ASEAN:見せつけた「中国の影響力と存在感」
毎日新聞 2014年08月11日 20時08分
【ネピドー春日孝之、工藤哲】ミャンマーの首都ネピドーで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の一連の外相会議は、10日のASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議で閉幕した。最大の焦点となった南シナ海の領有権問題では、米国の後ろ盾を受けるフィリピンがASEAN外相会議で新たな「行動計画」を提案し、中国への攻勢を強めたが、中国は強力な巻き返しを展開。外相会議の共同声明にこの提案は「留意する」と記されるにとどまるなど、逆に中国の影響力と存在感を見せつける形となった。
南沙(英語名スプラトリー)諸島やスカボロー礁で中国と対立するフィリピンは、中国が浅瀬を埋め立て建造物を構築しているなどと非難してきた。
さらに、フィリピンのデルロサリオ外相は8日の外相会議で、紛争の抑止と解決に向け「3段階の行動計画」を提案。(1)緊張を高める可能性のある行動を凍結させる(2)法的拘束力のある「南シナ海行動規範」の早期策定を目指す(3)国際法に基づく調停を通じた紛争解決を求める−−計画だ。
だが、中国の王毅外相は9日の会見でこれを新たな「挑発」と捉え「新たな問題を生じさせたり、不純な目的を忍ばせたりする提案には断固として対処する」と反発した。
南シナ海の領有権問題で、中国は「当事者との直接交渉で解決すべきだ」と主張してきた。フィリピンは昨年1月、国連海洋法条約に基づき仲裁裁判所に提訴したが、中国はこれに応じていない。
第三者の調停を求める新提案は、この延長線上のものだ。フィリピンの同盟国である米国のケリー国務長官も会議で「現状を変える行動の凍結」を求め、フィリピンを後押しした。
だが、王外相は会議などで「南シナ海の一般状況は安定し、航行・飛行の自由も問題はない。『緊張』というのは扇動的で誇張表現だ」との見解を披露。「中国の主権と海洋権益を守る立場は揺るぎない」とも述べ、アジア太平洋への関与を強める米国の動きを念頭に「隠された動機を警戒している」と不快感を示した。