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 イラク北部のスンニ派地域で勢力を広げるイスラム過激組織「イスラム国(IS)」が8月初めにニナワ州シンジャルを制圧した後、周辺の山地に逃げた住民数万人が水と食糧の不足で孤立し、死の危機に直面している。イラク紙などが伝えた。

 シンジャルはイスラム国が6月に制圧したモスルの西方、シリア国境に接する。国軍が撤退した後はクルド民兵が治安維持にあたっていたが、3日にイスラム国が侵攻し、クルド民兵は撤退した。

 シンジャルには、イスラム強硬派から「悪魔崇拝」として非難される少数派のヤジディ教徒やキリスト教徒アッシリア人が多い。厳格なイスラムの実施や異教徒への抑圧で知られるイスラム国を恐れて約20万人が逃げ出した。

 周辺の山地に入ったのは4万~5万人とみられる。食糧も水もなく、日中は50度近い気温になる。国連筋の情報では数十人の子供たちが脱水状態で死んだという。国連は食糧や水、医薬品を空から投下し、イラク政府に軍事的支援を要請。イラク空軍は5日にシンジャルのイスラム国の拠点を空爆し「280人余りを死傷させた」と発表した。(カイロ=川上泰徳)