イスラエルに本社を置くヴァスキュラー・バイオジェニックスは6日前に新規株式公開(IPO)されたばかりのバイオテクノロジー企業です。
同社株のIPOはハメコミに苦労し、初値レンジより下の12ドルで値決めされ、6日前に取引が開始されました。上場初値は11ドルということなので、投資家はいきなりヤラレになったわけです。
この危なっかしい寄付きに恐れをなした他の投資家も同社株を投げ、あっという間に株価は9ドル50セントまで下がりました。
普通、アメリカでの株式の受け渡しは「T + 3」、つまり約定日の翌日から数えて三日目に行われます。
今回のヴァスキュラー・バイオジェニックスの取引では、この受け渡し日が来ても一部の投資家が代金を払い込みませんでした。
以前、実際に株券が印刷されていた時代にはフィジカル・セトルメントと言って株券を投資家の指定する預け先銀行に届けることが行われました。その際、「印刷が間に合わない」というような理由で株券が届くのが遅れるケースというのはよくありました。
しかし投資家の側がIPOで買った株の代金を踏み倒すというのは、極めて珍しいです。IPOの販売、買付の成立の確認、その後のフォローなどの局面で、主幹事の仕事ぶりが悪く、投資家を怒らせてしまった可能性があります。
具体的には人気が無くて売れ残りが沢山ある案件を「これはホットディールです!」という風に案内すると、投資家は(騙された!)と感じます。(今回、このような誘導が原因だったのかどうかは、僕は知る由もありません)
また値決め直後に証券会社はディールに参加した投資家に「あなたのところへは何株行きますけど、いいですよね?」と確認します。この作業のことを「サークルする(丸印をつける)」といいます。直前に心変わりする投資家が出れば、この時点で割り当てられた株を「やっぱ、やめとくわ」と言って証券会社に突き返すことが出来るのです。(なお、これをやると次のディールから証券会社からは相手にされなくなります)
若し、受け渡し日になっても入金が無い場合、担当セールスマンは慌てて投資家のところへ電話し、なにか送金手続きの行き違いなどが無かったか確認する必要があります。
だから今回のように6日目になって「一部の投資家がおカネを払ってくれないので、ディール自体をキャンセルする」というのは極めて異例なコトなのです。
同社株のIPOはハメコミに苦労し、初値レンジより下の12ドルで値決めされ、6日前に取引が開始されました。上場初値は11ドルということなので、投資家はいきなりヤラレになったわけです。
この危なっかしい寄付きに恐れをなした他の投資家も同社株を投げ、あっという間に株価は9ドル50セントまで下がりました。
普通、アメリカでの株式の受け渡しは「T + 3」、つまり約定日の翌日から数えて三日目に行われます。
今回のヴァスキュラー・バイオジェニックスの取引では、この受け渡し日が来ても一部の投資家が代金を払い込みませんでした。
以前、実際に株券が印刷されていた時代にはフィジカル・セトルメントと言って株券を投資家の指定する預け先銀行に届けることが行われました。その際、「印刷が間に合わない」というような理由で株券が届くのが遅れるケースというのはよくありました。
しかし投資家の側がIPOで買った株の代金を踏み倒すというのは、極めて珍しいです。IPOの販売、買付の成立の確認、その後のフォローなどの局面で、主幹事の仕事ぶりが悪く、投資家を怒らせてしまった可能性があります。
具体的には人気が無くて売れ残りが沢山ある案件を「これはホットディールです!」という風に案内すると、投資家は(騙された!)と感じます。(今回、このような誘導が原因だったのかどうかは、僕は知る由もありません)
また値決め直後に証券会社はディールに参加した投資家に「あなたのところへは何株行きますけど、いいですよね?」と確認します。この作業のことを「サークルする(丸印をつける)」といいます。直前に心変わりする投資家が出れば、この時点で割り当てられた株を「やっぱ、やめとくわ」と言って証券会社に突き返すことが出来るのです。(なお、これをやると次のディールから証券会社からは相手にされなくなります)
若し、受け渡し日になっても入金が無い場合、担当セールスマンは慌てて投資家のところへ電話し、なにか送金手続きの行き違いなどが無かったか確認する必要があります。
だから今回のように6日目になって「一部の投資家がおカネを払ってくれないので、ディール自体をキャンセルする」というのは極めて異例なコトなのです。
