Hothotレビュー

デル「Latitude 14 Rugged Extreme」

〜指向性が異なるLatitude 12 Rugged Extremeの姉妹モデル

Latitude 14 Rugged Extreme

 デル株式会社は、軍事用途も想定した“究極の耐久性”を謳う14型ノート「Latitude 14 Rugged Extreme」(以下Latitude 14 RE)と、11.6型コンバーチブルノートPC「Latitude 12 Rugged Extreme」(以下Latitude 12 RE)を発売した。

 Latitude 12 REのレビューについては以前の記事を参照されたい。また、Latitude 14 REの耐久性についても、これまで2回に渡って(その1その2)テストを行ない紹介した。今回は、Latitude 14 REの具体的な使い勝手や性能についてレポートしていこう。

2ラインナップで展開されるRugged Extremeシリーズ

 Latitude 14 REは、以前Hothotレビューで紹介したLatitude 12 REの姉妹モデルである。Latitude 12 REは11.6型の液晶を搭載し、液晶が回転することでタブレットとしても使えるコンバーチブル型であったが、Latitude 14 REは14型の液晶を搭載するが、液晶が回転しない純粋なクラムシェルノートPCである。

 “タフで超耐久なノートPC”と言えば、おそらく多くの読者はパナソニックの「TOUGHBOOK」シリーズを想像されると思うが、TOUGHBOOKシリーズにも10.1型液晶を搭載した「CF-19」と、13.1型液晶を搭載した「CF-31」の2モデルが用意されている。前者はコンバーチブル、後者はクラムシェルであるわけだが、デルもちょうどその対抗となる2モデルを投入した格好だ。特に、Latitude 14 REはCF-31と同様、本体のみの持ち運びが容易になるハンドルを搭載しているあたり、強く意識して設計していることが伺える。

 ただTOUGHBOOKは8月中旬現在、未だ搭載CPUが第3世代Coreプロセッサに留まっているため、デルはそれに先んじて第4世代Coreプロセッサを搭載したことになる。加えて液晶サイズが一回り大きい点もアドバンテージになるだろう。

 さてLatitude 14 REの耐久性だが、先に紹介したLatitude 12 REと同じく、米軍の調達基準(器材に対する環境耐性を決定するための試験方法)「MIL-STD-810」に準拠するスペックをを誇っている。

 例えば、高度15,000フィート(4,572m)での1時間の動作、63℃の環境下における5日間の稼働、-29℃環境下での24時間動作、1時間に147mm降る雨の中での動作、10±7g/立方mの砂塵および風速8.9m/secの環境下での動作、動作時0.91mからの落下などが保証されている。

 これらは、マグネシウム合金の堅牢な筐体に加え、四隅をウルトラポリマー素材で囲んだ構造、そして圧縮ガスケットによる密閉構造、IP65準拠のデュアルナイフエッジ設計などによって実現されている。強度が上がりやすいボンネット構造を天板に採用しないで、これだけの堅牢性を維持できるのは、素材そのものが強度が高いためだろう。

Latitude 14 Rugged Extreme本体
本体底面
フラットな天板と、四隅のウルトラポリマー素材
本体左側面
本体背面
本体右側面
本体前面

各ポートの物理的保護は当たり前。インターフェイスに不足なし

 続いて、Latitude 14 REの外観について見ていく。本製品は堅牢性を実現するために特殊な素材や構造を用いているため、外観も特徴的である。Latitude 12 REと同様、フラットな天板、四角いフォルム、四隅のガードなどが目立っている。

 ただLatitude 12 REと異なるのは、手前にハンドルが用意されている点。これにより本体のみでの可搬性は大幅に向上した。Latitude 14 REは本体に厚みがあり、ビジネスバッグに収まるサイズではまずないのだが、本体が堅牢にできているため、そのままケースやバッグに入れずに持ち運びできる。そのメリットを最大限に活かしたのがこのハンドルだ。

 実際、試用期間中はずっと本製品をこのハンドルで持ち運んで、取材に持って行ったりもしたぐらいなのだが、アタッシュケースを持ち運ぶような感覚で気軽に持ち運べた。本体が3.81kgと、決して軽くはないのだが、ハンドルはクッション性に優れており、長時間の持ち運びでも手や指が痛むことは全くなかった。

