危険ドラッグ:和歌山県が独自制度で監視 業者撤退も

毎日新聞 2014年08月12日 15時00分(最終更新 08月12日 15時16分)

 危険ドラッグの規制方法を巡り、和歌山県の全国唯一の制度が注目を集めている。「お香」「ハーブ」「アロマ」として売られていることを逆手に取り、「知事監視製品」に指定して、購入者に「みだりに吸引しない」との誓約書の提出を義務付けたところ、県内に2店あった専門店が今年4月までに撤退した。手続きが煩雑なため「和歌山への発送不可」と表示するネット販売業者も現れ、県は「一定の抑止効果が証明された」と話している。

 危険ドラッグは、麻薬のような幻覚や興奮作用がある薬物。薬事法上の指定薬物として、製造や販売、所持や購入も禁止されている。しかし、指定までに数カ月から半年もかかり、その間に化学構造の一部を変えた新種が次々に出回る「いたちごっこ」の状態が続いている。

 和歌山県は昨年4月、「薬物濫用(らんよう)防止条例」を施行し、知事監視製品制度を設けた。幻覚作用などを及ぼす恐れがあるとして知事が監視製品に指定すると、購入者は吸引、摂取目的でないとの誓約書を署名入りで提出しなければならない。監視製品を販売する県内の業者には届け出のほか、購入者からの誓約書の保管などを義務付けた。違反して警告などに従わなければ最終的に、購入者は5万円以下の過料、店に20万円以下の罰金が科せられる。

 知事監視製品の指定は、インターネット上の情報や情報提供などを参考に判断するため、2週間程度で可能という。和歌山県はこれまでに購入者に対し、吸引など目的外に使用したとして、4件の警告を出している。同県は、薬事法の指定薬物以外に独自に成分を指定して規制できる「知事指定薬物制度」も導入。同様の制度は東京、大阪、徳島などの都府県でも条例で定めているが、監視製品制度は和歌山だけだ。

 和歌山県薬務課は「6月の東京・池袋での死傷事故以降は連日、監視製品制度について問い合わせがある。今後も危険ドラッグが広がらないよう取り組みを進めていく」としている。【倉沢仁志】

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