もちろん、この株を買い付けた投資家が、実はおカネを持ってなかったというケースもあります。でもその場合は証券会社が投資家の適格性をちゃんと確かめていなかったことになるので、そもそもIPOを引き受ける際、「ちゃんとしっかりした安定株主に対して御社の株を売ります」というセールストーク、つまり安定株主作りの責任を主幹事証券が果たさなかったことになります。
あと考えられるケースとしては、担当セールスが「このディールは、たぶん人気が出るので、10万株申し込んでも2万株くらいしか貰えないでしょう」というような案内の仕方を投資家に対して行い、投資家が「そうか……それじゃ10万株の注文ということで入れておこうか」という感じで実際に欲しい「着地」の株数より多めに注文を入れ、いざフタをあけて見ると10万株まるまる来てしまって、代金の工面が出来ないというようなケースもあります。
これは担当セールスの相場の技術が未熟なことから起こるトラブルです。
いずれにせよ今回のヴァスキュラー・バイオジェニックスの一件では、ちゃんと売った筈のIPOの投資家が「買った覚えはない」ないしは「騙されたから、おカネは払わない」と言っているわけで、これは主幹事のドイツ銀行の引き受け・販売プロセスに大きな問題があります。
僕の経験から言わせてもらえば、このような杜撰なコトが起きるのは相場が天井に近いときです。なぜならIPO市場が冷え込んでいるときは、念には念を入れ、石橋を叩きながら丁寧にマーケティングするからです。
今回の失態は、まずいタイミングに起こりました。なぜなら9月早々にはアリババ(ティッカーシンボル:BABA)のIPOが控えているからです。
ヴァスキュラー・バイオジェニックスのIPOのキャンセルを見た投資家が「何だ、買ってすぐ儲からなければ、ゴネればキャンセルしてくれるのだな」と思ってしまうと、少しでも上場後の値動きが鈍ければ、逃げ出す投資家が続出する可能性があるからです。
アリババの場合、調達金額は200億ドルにもなると言われています。それだけのディールでずっこけると、幹事証券は自己資本を吹っ飛ばしてしまいます。
言い換えればヴァスキュラー・バイオジェニックスのディールのような、ゴマ粒みたいに小さいディールで、買い手が消えて受け取り手の無くなった株が出れば、それを主幹事であるドイツ銀行が自分で「喰う」のは当たり前。
いまごろ他証券は「ドイツ銀の連中、迷惑なコトしでかして呉れたな」と恨んでいると思います。
PS:なおこのディールの共同主幹事はウエルズファーゴ証券です。
あと考えられるケースとしては、担当セールスが「このディールは、たぶん人気が出るので、10万株申し込んでも2万株くらいしか貰えないでしょう」というような案内の仕方を投資家に対して行い、投資家が「そうか……それじゃ10万株の注文ということで入れておこうか」という感じで実際に欲しい「着地」の株数より多めに注文を入れ、いざフタをあけて見ると10万株まるまる来てしまって、代金の工面が出来ないというようなケースもあります。
これは担当セールスの相場の技術が未熟なことから起こるトラブルです。
いずれにせよ今回のヴァスキュラー・バイオジェニックスの一件では、ちゃんと売った筈のIPOの投資家が「買った覚えはない」ないしは「騙されたから、おカネは払わない」と言っているわけで、これは主幹事のドイツ銀行の引き受け・販売プロセスに大きな問題があります。
僕の経験から言わせてもらえば、このような杜撰なコトが起きるのは相場が天井に近いときです。なぜならIPO市場が冷え込んでいるときは、念には念を入れ、石橋を叩きながら丁寧にマーケティングするからです。
今回の失態は、まずいタイミングに起こりました。なぜなら9月早々にはアリババ(ティッカーシンボル:BABA)のIPOが控えているからです。
ヴァスキュラー・バイオジェニックスのIPOのキャンセルを見た投資家が「何だ、買ってすぐ儲からなければ、ゴネればキャンセルしてくれるのだな」と思ってしまうと、少しでも上場後の値動きが鈍ければ、逃げ出す投資家が続出する可能性があるからです。
アリババの場合、調達金額は200億ドルにもなると言われています。それだけのディールでずっこけると、幹事証券は自己資本を吹っ飛ばしてしまいます。
言い換えればヴァスキュラー・バイオジェニックスのディールのような、ゴマ粒みたいに小さいディールで、買い手が消えて受け取り手の無くなった株が出れば、それを主幹事であるドイツ銀行が自分で「喰う」のは当たり前。
いまごろ他証券は「ドイツ銀の連中、迷惑なコトしでかして呉れたな」と恨んでいると思います。
PS:なおこのディールの共同主幹事はウエルズファーゴ証券です。