本体を閉じれば、ハンドルでそのまま持ち運べる
ハンドルは滑りにくく手にやさしい素材でできている

 強靭な筐体や衝撃吸収材はもちろんのことだが、本製品は砂塵や雨に対する耐性もある。そのため、各種インターフェイス類は上下+左右の2段スライドによってロックできるカバーによって保護されている。このカバーで1〜3個のインターフェイスを小まとめにして保護しており、必要最小限の部分のみの開閉で利用するようになっている。

 Latitude 12 REと比較すると、筐体が大きい分インターフェイスが多くなっており、ExpressCard/54スロット、USB 3.0×2、USB 2.0×2、マルチカードリーダ、スマートカードリーダ、ミニD-Sub15ピン、HDMI出力、音声出力に加え、シリアルポートを2基、Gigabit Ethernetを2基搭載。さらに光学ドライブも備えており、デスクトップPCにも引けをとらない豊富さだ。さまざまな用途での利用を考えているのであろう。

 このほか、感圧式タッチ対応で伸縮可能なペンや、ドック対応の端子を備える点は共通である。なお、Latitude 12 REにあった底面のWebカメラは省かれている。これはタブレットで利用できないからだ。

左側面のインターフェイス。音声出力、HDMI出力、USB 3.0。写真右に見えるのはバッテリだ
本体背面のインターフェイス。DC入力、USB 2.0、ミニD-Sub15ピンに加え、Gigabit Ethernet×2、シリアルポート×2を備えている
右側面のインターフェイス。ExpressCard/54、スマートカード、USB 3.0、USB 2.0、マルチカードリーダ、光学ドライブを装備。SSDもすぐに抜けるようになっている
底面にはドック用の端子を備えている
バッテリも交換可能。65Whタイプを搭載している
SSDはSATA 6Gbps接続。LITE-ON製で、Plextorの「M6S」がベースとなっている
付属のACアダプタは近年のデル共通品。65W出力タイプ

ユニークな「ステルスモード」

 使い勝手についてだが、堅牢であること以外は至って普通のノートPCである。キーボードはLatitude 12 REの時点でほぼフルピッチを維持していたが、Latitude 14 REもそのキーボードを受け継いでいる。タイピングは軽快でクリック感があり、アイソレーション方式となっているためミスタイプも少ない。

キーボードやタッチパッドなどはLatitude 12 REとほぼ共通だ
パームレストには非接触ICカードリーダを装備している

 液晶の視野角は広めで、ノングレアのため映り込みが少なく見やすい。色みも青っぽかったりすることがなく、輝度が高いため太陽光の下での視認性も良い。14型ながらただ解像度は1,366×768ドットのため文字が大きめだ。大きくて見やすいことは良いのだが、他人も遠くから内容が見えてしまうのはトレードオフである。オプションとしてフルHDクラスの解像度が欲しかったところである。

液晶ディスプレイは発色がよく、輝度が高い
視野角も上下/左右ともに良好だ

 本製品もLatitude 12 REと同様、タッチパネルは感圧式となっている。これは雨などの環境下、または手袋をしたままでもタッチ操作をできるようにするための配慮だ。ただ以前もレポートした通り、Latitude 14 REのタッチパネルはWindows上から「タッチとペンデバイス」として認識されるのではなく、大きなタッチパッドとして認識されるタイプのもの。そのためフリックによるスクロール操作やピンチイン・ピンチアウトによる拡大/縮小操作が行なえないのである。タッチパネルに搭載されるドライバも「eGalax」という見慣れないものとなっている。

 おそらく、これはLatitude 12 REと完全に製品の差別化を行なうためだ。つまりLatitude 12 REはコンバーチブルタイプであるが、タッチ操作がメインで、クラムシェルとしても使えることを想定。一方Latitude 14 REはタッチパネルはあるものの、基本的にクラムシェルとして使うことが前提のためだろう。

 さて、前回レポートを行なわなかったのだが、Latitude Rugged Extremeシリーズは共通でキーボードのバックライトを備えている。このバックライトにはRGBタイプのLEDが内蔵されており、Fn+Cキーを押すことで、白のほかに青、赤、緑の三原色に切り替えることができる。筆者には、本製品において色を切り替える用途が思いつかないのだが、ちょっとした遊び心だろう。

