ガザ:ゴミ処理場稼働不能、あふれるゴミ…発電所爆撃で

毎日新聞 2014年08月12日 20時29分(最終更新 08月13日 00時48分)

集積したまま行き場のないゴミ。ロバや馬で収集している=ガザ市内で2014年8月6日、大治朋子撮影
集積したまま行き場のないゴミ。ロバや馬で収集している=ガザ市内で2014年8月6日、大治朋子撮影
イスラエル軍に爆撃されたという発電施設。隣接する燃料タンク2基も炎上した=ガザ市中部で2014年8月6日、大治朋子撮影
イスラエル軍に爆撃されたという発電施設。隣接する燃料タンク2基も炎上した=ガザ市中部で2014年8月6日、大治朋子撮影

 【ガザ市(パレスチナ自治区)大治朋子】イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を拠点とするイスラム原理主義組織ハマスによる戦闘で、ガザ唯一の発電所が爆撃され、市民生活に大きな影響を与えている。発電所の完全修復には1年以上かかる見通しで、ゴミ処理場が稼働できずガザ市内にはゴミが散乱。異臭を放ち衛生状態の悪化に拍車をかけている。

 「なぜ発電所を爆撃する必要があるのか分からない」。ガザ地区中部にある発電所でラフィク・マリハ所長が話した。ハマスがガザを武力制圧した2007年以降、イスラエルは人と物の出入りを規制する封鎖政策を開始。燃料不足で発電所はフル稼働できず8時間おきに停電していたが、今回の攻撃で完全に発電が停止した。

 マリハ所長によると、イスラエル軍は7月22日から28日にかけて計3回、施設を砲撃した。「国連や米政府を通じてイスラエルに攻撃しないよう繰り返し求めたが、意図的に狙ったものではないとの説明を受けた」。だが29日、発電施設本体が爆撃され近くの燃料タンク2基に引火。備蓄されていた燃料も炎上した。当面は一部稼働を目指すが数カ月かかる見通し。イスラエルは攻撃への関与を明らかにしていないが、06年、イスラエル兵が拉致されガザ侵攻した際も発電所を爆破している。

 配電停止により病院では医療機器の使用や消毒作業が困難になり、感染症の拡大などが懸念されている。電気を使ったポンプ配水の水道は使えなくなり上下水道の処理にも支障が出ている。

 ガザ市中心部のゴミ集積所には行き場のないゴミ1万5000トンが猛烈な異臭を放っている。通常ここには600トン余りが一時保管され、東部にある処理場に随時搬出されている。だが配電の停止で処理場が稼働不能となったという。

 ガザ市役所清掃部のアヒト・アルハトウ部長によると、ガザ市の人口は60万人余りだが戦闘の激しい北部や東部から約40万人が避難し現在100万人近くが居住する。通常1日400トン前後だったゴミ排出量は700トンと倍近くにまで膨れ上がっている。またゴミ搬送車も攻撃で一部破壊され、市はロバや馬200頭を1カ月400ドルで借り上げてゴミ収集に投入しているが、アルハトウ部長は「このままではガザ市内が廃棄物だらけになる」と危機感を強めている。

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