|
箸が動く蕎麦屋の看板。おもしろグッズの社会的役割とは
街のおもしろいものをとりあげるようなサイトで書いていると「おもしろいの見つけたよ」と情報をもらうことがたまにある。
残念ながらそのほとんどは上下に動いてるうどんやそばの看板である。 これぞユーモラスという存在が真正面すぎて避けてきたが、そろそろ一度は取材すべきではないか。おもしろが街にあること、その効用と苦労をきいた。 > 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) こうやって動く麺看板
自信満々の社長さんに話をきく訪れた先は新潟県新潟市の明電光。社長の中村さんに話をうかがった。「これね、確実に売上が上がるんです」と自信たっぷりにかたる。おもしろグッズじゃなかったのか。
新潟の住宅街に。おもしろの聖地といってもいいだろう
ちゃんと売上が上がるのか――これちゃんと効果あるんですね
「特にね、フードコートの中、あと飲食店街。それと観光地。親子連れなんかできていると、子供が先に見つけ止まるんですよ。 それとこれが動いているといっぱい店があってもラーメン屋だってわかりますね。 あとは待ち合わせ場所にもなります。展示会なんかだと『これ見た見た!』って。上野で見たとかセンター街で見たとか覚えてるんですよ。 売上が上がるのと店を覚えられるのはまちがいないですね」 おもしろの社会的効果。子供は飛びつき待ち合わせ場所になるという。このサイトもおもしろ系なので少しホッとする。 明電光代表の中村さん。元々は自動販売機会社の営業で独立したという
発端は九州の看板屋さんが考えた――そもそもこれ中村さんが考えたんですか?
「一番最初は九州の方の看板屋さんが作ったんですよ。おもしろいなと思ってうちの会社でも取り扱ってて。うちはもともといろんなもの売ってたんですね。LEDの表示器だとかもっと前はゲーム機。駄菓子屋の前に置いてあるようなストリートファイターとかその時代ですよね。 でももともとあったものは基本的には看板屋さんなんで、一つ一つムラがあるわけです。故障なんかした日には売って損するような状況が出てくる。200台くらい売ったけどやめたんですよ」 これって動くからおもしろいと同時に、動くから故障するのだ。 看板屋さんが故障に対応するってあんまりなさそうだし。 デザインはオーダーメイドのため、世の中にさまざまな動く麺看板が存在する
大手電機メーカー級の技術で再スタート「そのあと新潟県の燕三条でうちに作らせてくれっていう人が来たんですよ。景気が悪い時期で、電機メーカー大手の製造ラインなんかを作るところ。そこで製造して販売したのが3、4年前かな。
もう電気関係とかはものすごく詳しいわけですよ。どれくらい負荷がかかってと最初から計算して作ってる」 今ある麺看板は実用にたえられるよう改良されたものらしい。こういうものでもちゃんとした会社が作っているのだ。 ――どれくらいの重さなんですか? 「麺の部分が1.8kgくらいですね。それを2秒に1回こうやってんですよ。一日十時間で一万八千回ですか、一年間で600万回超えるわけですよ。それをこわれないようにしなくちゃいけない。一年以内に壊れたりしたらトラブルになりますから。 今はモーターは重さに対して三倍くらいの力をつけたりスライド方式っていって直接モーターに負荷がかからなくなってる。でもお客さんはそんな中のこと関係ないからね(笑)」 優雅に見える白鳥の水面下の話がおもしろでも行われていた。私達が笑うのは一瞬のために600万回の運動とそれを支える技術がある。なんて感動的なんだろう。実際に感動するかはまた別の話であるが。 この棒が上下に動くだけなんだがそれでも技術がないと製品にはならない
日本のものづくりの技術が支えていた――こんなおもしろ看板にも燕三条のものづくりの技術があるんですね
「組み立てて作るものはねへんなところで作ると寸法あわなくなるんですよね。その点燕三条はきちっとしてるんですよ。 あそこに任せると金属加工にしたって何にしたって簡単にできるんですよ。看板なんてすぐボロボロになるけど、これ焼付けでできてるからほとんど錆びません。 物自体の仕組みは簡単ですよ。ただモーターの回転運動をギアボックスでクランクしてスライドにやってるから直接モーターに負荷がかからなくなってる。もうイタズラが多いからこれは」 イタズラ…たしかにありそうだ。
|
|
▲デイリーポータルZトップへ |