 もう1つユニークなのは、Fn+F7キーですぐに動作する「ステルスモード」だ。ステルスモードでは、音声出力、無線LAN、キーバックライト、液晶バックライト(液晶自体は映る)、そして各種LEDインジケータなど、可視/可聴/可探知のものが全て即座に無効になるのだ。これは戦場で求められる機能に違いない。

キーバックライトを付けたところ。ホワイト
レッドのLED
グリーンのLED
ブルーのLED
冷却ファンの口径は小さいが、騒音は低い

 やや気になったのは本体の発熱で、Latitude 12 REと比較して筐体が大きいのにもかかわらず、本体左側面の排気口付近の温度がやや高めだった。パームレストは熱くならないので不快ではないのだが、気になるのは確かだ。とは言え、Latitude 12 REと同様、静かなファンを搭載しており、騒音に悩まされることはない。

LITE-ON製SSD搭載で高いシステム性能

 最後に、Latitude 14 REをベンチマークしてその性能を見ていく。使用したベンチマークは、「PCMark 7」、「ファイナルファンタジー XIオフィシャルベンチマーク3」、「SiSoftware Sandra」の3種類。

 比較用に、前回テストしたLatitude 12 REの結果、そして筆者愛用のノートPC「NEXTGEAR-NOTE i300」(SSDを512GBの東芝製HG5dに換装済み)の結果を加えてある。 OSはいずれもWindows 8.1 Proだ。


Latitude 14 Rugged Extreme Latitude 12 Rugged Extreme NEXTGEAR-NOTE i300
CPU Core i5-4300U Core i5-4300U Core i7-3612QM
メモリ 8GB 8GB 8GB
ストレージ 256GB SSD 256GB SSD 512GB SSD
OS Windows 8.1 Pro Windows 8.1 Pro Windows 8
PCMark 7
Score 4876 4917 5535
Lightweight 5255 3275 5531
Productivity 4180 2434 4646
Entertainment 3530 3590 4028
Creative 9349 9183 8596
Computation 14903 15759 16059
System storage 5379 5006 5444
RAW system storage score 5315 3833 5873
ファイナルファンタジーXIオフィシャルベンチマーク3
Low 9924 9392 9032
High 6793 6379 7340
Sisoftware Sandra
Dhrystone 51.70GIPS 52GIPS 85GIPS
Whetstone 36.14GFLOPS 36.15GFLOPS 66.68GFLOPS
Graphics Rendering Float 125.67Mpixel/sec 125.6Mpixel/sec 536.8 Mpixel/sec
Graphics Rendering Double 50.22Mpixel/sec 49.42Mpixel/sec 30.83Mpixel/sec

 結果は、当然と言えば当然なのだが、Latitude 12 REとほぼ似た結果となった。Latitude 12 REはLITE-ON製のmSATAタイプのSSD、Latitude 14 REは同じくLITE-ON製の2.5インチタイプのSSDを採用している。それぞれPLEXTORブランドの最新SSD「M6M」、「M6S」に相当するわけなのだが、今回のテストではLatitude 14 REの方が、PCMark 7で高スコアをマークした。とは言え、最終的なスコアは誤差程度である。FFXIベンチとSandraの結果については、そもそもCPUがまったく同一であるため、有意義な差はない。

 一方バッテリ駆動時間だが、BBenchを用いて、Wi-FiオンでWeb巡回をオン、キーストロークをオンに設定し、画面輝度約30%で連続動作させたところ、約8.76時間動作した。画面が大型化され、インターフェイスが充実している分、消費電力が高いと思われる。とは言え、実用では十分な駆動時間だろう。

軍用のみならず現場でも活躍する1台

 米軍の調達基準をわざわざクリアした堅牢性を持つノートなのだから、当然ながら本来は軍用である。野外や戦場では、いつどういう状況になるのか予測できない。だからこそLatitude 14 REのような堅牢性の高いPCが必須となる。

 しかしながら軍用でなくとも、Latitude 14 REが持つ堅牢性を必要とする場面や現場がきっとあるはずだ。堅牢なPCを持つことによる「安心感」、そして「心強さ」を必要とするユーザーにオススメしたい。

(劉 尭)