エボラ ギニアの2歳児が最初の感染者か8月12日 21時13分
西アフリカで患者が増え続けているエボラ出血熱について、フランスなどの研究チームは、今回の感染の1例目の患者は去年12月に死亡したギニアの2歳の子どもではないかと指摘する論文を発表し、感染拡大の経緯を知る手がかりになるとして注目を集めています。
論文を発表したのは、フランスやドイツの研究者などでつくる国際共同研究チームで、アメリカの医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」にことし4月、掲載されました。
研究チームは、ギニア南部のゲケドゥー県など、ことし3月、感染の広がりが最初に報告された地域に注目し、患者20人から採取された血液を解析するとともに残されたカルテなどの医療記録などをたどって感染の経緯を調べました。その結果、ゲケドゥー県のメリアンドゥという村で、去年12月、熱やおう吐など、エボラ出血熱が疑われる症状を訴えて死亡した2歳の子どもが今回の感染の1例目の患者ではないかと指摘しています。
論文では、この子どもが死亡したあと、姉や母親、祖母ら家族と看護師らが同じような症状を訴えて次々と死亡したほか、同じ県にある病院の医療従事者1人も症状を示し、別の県にある医療機関で手当てを受けたあと死亡したことを挙げています。また、この医療従事者の手当てに当たった医師がさらに症状を訴えて死亡し、この医師と接触のあった複数の親族らが、エボラウイルスに感染していることが確認されたとしています。
研究チームは、論文の中で限られた情報のなかで分析したとして、研究には不確定な要素があることも明らかにしていますが、感染拡大の経緯を知る手がかりになるとして注目を集めています。
医療機関への不信も感染拡大の一因か
ことし5月から今月9日までリベリアの首都モンロビアの国連の事務所に駐在していた三浦貴顕さんは、医療機関に対する不信感も感染拡大の一因になっているのはないかと話しています。
三浦さんは「現地では政府に対する信頼がもともと低い。加えて今回はエボラ出血熱の患者の致死率が高く、入院しても治療の効果があまり期待できないことから医療機関に対する不信も広がっている。このため症状がある患者でも治療を拒否して家族が自宅に連れ帰るケースが多い」と述べて、現地で不信感が広がっているのではないかと指摘しました。さらに、「エボラ出血熱とみられる症状を示して亡くなった場合も周囲に知られると迷惑がかかると思い、感染したかもしれないと言い出しにくい空気がある。私の感覚では、WHOが把握している以上に感染者が広がっている可能性があるのではないか」と述べ、感染が考えられている以上に広がっているのではないかとの見方を示しました。
専門家「日本で感染広がるとは考えにくい」
エボラ出血熱に詳しい国立感染症研究所ウイルス第一部の西條政幸部長は、今回、患者が増え続けていることについて、「過去の流行に比べてウイルスの性質が変わったわけでも感染拡大のスピードが速くなったわけでもない。ただ以前は、山間部の人口の少ない村などで流行が起きていたのに対し、今回は人口の密集した地域に感染が広がり、人の往来が多いことが、流行を止められない一つの要因になっていると考えられる」と指摘しています。そのうえで、「地域の住民に患者の血液に触れないなどの感染予防の知識を身に着けてもらい、マスクや手袋などの資材を十分に提供できれば、流行は収まっていくはずだ」としています。さらに日本への影響については、「西アフリカで活動している人が潜伏期間中に日本に来て発症する可能性はゼロではないが、エボラウイルスは患者の血液などに直接触れないかぎり感染しないので、インフルエンザのようにウイルスを知らない間に多くの人に感染させてしまうといったものとは違う。また日本は検査態勢や医療態勢が整っているので人から人へ感染が広がるとは考えにくく過剰に心配する必要はない」としています。
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