まんだらけ:万引き画像の全面公開は中止「捜査に協力」
毎日新聞 2014年08月13日 01時12分(最終更新 08月13日 07時59分)
おもちゃを万引きしたとされる人物に、返品しなければ顔の映った防犯カメラの画像をホームページ(HP)で公開すると警告していた古物商「まんだらけ」(東京都中野区)は13日未明、画像の公開を取りやめた。警視庁が「容疑者の逃亡など捜査に支障が出る恐れがある」と公開中止を要請しており、これに応じた。今後は捜査に任せるという。
まんだらけによると、4日午後5時ごろ中野店4階で、ゼンマイで動くブリキ製の玩具「鉄人28号」(価格25万円)が盗まれた。同社は5日、顔にモザイクをかけた「万引き犯」とみられる男性の画像をHPに掲載し、「1週間以内に返しに来ない場合はモザイクを外す」と警告し、期限を13日午前0時に設定していた。
13日未明、HPにアップされた同社の説明文のタイトルは「警視庁の要請により顔写真の全面公開は中止させていただきます」。「捜査に協力する」としたうえで「12日に報道陣が(中野店の)ビル付近に集まり(容疑者が)入って来られる状況にはない」と記載している。容疑者の身内と思われる女性から電話があり「(返しに来るのを)期待して待っていた」という。
画像公開を巡っては賛否が割れていた。近代法治国家では、刑罰を科す権利(刑罰権)は国家にあり、たとえ被害者であっても個人にはない。このため、インターネット上の中傷問題に詳しい清水陽平弁護士は「私的制裁を加える私刑(画像公開)は禁止されており、やり過ぎだ」と批判。さらに刑法の名誉毀損(きそん)罪に当たる可能性もあり「懲らしめなど私的な恨みを晴らすことが目的なら違法の恐れがある」と話す。
万引きの発生件数は近年、高止まりしており、小売店の経営を圧迫している。NPO法人「全国万引犯罪防止機構」(東京)の福井昂(こう)事務局長は「(公開しても)やむをえない状況でもある」と同情的だった。
まんだらけの客で、さいたま市の男子大学生(21)は「(公開は)自衛策として理解できる」とし、中野区の女性会社員(29)は「公開処刑だ」と批判していた。【松本惇、山崎征克、神保圭作】