理研、笹井氏異変を10日前に把握 辞任認めず対応遅れ「速やかに検証する」
産経新聞 8月12日(火)7時55分配信
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹副センター長が5日に自殺した問題をめぐり、理研の対応に批判が高まっている。理研は自殺の約10日前、笹井氏が体調悪化で職務不能な状態に陥ったことを把握しながら、本人が希望していた辞任を認めず、心理面のサポートも十分に行っていなかった。対応の遅れで最悪の事態を防げなかった危機管理の甘さが問われそうだ。
複数の関係者によると、笹井氏の精神状態が極端に悪化したのは7月下旬。主宰する研究室で科学的な議論ができなくなり、研究員が「ディスカッションが成立しない」と25日、竹市雅俊センター長に通報した。竹市氏はセンターの健康管理室に相談。「医師の受診を勧めてほしい」との回答を受け、笹井氏の家族らと対応を話し合っていた直後に悲劇が起きた。
理研は笹井氏の実質的な後任として、26日付で斎藤茂和神戸事業所長を副センター長に起用。しかし、笹井氏の役職は解かず、斎藤氏の人事も正式に公表しなかった。笹井氏にサポート要員をつけるなどの具体的な支援もしなかった。一連の流れは、事態の緊急性を重く受け止めていなかったようにも受け取れる。
笹井氏はSTAP論文問題発覚後の3月、副センター長の辞任を申し出たが、竹市氏は調査中を理由に認めなかった。外部からの批判も強まり、笹井氏は現職にとどまることに強く責任を感じ、心理的なストレスで体調が悪化していった。関係者は「ずっと辞めたがっていたが許されず、精神が圧迫された」「7月下旬は負担を軽減する最後のチャンスだったのに、なぜ解放してあげなかったのか」と憤る。
大学院生時代から笹井氏を知る元京都大教授は「研究者として自負心が強く、今後に絶望感を覚えたのかもしれないが、理研のガバナンス(組織統治)の欠如が彼を死に追いやった面は否定できない。懲戒処分の判断も早く下すべきで、決断できないまま、いたずらに苦しめた」と批判する。
同志社大の太田肇教授(組織論)は「理研の対応は極めて不適切で認識が甘い。一刻も早く役職から外すべきだった」と話す。STAP問題の当事者で研究グループの責任者、センターの要職も務めていた笹井氏。「計り知れないプレッシャーに追い詰められたのだろう。研究者が危機管理職を兼ねる体制には無理があり、今後は危機管理の専門職を置く必要がある」と太田教授は指摘した。
理研広報室は「再発防止のため、笹井氏への対応が適切だったか速やかに検証する」としている。
最終更新:8月12日(火)9時58分
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