新日鉄住金は11日、インドネシアで国営クラカタウ・スチールと共同で新工場を建設することで合意したと発表した。アジアで自動車用鋼板の現地生産を加速する。
2017年半ばの営業運転開始を目指す。総投資額は3億ドル(約300億円)規模、年間の生産能力は約48万トンの見込みだ。日本の自動車大手がアジアで増産に動いていることから、鉄鋼大手も鋼板の現地供給体制を整えて要望にきめ細かく対応する。
インドネシア工場は新日鉄住金にとってアジア地域で5拠点目。同社がアジアに構える車用鋼板拠点の生産能力は年間500万トン規模と国内能力の6割強に増す。地域全体で自動車約1000万台分近くの鋼板を現地供給できるようになる。
インドネシア | 新日鉄 住金 | クラカタウ・スチールと工場設立で合意 |
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JFE | 年産能力40万トンの工場を16年稼働へ | |
中国 | 新日鉄 住金 | 宝鋼集団との合弁を15年に能力増強 |
JFE | 広州薄板との合弁生産 | |
神戸 製鋼所 | 鞍山鋼鉄集団と組み工場を建設へ | |
タイ | 新日鉄 住金 | 年産能力を13年に136万トンに増強 |
JFE | 13年に新工場稼働し生産能力拡大 | |
インド | 新日鉄 住金 | タタ製鉄と組み工場を今春に稼働 |
JFE | 持ち分法適用会社が工場を今春稼働 |
インドネシアで新日鉄住金は同社が株式の過半を握る合弁会社を通じて、首都ジャカルタ近郊に新工場を建設する。これまで新日鉄住金は製品を日本から輸出してきたが、国内製鉄所から母材を輸出して現地で製品に加工する仕組みに切り替え、品質改善などの要望に応じて即座に対応できる体制とする。
インドネシアの13年の新車販売台数は約123万台。東南アジア諸国連合(ASEAN)最大の2億5千万人の人口を抱え、20年ごろには200万台規模に達する見通し。現在はトヨタ自動車とグループのダイハツ工業が市場シェアの過半を占める。日系大手が市場の9割以上を握る牙城だ。
スズキが約930億円を投じて新工場を建設し生産能力を7割増やすなど、各社が増産に動いている。
新日鉄住金は新工場では同社が得意とする、さびに強い高級鋼を生産する。だが市場の過半をミニバンやトラックといった中・低価格車が占めるため、中級車でも多く使う高強度の冷延鋼板も生産するなど需要に柔軟に対応する。
新日鉄住金は1998年にタイで車用鋼板の生産を現地企業と共同で開始。その後も中国の宝鋼集団やインドのタタ製鉄などアジアの現地企業と共同で生産拠点を設け増産投資してきた。
調査会社IHSグローバルによるとASEANの販売台数は2017年に12年比3割増の400万台弱に達する見通し。日本勢は現地調達を増やし生産コストの低減を図っている。
JFEスチールも今春にインドで持ち分法適用会社を通じて新工場を立ち上げたのに続き、インドネシアでも約300億円を投じて年産能力が40万トンの新工場を建設中で16年前半に稼働の予定。神戸製鋼所も中国で同60万トンの新工場を16年に立ち上げる。日本の鉄鋼3社で年1100万トン超と国内に匹敵する生産能力を有する見通しで、自動車大手の増産を後押しする。
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