パプアニューギニアとの一層の関係強化に向けて

2014年7月10日

7月1日に都内で開催したパプアニューギニア投資促進セミナー

パプアニューギニアは、オーストラリアの北に位置し、世界で2番目に大きな島であるニューギニア島の東半分および700の島々、800の民族から成る多民族国家である。日本の1.25倍の国土面積と700万の人口を有し、豊富な資源を背景に過去10年にわたって好調な経済成長を維持しており、大洋州地域では唯一のアジア太平洋経済協力(APEC)加盟国である。

パプアニューギニアは第2次世界大戦中の太平洋戦争の激戦地の一つとなるなど、日本との歴史的なつながりがある。また1975年の日本との国交樹立以降、国際場裏において日本の立場を積極的に支持するなど、良きパートナーである。

他方、最近では、2014年5月にパプアニューギニア初の液化天然ガス(LNG)プロジェクト(注1)による生産が開始され、6月3日には、日本への第一便となるLNGタンカーが到着した。東京都内で開催された祝賀式典には、ピーター・オニール首相をはじめとする閣僚が出席し、さらなる経済関係の強化を両国で確認した。

LNGの本格輸出により、同国の2015年のGDP成長率は20パーセントを超える見込み(IMF、2013年)。日本はパプアニューギニアが輸出するLNGの約半量を長期にわたって輸入することになっており、両国は貿易とエネルギー安全保障の面においてもますます重要なパートナーとなった。

二重経済、伝統的価値観と近代的価値観との相克

パプアニューギニアは豊富な資源を背景に経済が活況を呈す一方で、基礎インフラの整備、産業人材の育成、鉱物輸出依存型経済からの脱却、人間開発指数(注2)の改善、森林保全や気候変動対策など、克服すべき開発課題も少なくない。

地方部では今日でも自給自足の伝統的な生活を営む人が依然多く、急激な都市化が進む首都ポートモレスビーとの間で二重経済が形成されている。さらに伝統的価値観や慣習的土地制度も残り、近代社会と伝統的社会の相克が各種開発事業の進捗(ちょく)に影響を及ぼしている面もある。

経済成長基盤の強化

パプアニューギニアの開発においてJICAは特に、「経済成長基盤の強化」「社会サービスの向上」「環境・気候変動緩和策」の3点を重視している。

持続的経済成長のために社会基盤整備は不可欠である。JICAは国内最大の商業都市であるレイとその周辺地域を主な対象として、電力、空港、港湾、道路などの基幹インフラ整備を支援しているほか、地方住民の生活を改善し、都市との格差を是正するため、地方の道路などライフラインとなるインフラの整備支援に力を注いでいる。

支援例として、港湾分野では運輸省を対象に「運輸省港湾政策及び行政能力強化プロジェクト」を実施し、港湾行政能力強化のための技術協力支援を行っている。

電力分野では、パプアニューギニア第二の都市であるレイへの電力供給システムであるラム系統の改善のため、「ラム系統送電網強化事業」を円借款で支援し、レイ地域の電力供給の安定化に資する既存送電線の複線化と変電所の改修などを通じた、送電網強化支援を行っている。

また、今後、投資環境整備が海外からの投資誘致などに重要となることから、「投資促進アドバイザー」を派遣し、パプアニューギニアへの投資ガイドブック作成などの支援を行ってきた。この成果を活用し、2014年7月1日には太平洋諸島センターとJICAの共催で「パプアニューギニア投資促進セミナー」を都内で開催した。来日したイヴァン・ポマレウ投資促進庁長官は、90人を超える参加者を前にパプアニューギニアへの投資の魅力について説明した。

社会サービスの向上

プロジェクトで制作したビデオ教材を活用した授業

JICAはこれまでメディアを活用した基礎教育へのアクセス改善と理数科教育の質の向上を支援してきた。その結果、パプアニューギニアの「国家メディア教育政策」が策定されるといった成果が出ている。今後は教育省の主体性を尊重しながら、基礎教育のカリキュラム改訂などの支援を行っていく。

支援例としては「メディアを活用した遠隔教育普及・組織強化プロジェクト(EQUITVフェーズ2)」があり、フェーズ1で整備した、テレビ番組による授業改善プログラムの全国展開のための技術協力を行っている。

環境・気候変動緩和策

環境問題や気候変動の影響の緩和に対する支援にも力を注いでいる。森林モニタリング、生物多様性、下水道整備、一般廃棄物、鉱山廃棄物などを担う関係省庁間の連携を働きかけ、開発効果の拡大を目指している。

支援例としては「気候変動対策のための森林資源モニタリングに関する能力向上プロジェクト」を通じて、全国レベルの森林被覆図の整備、パプアニューギニアの森林資源情報管理システム構築のための技術協力を行った。

2015年、日本とパプアニューギニアは国交樹立40周年、青年海外協力隊初代派遣から35周年の節目を迎える。JICAは「Yumi Wok Wantaem (ピジン英語で、共に働こう)」をモットーに、パプアニューギニアの開発課題の克服と二国間関係の強化に向けて、引き続き精力的に協力事業を展開していく。    

(注1)JX日鉱日石開発株式会社と丸紅株式会社の子会社が4.7パーセントの権益を保有。液化プラントは千代田化工建設株式会社と日揮株式会社が建設した。
(注2)Human Development Index(HDI)。国連開発計画(UNDP)が人間開発の多様な側面に注目して測定することを目的に作成した指標。出生時平均余命、識字率と就業年数、一人当たりGDPや購買力を基に算出される。