(英エコノミスト誌 2014年8月9日号)
8月10日、トルコの首都アンカラで大統領選での勝利を宣言するレジェプ・タイイップ・エルドアン首相〔AFPBB News〕
トルコ初の直接選挙による大統領選挙は、保守派政党・公正発展党(AKP)党首で2003年から首相を務めてきたレジェップ・タイイップ・エルドアン氏に予想通りの勝利をもたらした。
これはダイナミックな経済開発とトルコの特色を備えたイスラム主義の融合が数百万人の有権者にとって魅力的な組み合わせであることを裏付けた。
だが、10日の選挙結果は、エルドアン氏が民主主義の原則を守り、法の支配を尊重し、困難な時期にうまく経済を舵取りし、可能ならば、トルコのパートナー諸国や近隣諸国との関係を改善するために新たな権力を使うという十分な確信を与えてくれなかった。
称賛すべきことに、エルドアン氏は勝利宣言で国民の調和を打ち出し、政治的な忠誠心、宗教思想、民族的な背景が何であれ、すべてのトルコ市民は1つの国の息子であり娘だと宣言した。
豊かになる一方、自由を失っていったトルコ
しかし、エルドアン氏によるトルコ政治の支配が長引くほど、同氏の統治方法は自由主義に反するものになっていった。エルドアン氏はあたかも、自身が慈悲深い君主であり、7700万人のトルコ国民は近代的な民主主義国の市民ではなく、従順な臣民だと考えているかのようだ。エルドアン氏の11年間のトップ在任期間の矛盾は、トルコがより繁栄すると同時に自由度が低くなったことだ。
この傾向は、昨年のゲジ公園での運動に対する弾圧以前から見て取れた。当時、多くの市民がイスタンブールその他の都市でエルドアン氏の専横的な統治スタイルに抗議するデモを繰り広げた。その後、最終的に取り消すまで、トルコ政府は裁判所の決定に逆らってツイッターやユーチューブの遮断を続けた。また、エルドアン氏は、自身の家族や閣僚、ビジネスパートナーに対する汚職調査にも激しく反発した。
同じような高圧的な態度は、今年5月に301人の死者を出したソマ炭鉱爆発事故への政府の対処にも見られた。
エルドアン氏が大統領として広範な行政権を行使する気でいることは疑う余地がない。だが、エルドアン氏は議会で、この計画に正当性を与えるために必要となるトルコ憲法改正を実現するだけの十分な過半数を押さえていない。来年6月までに実施される次期総選挙で十分な過半数を獲得できるかどうかも定かではない。