コンクリ劣化:鉄道で落下相次ぐ 人に当たったケースも
毎日新聞 2014年08月13日 07時30分
トンネルや橋、駅などの鉄道施設で、劣化したコンクリート片などが落下する事案が相次いでいる。東日本にある11の主な鉄道事業者によると、昨年度以降で計32件あり、このうち15件は駅構内など職員以外の一般客らが出入りする場所で、重さ約8.5キロのコンクリート片が落ちたこともある。幸い人的被害はないが、専門家は「頭を直撃すれば命を奪われる可能性もある」と指摘する。防止にはハンマーでたたき、音で異常を確かめる「打音検査」が有効だが、ほとんど実施していないのが実情だ。【戸上文恵】
毎日新聞がJR東日本、東日本の大手私鉄9社、都営地下鉄の11事業者に取材し、結果をまとめた。落ちたのはコンクリート片、モルタル片などで2013年度に27件、今年度も5件あった。原因は雨水や鉄筋の腐食、経年などによる劣化が17件で、寒冷地でコンクリートの内部で水が凍って膨張する「凍結融解」の10件が続く。
今年度の5件のうち4件は一般客らの出入りする場所で発生した。東京都江戸川区臨海町6では6月21日、JR京葉線の高架橋からコンクリート片が約10.5メートル下の駐輪場に落ちているのが見つかった。1984年に建設された高架橋の経年劣化が原因とみられる。コンクリート片は複数あり、最も大きなものは縦横各約20センチ、厚さ約9センチで、重さ約4.2キロ。自転車の車輪に衝突した形跡があったが、けが人はなかった。日本大大学院の櫛(くし)英彦教授(救急医学)は「10メートルの高さから4キロのコンクリート片が落ち、頭にぶつかったら、即死する可能性が高い。体の他の部位に当たっても死に直結する危険性がある」と指摘する。
6月8日には、東京都足立区の東武スカイツリーライン北千住駅で、重さ約5.8キロの天井板が落下した。乗降客が行き交う駅の地下通路で、天井板を留めるネジの緩みが原因とされる。5月1日にも、東京都東大和市の西武拝島線東大和市駅で、高架橋から重さ約8・5キロのコンクリート片が剥がれ落ち、コンコースの天井を直撃。天井板の一部とともに約5メートル下の階段わきに落下しているのが見つかった。80年建設の高架橋の施工不良が原因とみられる。落下場所の階段は、1階の改札から入った乗客が2階の上り線ホームに上がる際などに利用する。