「画像検索で『無料』と入れてヒットした画像は、勝手に使って良いのか」 という、恥ずかしくも重大なテーマを掘り下げる
「ネットで拾った画像」だとか、「無料のフリーイラスト」といった、苦労して作品を作った著作者の心情に配慮しない言葉が、ネット上に溢れている。
ネット上の画像は全て「著作権法」という「法律」によって保護されていて、「簡単に取れるからといって取っちゃいけないんだ」ということを、法律の専門家は教えてあげなければならないのに、中にはそうでない人がいるから困ったものだ。
平成25年正月、株式会社トマック(東京都台東区 田中晴美社長)の社用ブログで、株式会社アートバンク(京都)が管理するイラストが使用されていた。貸出の記録が無いため同社にその入手経路等について配達証明郵便で問い合わせたところ、約2週間後同社の代理人として第一芙蓉法律事務所所属の東志穂弁護士からFAX回答があった。
その主旨は、1)当該イラストは画像検索で「無料・イラスト」「お正月」と打って出てきたもので他者の著作物を使ったという認識はない。2)依ってこれ以上回答する必要はないが、使用媒体はHPだけ。 とのこと。
という訳で、それって良いのか悪いのか、当コーナーで問題を掘り下げていくことにする。


作画 茨木祥之氏


株式会社トマックのHP(部分)



(株)アートバンク
代表:來田 淳
(株)トマック代理人
弁護士:東 志穂氏
【來田】
株式会社トマック(以下『トマック社』という」)に対し、平成25年3月19日付で当社からお送りしました、当社がストックフォトとして取り扱う、イラストレーター茨木祥之さんと当社の共同著作物「1−A−YSI215」(以下『本件イラスト』という)の入手経路の問合せにつきまして、3月28日付で貴職から頂戴致しました “送り状の無いFAXのみ” の回答書を、じっく り読ませて頂きました。

文中、「貴簡資料1においてご指摘のイラストは、当社の担当者が、Yahoo!JAPANのトップページより、『無料・イラスト』で検索して出てきた『無料イラスト画像』につき、さらに『お正月』で絞込み検索して出てきた画像を使用したものであります。それ故、当社は、貴社の『共同著作物』を使用した認識はございません。 以上の次第ですので、貴社からのご質問にこれ以上 回答する必要はないものと思料致しますが、念のため2)、3)について言えば、」云々とあり、本件イラストは、当社が確認したWeb媒体のみの使用である旨のご回答を頂いております。

ここでいくつか意見と質問がございます。

@先ず、Yahoo!JAPANに限らず、Google、MSN等のサーチエンジンの画像検索サービスは、あくまでもユーザーが任意で打ち込んだキーワードに近い画像を直リンクによって表示するシステムであり、端的に申し上げて、「著作権者に無断で、タダで使える画像を探してきてくれる都合のいいサービス」ではございません。各サーチエンジンに書かれている利用上の注意事項をご精読下さい。
また、「無料・イラスト・お正月」で検索してヒットした画像の利用規定をよく読むと、その多くは著作権そのものは放棄しておらず、商用利用は不可もしくは有料となっているものもかなりございますので、ご確認下さい。
「無料」や「フリー」で検索した他人の画像がそのまま自由に使えるなどと錯覚するのは、重度の認知バイアスと考えられます。
ご納得がいかなければ一度、「冷蔵庫・新品・無料」というキーワードで画像検索をかけてみてください。夥しい量の「新品でタダの冷蔵庫」が表示されます。著作権管理に厳しいことで有名なディズニー社を例にとってみても、「ミッキーマウス・無料・画像」で検索すれば沢山の「純正」のミッキーが表示されます。それ、使えますか?



【ミッキーマウス 無料 画像】
【冷蔵庫 新品 無料】



現にここで掲示している貴職の顔写真も、「無料・弁護士・東 志穂・写真」で検索して出てきた画像です。(これは貴職のご見解に倣ってフェアユースとさせて頂きます)

Aまた、「『無料・イラスト』で検索して出てきた「無料イラスト画像」につき、さらに「お正月」で絞込み検索して出てきた画像を使用したものであります。」とのことですが、Yahoo!JAPANにそのような回りくどい画像検索システムはございません。始めから終わりまで、打ち込まれたキーワードに近いと思われる画像が表示されるだけです。

B貴職は、クライアントの言葉を鵜呑みにして、ご自身で検証することもなく、トマック社の担当者が「無料・イラスト・お正月」で検索してヒットした画像を使用したかのように主張されておりますが、本件イラストは、そのようなキーワードではヒットしません。しかし、「お正月・イラスト」では、Yahoo!JAPANの最上段5番目にヒットします(平成25年4月1日現在)。つまり、これに「無料」というキーワードを付け足すとヒットせず、実際はトマック社の担当者は「お正月・イラスト」で、ヤフーの最上段にヒットしたこの本件画像(下段に表示)を使用したが、当社の問合せによって、「しまった!」と動揺し、「無料」を後付けしたと考えるのが自然でしょう。
貴社の回答は、俄かには信用しがたいと言うべきです。 はっきり言って“ウソ”!



【お正月 イラスト】



C貴職は、トマック社の担当者の言い訳を理由に、当社への質問に「これ以上回答する必要はない」などと高飛車に言われますが、そもそもイラストレーションは、著作権法上「美術の著作物」と位置付けられており、著作物の使用に当たっては著作権者の許諾が必要です。それは、「そのイラストの対価が幾らであるか或いは無料であるか」などという話とは次元の異なる問題であり、「他人の所有物を勝手にパクッた」ということが、この際一番の問題なのです。
少なくとも法律家であればそれぐらいのことは百も承知の筈です。

お分かり頂けましたでしょうか?
トマック社の担当者に、悪意が無かったことは理解しています。本件イラストの使用の態様も、直接営業活動に結びつくようなものでもありません。しかし結果として、当社管理の著作物が、「私的利用の範囲」を超えて法人のHPで使用されている以上、その入手経路を調査し、当社規定の使用料を正しくお支払い頂くのは写真エージェンシーとして当然の責任であり仕事です。
つきましては、先ず貴職に対し、速やかに前言を撤回し、全面的に非をお認めになられた上で、本件著作権侵害とこの度の被害者への非礼について、率直な謝罪を求めます。

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