は現在(13日午後1時)も返却されていません」

●アクセス殺到に「サーバー増強」して対応

――今回の「騒動」をどうとらえているか?

「こんなに反響が大きいとは予想していませんでした。警告文を公開した当初はSNSで情報が広がり、ネットメディアや週刊誌が取り上げ、テレビや新聞の報道にまで広がりました。12日はマスコミからひっきりなしに電話がかかり、30~40社から100件以上の問い合わせがありました。10分おきに電話をかけてきたメディアもありました。午後9時くらいには店舗の前に30~40人の報道陣が集まっていて、13日0時の段階でも6~7人が残っていました」

――一般の人からはどんな意見が寄せられたのか?

「11日までは1日に10~15件の電話がかかってきましたが、マスコミからの問い合わせに追われていたため、電話で(公開方針について説明した)音声ガイダンスを流していました。メールは12日に40通ほど来ていましたが、8~9割が公開に賛成するものでした。なかには、万引きの被害届を出した経験のある人から、『万引きは警察も捜査してくれない。まんだらけがやったことを支持する』という応援メッセージもありました」

――批判的な意見にはどんなものがあったのか?

「『法律を守れ』『警察に相談しろ』『間違いだったらどうするんだ』『(万引き犯が)自殺した時の責任を考えているのか』といったものでした。株主からは『株価が落ちたらどうするんだ』という批判もありました」

――公開中止後にはどんな意見が寄せられているか?

「13日に来たメールでは、『なぜ公開しなかったのか』『警察の圧力に屈したのか』『見損なった』などの意見が来ています」

――12日は顔写真の公開を前にネット上で騒ぎが拡散され、肝心のホームページがつながりにくくなっていたが・・・

「テレビで報道されてからがすごかった。サイトが見られないという苦情も来ました。ウェブ担当者がサーバーを増強して対応していましたが、それでも、13日午前0時に向けたカウントダウン状態になると、つながりにくくなっていました」

●店舗責任者の半数以上が「公開に賛成した」

――そもそもなぜ、顔写真を公開しようとしたのか?

「盗まれた人形は25万円と高価なものでしたが、警察に被害届を出したとしても、厳しい対応をとらないと戻ってこないだろうという話になったからです。犯人は、店が把握しているコレクターや常連客ではなく、このままでは他の店も狙われる可能性がありました。警察に任せても、なかなかつかまりません」

――「顔写真の公開が名誉毀損にあたる可能性がある」などの法的リスクは分かっていたのか?

「弁護士とも相談して、法的リスクは承知していました。ただ、ここまで大ごとになるとは予想できていませんでした」

――顔写真の公開は古川益蔵社長の発案だったのか?

「そうではありません。被害にあった店舗『変や』の責任者が公開したいと言って、各店舗の責任者で議論しました。10人中、1人が慎重論を唱え、2~3人が『分からない』といったものでしたが、半数以上が賛成して、古川社長がこの判断を了解しました」

――万引きされたときの状況は?

「(人形が展示されていたショーケースには)カギがかかっていて、本来は店員がボタンを押さないと開きません。商品の入れ替えの際には開いていることもありますが、どうやって盗んだのか、よく分かっていません。店員がレジに1人しかいない状況で、そのタイミングを狙われました」

――「変や」は万引きが多いのか?

「(人形などを扱っている)『変や』では多くないです。マンガやCD、DVDといった換金率が高いものが被害にあいます。現行犯でないと、つかまえるのが難しいのが現状です」

――今後、「万引き犯」が名乗り出る可能性はあるか?

「可能性はあると思っています。(スタッフには)もし電話があったら、責任者に連絡するように伝えています。警察からもすぐに電話をくださいと言われています」

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