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» 2014年08月12日 08時50分 UPDATE

「海水を真水にする」東洋紡の「膜」技術、中東で圧倒的な評価 その理由は (1/3)

海水を濾過して真水にする東洋紡の「膜」の存在感が中東で際立っている。シェアは中東全体で5割に上り、とくにサウジアラビアでは85%と圧倒的。今後の成長も見込んでいる。

[産経新聞]
産経新聞

 海水を濾過して真水にする東洋紡の「膜」の存在感が中東で際立っている。塩類は通さず、水の分子だけを通す特殊な構造のため海水淡水化施設に使われているが、塩分濃度が高く、微生物が多くて膜も目詰まりしやすい中東の海水に対応して洗浄が簡単なのが人気の理由だ。シェアは中東全体で5割に上り、とくにサウジアラビアでは85%と圧倒的。100億円程度(同社推定)の中東市場は今後5年で倍増が見込まれ、同社は旺盛な需要の取り込みを進める。(中山玲子)

繊維会社の技術

画像 東洋紡の膜が用いられた海水淡水化プラント=サウジアラビアの都市ラービク

 「繊維会社だからこそ、誰にも真似できない膜を作ることがきでた」

 東洋紡アクア膜事業部長兼機能膜事業開発部の藤原信也部長は、こう胸を張る。

 雨や地下水に乏しい中東では水の確保は切実な問題だ。海水に3・5%程度含まれている塩分を「淡水化施設」で0・05%以下に下げて生活用水として利用している。淡水化は、海水を加熱して蒸気を取り出す「蒸発法」と、水の分子は通るが、水に溶けた塩類は通さない特殊な膜を使う手法が代表的。東洋紡は、早くから「脱繊維」の取り組みとして海水を通して真水にする膜の開発に乗り出した先駆者だ。

 膜は、水の分子は通ることはできても、水に溶けた塩類は通過できない0・1ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の極微細な穴が無数に空いている。東洋紡は昭和54(1979)年、中が空洞になった大量の糸を織り重ねた「中空糸型」と呼ばれる海水淡水化膜の開発に成功。その膜を円柱状にして塩水を通す仕組みの装置を完成させた。

 1つの円柱に150万本の糸を織り込む高度な技術力があって初めて成し遂げた開発で、東洋紡は「断面は緻密に編まれた層と粗めの層の二重構造で、繊維事業で培った技術で目詰まりが少ない高品質の膜をつくることができた」と説明する。

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