人身事故で割れた電車のフロントガラスにカメラを向ける若者達を見て思った事。

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駒場東大前駅で2人飛び込み1人死亡
2014年08月11日 15時54分
 11日午後0時25分頃、東京都目黒区駒場の京王井の頭線駒場東大前駅の上り線で、男性2人が電車にはねられた。
駒場東大前駅で2人飛び込み1人死亡 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

今日は面接だった。

京王井の頭線で渋谷へ向かっている途中、急行で走っていた電車が駒場東大前付近を通過するあたりでにぶい音を発した。

ドン、という勢いのない音のあとに、「ガコガコ」「カラカラカラカラ……」という音が低速しながら響くとやがて電車はぴたりと止まった。

まさか、とスマートフォンや文庫本や我が子に顔を向けていた乗客たちが一斉に顔を上げた。

「えーただいま人身事故が発生致しました。救助活動を行いますので、大変ご迷惑おかけしますが~~~~」
というアナウンスが流れる。

意外にも冷静な空気が流れている車内。さすが東京といったところか。
いろんな人が電話越しに「遅れる」と報告をしていた。
私はまだ面接予定時間にはだいぶゆとりはあったのだが、30分経ってもやはり電車は動かないので面接先に着くのが遅れるかもしれないことを担当者に伝えた。

一瞬だけ車内アナウンス用のスピーカーから、女性(中年あたり)の発狂だか泣き叫んでいる声が流れた。
これはマジなやつだぞ、といった表情を皆が浮かべていたように思える。私は怖くてかばんの底に安定剤かそのかわりになる睡眠剤が無いかあわてて探して、落ち着いて一粒飲んだ。
この女性は現場を目撃してしまったのだろうか。

東京はやはりすごい。対応と処理が迅速である。わずか1時間も経たぬうちに電車が動き、無事渋谷に到着した。

私が乗っていた車両は真ん中あたりだったのだが、先頭の車両の付近に人が集まっていた。
なんだろうと見てみると、フロントガラスに人をはねたあとらしきヒビが豪快に入っていた。幸い視力が弱い上裸眼だったため、くっきりと見ずには済んだ。

若い男女たちは割れたフロントガラスをスマートフォンで写真を撮っていた。私はその絵がどうも受け入れがたかった。
正直言って、彼らのあの行動は異常である。

爆撃テロが起きたところで「やれやれ、またか。」と溜息を付く人で溢れかえっている国があるように、日本もまた人身事故が起きたところで「やれやれ、またか。」と溜息をつく人で溢れかえっているだろう。
他線の人身事故に巻き込まれ駅のホームで立たされることは数度と経験したが、自分が乗っている電車で起きるのは初めてだったので正直驚いたし、何よりも恐怖を感じた。

きっと写真を撮っている彼らも恐怖は感じたのかもしれない。
けれどもあの割れたフロントガラスを目の前にしても余裕でいられるあたり、「怖かった」というよりも「驚いた」ほうが強かったんだろう。
カメラを向けるのは物珍しいからなのか、それとも「これを多くの人に伝えなければ」といった正義感や義務感からくるものなのか?
記念撮影だとしたら、彼らはやはりどこか狂っているし、正義感や義務感だとしても報道するのが仕事な大人たちに任せればいいと私は思ってしまう。
(どのみち撮っているのはほとんどが見たところ10代か20歳前後だったので)


"死"に対するリアリティが抱けていないのかわからないけどこれを問題にすると馬鹿な大人が「漫画やアニメ、ゲームによる悪影響」みたいな意味の分からないことを言い出しそうなんだよなあ。
これについては少し個人的な考えがあるから、もうちょっと整理できたらまた記事にして書いてみようと思う。



ニュースをいち早く発信することは大事だから、こうして一般の人たちが広めていくのは決してネガティブなものではないとは思う。
しかし、割れたフロントガラスは別にシェアしなければならない情報ではないだろう。

面接はギリギリ間に合い無事終わった。
人が死ぬ瞬間を初めて体感した一日だった。


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